太陽の転覆

太陽が海になるとき

月の貴女に もはや逃げる場所はない


辿り着くもの 満たされぬもの

……嗚呼 思考は夜の荒波に熔け

私の舟は時間のあとを滑りながら

その痛みや涙を感じることがない

貴女のハーモニカから飛び出す磁力の泡は

私の蛇の瞳を捕えて離さない


岩の塊にすぎない宇宙の落ちこぼれが

空を駆け降りては神か何かと誤解されても

悲歌をうたい始める者はなく

麗しさを失うものは何もなく

貴女は ソクラテスの仰いだ毒杯を思って泣く

私のプラトニックな指先が

幼い日々の氷の想い出をなぞるのを

夕闇の中で静かに拒むように


太古の洪水は 国の形を様々に変えたという


……嗚呼 だからなのか


私の夜が 今

こんなにも幸せなのは







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