荷電粒子砲

 ズザザザザッ



 一角に追撃しようと剣を構えた植村だったが、後方から一つの弾丸が飛んでくるのを感知し、彼は自動回避で首を傾けると、その狙撃を紙一重でかわしてみせた。



 危なかった!【回避】が発動しなかったら、脳天を直撃されてた。スナイパーのケアもしながら、戦わなければ。



 必中の一射を避けられるも、“烏丸クロウ”は取り乱すことなく次の弾をリロードする。




(今のコースを、避けるか……完全に、死角からの弾道だったんだが。かなり高いレベルの回避系スキル持ちだな)




 その隙に、ブースターを使って姿勢制御した一角は、まるで背泳ぎのように地面スレスレを低空飛行しながら、腕に仕込まれた機銃で植村を狙い撃った。



 バババババババッ!!!



「くっ!」



【虚飾】が、【跳躍】rank100に代わりました




 咄嗟に天高くジャンプして、敵の弾幕から逃亡する植村。広範囲におよぶ殲滅攻撃は、彼の自動回避の天敵であり、すぐにその場から離脱する必要があった。


 rank100の【跳躍】をもって、十分な安全圏まで避難した植村だったが、ブースターを噴射させた一角が更に距離を詰めてくる。

【虚飾】の性質上、何度も【跳躍】を使用することは出来ない。ここで敵の機銃を封殺しなければ、戦況が一気に不利となるだろう。




【虚飾】が、【射撃(拳銃)】rank100に代わりました




 そこで、彼は瞬時に腰の『マナ・ブラスター』に手を掛けると、一角が再び機銃を構えたタイミングで、敵の銃口に向けて正確な射撃を放った。




 ドンッ!




 その光線は見事に命中して、敵の機銃を破壊する。しかし、すぐに射撃を受けていない左手の掌を広げた一角は、そこから光の衝撃波を発動させる。




「パルス・リパルサー!!」




 右手の兵装は機銃バルカンショット、左手の“パルス・リパルサー”は衝撃波を発生させて、周囲の敵を吹き飛ばす、新たに追加された兵装だ。




「うぐっ!?」




 全身に衝撃波を浴びた植村は、勢いよくトンネルの壁に叩きつけられてしまう。




「驚いたな、銃も使えたとは。しかも……腕も、立つ。本当に、キミには驚かされるよ。けどね、まだまだ僕にも見せてない手札はあるんだ!」




 腰から、小さな機械のボールを取り出すと、何やらシステムを起動させて、ぐったりとした植村に向かって投げつける一角。

 空中で「ピピピピピピ」と、嫌なアラームを鳴らす謎の球体。


 すぐに危険を察知して、こちらに落ちてくる前にブラスターで球体を撃ち落とす植村だったが、命中したその瞬間……!




 ドカアアアアンッ!!!




 植村の予想通り、それは小型の爆弾であった。

 空中で大きな爆発を見せると、爆風の衝撃が周囲に広がる。

 しかし、一難去ってまた一難。


 爆風で怯んだ植村に、再び狙撃が襲いかかってくる。




「く……そっ!」




 再び、自動回避で弾丸を避けてみせた植村だったが、烏丸も同じ失敗は繰り返さない。

 時間差で放たれた第二射が、に狙い撃たれていたのだ。


 刹那、グルンと首を捻って第二射を回避した植村。頰を掠ったのか肉がえぐれて、焼けたような痛みが襲ってくる。



 その避け方には、さすがの烏丸も目を見張ったようで。




(おいおい。それも、避けるか……あいつ、本当に人間か?)




 優秀なスナイパーだ。こちらの回避性能を見越して、徐々に

 先に排除しておかなければ、次の一射でまた何を仕掛けてくるか分からない。




 しかし、向こうに気を取られれば、今度は“一角ツバサ”の『モノケロース』が迫ってくる。

 こっちがメイン武器を銃に変えたのを見て、彼も再びレーザーブレードを構えての接近戦を挑んできたのだ。

 さすがは、五大ギルドにも所属するハイクラスの生徒。瞬時に戦況に順応して、最適な攻撃手段を実行してくる。



 敵の斬撃を回避しながら、近距離でブラスターを撃ち込んで応戦するも、こちらほどでは無いにせよ『モノケロース』にも機械による回避補正が働いているようで、どっちの攻撃も当たらぬまま激しい応酬が続く。




 そんな二人の攻防に、痺れを切らしたのは烏丸だった。通信機能を使って、一角に声を飛ばす。





「ツバサ。仕留めきれないなら、距離を取ってくれ……援護射撃が、出来ない」



「ああ!くそっ、わかったよ!!」





 ブースターを使って、再び距離を取る一角。

 それを見て、植村も起死回生の一撃を放つ準備を始めた。


 体内の“気”を練り上げて、周囲の“雷気”と同調させていくと、彼の足下からバチバチと放電が始まる。




【虚飾】が、【目星】rank100に代わりました




 遥か遠くに陣取った光学迷彩ステルス状態の“烏丸クロウ”の姿を【目星】で視界に捉えると、植村はブラスターの銃口を彼に向けて構えた。




(おいおい、素人か?そんな小型ブラスターの射程距離じゃ、この位置には届かない……俺に、射撃勝負を挑もうなんて十年早いんだよ!)




「パーティクル・キャノン!!」




 ズドンッ!!




 共に放たれる魂の一射。


 烏丸の予想通り、従来のブラスターの射程距離では植村の一射は彼のもとには届かない。

 しかし、彼の放ったは“雷気”の力で加速された特別な一射であった。


 それは、さながら荷電粒子砲の如き、速さと威力で烏丸の身体を撃ち抜いた。


 そして、植村の方は代わりに飛んできた烏丸の弾丸を回避成功して、一対一の射撃勝負ガンバトルを制したのであった。







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