部外者の矜持
「本気で言ってる?テンを安心させたい為だけの嘘だったら、それは“優しさ”じゃないからね!?」
珍しく感情的になって、ナギが言ってくる。彼女も賢い性格だ。団長の案に、乗るしかないと思ってたのだろう。
「こんな時に、嘘は言わないよ。ただ、もちろん……成功する確率は、高いとはいえない。ただ、この作戦は、ここにいる全員の協力が必要だ。俺に賭けるかどうかは、みんなが判断してくれて構わない」
この言葉に、真っ先に乗ってきてくれたのはテンだった。
「私は、信じる!でも……具体的に、どうやって団長の“
「“
その解答に、すぐに副団長が異を唱える。
「それは、無理です!“
「はい、聞いてました。でも、言ってましたよね?ほぼ同時に七回の大打撃を放つことが出来れば、単独でも攻略は可能だ……とも」
「言いましたが、そんな芸当……S級の冒険者でも、出来るかどうか。確かに、テストでエリザさんを倒した貴方の実力は認めています。しかし、そんなことが出来るだなんて、どうしても私には信じることが出来ません」
やっぱり、そうだよな。会ったばかりのような助っ人に、いきなり自分や仲間の命を預けるような真似……真っ当な上司なら、しないだろう。
そんな、上司を説得するべく
「私は、信じます!こうみえて、やる時はやる男なんです。そんでもって……悔しいけど、めちゃくちゃ強いのも知ってます。おそらく、あのテストの時だって、本気は出してなかったはずです!!」
テン……そこまで、俺のことを評価してくれてたなんて。でも、山中で一緒に戦った時の記憶ぐらいしかないはずなのに、どうして本気を出してないのが分かったのだろう?
もしかしたら、それが分かるぐらいに、彼女も強くなっていたということなのかもしれない。
すると、意外な人物まで賛同してきてくれた。ナギである。
「なら……私も、信じてみることにします。彼、普段は自分の意見とか言わないタイプなんですよね。でも、言う時は大抵、その意見に自信がある時なんですよ。謙虚に見積もってましたけど、そこそこ勝算があるんじゃないかなって思ってます」
俺の目を見て、ニコッと微笑んでくるナギ。
何回かプライベートで遊んだことがあるだけで、そこまで性格が見抜かれてたとは。嬉しいような、恐ろしいような。
「お二人が、そこまで言うのなら……私も、信じてみたいと思います!植村さんのこと」
今まで沈黙を貫いていた雲雀さんまでも、賛同してきてくれた。ただ、この場合は俺への信用というより、テンとナギを特別に慕っているからじゃないかと思われる。
実際、よく言った!とテンに頭をわしゃわしゃされて、子犬のように喜んでいた。
しかし、そんな三人の太鼓判にも、まだ副団長は難色を示していた。団員たちの命がかかった決断だ。慎重になるのは、当たり前だろう。
「テンとナギは、交友関係があったから、そこまで信じれるのかもしれませんが……正直、彼は部外者の人間です。そこまでして、命を張ろうとする理由が分かりません」
「お言葉ですが、この戦艦の遥か下には俺の男友達や、知り合いだっています。その人たちを助けたい気持ちなら、部外者だって持ってます!少なくとも、生半可な気持ちで提案したわけじゃない。ただ、それでも……今の指揮官は
黒宮さんはジッと俺の目を見つめてから、しばし
「……分かりました。植村ユウト、あなたを信じてみることにしましょう」
その一言に、テンとナギがパッと顔を明るくさせて、互いにハイタッチを交わす。
本来であれば、こんなギャンブル性の高い選択肢は選ばないタイプだったが、彼が“冒険王”の血を引く人物だと思い出し、その一縷の可能性に賭けてみたくなったのだった。
そこに、急にキーボードを操作している手を止めて、朝日奈さんが話に割り込んできた。
「ちょっと、待った!私の意見、聞かれてないんですけど!!」
「えっ!?朝日奈さん……俺の作戦、反対派?」
「ううん。賛成派!ただ、仲間外れっぽくて、イヤだっただけ〜」
こんな場面でも、マイペースだなぁ。ただ、おかげで緊張感も
そんな彼女が、ドヤ顔で操作を終えると……。
「えっと。司令塔、見つけたよ!これで数分間は、敵のドローンを足止め出来るけど……ユウトの、
「よし!じゃあ、朝日奈さんが“
むしろ、止めてもらえなったら、作戦が成立しなかったまであるので、朝日奈さまに感謝だ。
「まずは、俺とテンが団長に接近する。そして、俺が“
“
その為に、とどめの役をテンに任せることにしたのだ。
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