相剋
“鳴海ソーマ”が、取り出したのは『鶴の
「対象・鳴海ソーマ。水気・付与」
彼が、アスカに向けて“白羽扇”を一振りすると、無数の水弾が生み出され、彼女に向かって射出された。
「くっ!」
瞬時に“風気”をぶつけて、水弾を防ごうとしたアスカだったが、一度は衝撃で破裂した水が、より細かな水弾となって
ドドドドドドドドド!!!
“気”を使用した
「はぁ……はぁ……驚いた。マナの力も【付与】することが、出来たとはね」
「まだ、自分自身にしか【付与】することが出来ないがね。分かったかい?元々、こっちが本命だったってことが」
「ごっさんは、あくまで前座……ソーマが、本命のダメージソースってわけ?」
「自然界の精霊には、相性があるのは知ってるかい?キミの得意とする“風”の属性にも、苦手とする属性が存在する」
そう言って、彼はまた“白羽扇”を強く一振りした。
そう。“風”と最も相性が悪いとされている属性は“水”。鳴海が扱いを得意とする精霊であった。
ドドドドドドドドド!!!
「飛翔天!!」
さすがに二度目の直撃を貰うわけにはいかない七海は、フワリと天高く舞い上がって攻撃を避けると、彼女のいた地面に水弾の雨が降り注いだ。
「動きが、鈍ってるんじゃないかい?ダイゴは、しっかりと自分の仕事を果たしてくれたようだ。キミの体力を、十分に削いでくれた!」
次に、“白羽扇”を広げたまま彼女に向けて直線上に突き出すと、今度は斬撃のような水刃が空中のアスカへと向けて放たれる。
「マルチウェポン……メタモルフォーゼ!」
“風気”で防ぐのは悪手と悟ったアスカは、『マルチウェポン』を大きな丸盾に変化させると、水刃の直撃を防ぐことに成功するが、その威力で吹き飛ばされてしまう。
あわや地面に激突してしまいそうなる彼女をキャッチしたのは、気配に反応して着地点へと飛び込んでいた“植村ユウト”であった。
「アスカ!大丈夫!?」
「ユウト……ありがと。ちょっと、油断した」
「まだ、戦えそう?」
「全然、身体は動く……けど、ソーマの使う“水気”が、私と相性が悪すぎる。突破口を、探してはみるけど」
背中合わせになり、七海は鳴海に相対し、植村は一角に相対する。
背中から、肩で息をする彼女の呼吸が伝わってきたのか、心配した植村はある提案を口にした。
「なら……試しに、変わってみる?戦う相手」
「えっ!?あのさぁ……」
「あ、いや……言ってみただけだから」
「……結構、いいかも。その作戦」
てっきり、安直な提案を怒られるかとビクビクした植村に返ってきたのは意外な一言だった。
そんな二人に、鳴海から水刃が、一角から光弾が、両サイドから放たれる。
忍者のカラクリ壁・“どんでん返し”のように、七海が植村の手を掴んでクルンと互いの位置を交代させると、彼女が声をかけた。
「んじゃ、ユウト。ソーマの相手は、任せたぞ」
「いや、いきなりかよ!」
七海は丸盾で一角の光弾を防ぎつつ、前進しながら彼との距離を詰めていく。
一方、植村は……。
【虚飾】が、【近接戦闘(格闘)】rank100に代わりました
「雷神八極拳……震脚・
ドンッ!!!
彼が強くその場で足踏みすると、前方の地面が放電と同時に大きく隆起し、水刃を防ぐ岩壁と化した。
しかし、鳴海の水刃も高い威力を誇り、岩壁を粉々に粉砕すると、互いの技が相殺する形となった。
すぐに追撃を準備する鳴海の視界に飛び込んできたのは、粉々になる土や石の粉塵の中から、弾き出されたように駆けてくる植村の姿だった。
「雷神八極拳……
そんな相手に脅威を感じたのか、鳴海もまた持てる最強の技で迎え撃つ。
頭上でくるくると“白羽扇”を回すと、目の前で水流が渦となって立ち昇り、やがては龍の姿となって、植村へと巨大な口を開けて突撃していく。
「うおおおおっ!!」
彼の伸ばした拳が水龍の先端に触れると、そこから龍の身体を伝って激しい電撃が術者に向かい疾走する。
精霊の相性、奇しくも“水気”の天敵とされる属性こそが、植村の得意とする“雷気”だった。
バリバリバリバリッ!!!
自らが作ってしまった水の動線を辿ってきた電撃により、強力なスタンガンでも浴びたかのように鳴海が気を失い倒れていくと、彼が創り出した龍も、植村にその牙が届く直前、ただの水に帰してしまう。
一方、光弾を盾で防ぎきったアスカを見て、一角は武器をレーザーブレードへと戻す。
「女の子には、手を出さない主義なんだけど。アスカ……キミは、特別だ!僕の、戦ってみたいリストに入ってるからね!!」
「どいつもこいつも!ちっとは、私を女の子として扱えっつーの!!」
ズバッ!!
一角の振り下ろしたレーザーブレードは、見事に七海の持っていた丸盾を真っ二つにしてみせた。
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