第104話 後始末
エウローパ市郊外
念のために落ちていた小銃を拾ったところに一騎の騎竜が突入してきた。
もう戦い自体は終わったと思っていた自衛隊も呂宋軍警察もエウローパ都市憲兵隊も慌てて道を開けると、アントニオ市長が一人取り残されて、腹部を槍の柄で薙ぎ倒されて失神した。
「パプリーアス子爵が嫡男、アーネスト!!
貴軍の総大将アントニオ・ヴェッサローニを一騎打ちにて勝利し、捕虜にした!!
身代金の相談は、戦が終わったのちに承る。
道を開けられたし!!」
思わずどの隊も道を開けて、アーネストを返してしまう。
アントニオ市長は騎竜の背に乗せられていた。
暴れないように手首、足首が縛られて、猿ぐつわを咬まされているが誰も取り戻そうとしない。
アーネストの帰路には長沼一佐がハッチから身を乗りだし、拍手していた。
「お見事。
まあ、お手柔らかに頼むよ」
気を失っているアントニオ市長は目を覚まして、助けて欲しそうな顔で見ているが、
「まあ、一騎打ちの作法の結果です。
諦めて下さい」
紛争自体は地球側の勝利だし、戦死者もいない。
貴族連合軍側は数十人の戦死者を出した。
捕虜の1人ぐらいは仕方がない気分だった。
日本人じゃないし、あとはエウローパ市が勝手にやってくれな気分だった。
後日、長沼一佐はホテルのロビーでハーベルト公爵家夫人ローザマインと会見していた。
「撤収前の最後のご挨拶と思いまして」
「それはご丁寧に。
でも怒られなかったの?
アントニオを捕虜に取られて」
その点には総督府は全く言及しなかったどころか、労いの言葉を贈られていた。
アントニオ市長は職務遂行が不可能として、代行の市長が立てられていた。
貴族連合軍もハーベルト公爵家を仲介として、和平に応じて来た。
アントニオ元市長がトリビオン伯爵家に婿入りさせられるかは、いまだに交渉が続いている。
武勲を一人たてたアーネストは、パプリーアス子爵家の家督を継ぐことになった。
「総督もアントニオ市長の傍若無人振りに辟易していたようで、痛い目に合って貰ったことで溜飲を下げたようです」
「あなた方よく、今まで同盟を保ててたわね。
まあ、いいわ。
今回はお願いがあるの……」
長沼一佐は身構える。
「お伺いしましょう」
「今、お腹にいる子がアントニオとの子供という証明が欲しいの。
日本にはその技術があるのでしょう?」
今度こそ長沼一佐は、ソファーごとひっくり返っていた。
「いや、もう勝手にやって下さい」
関り合いになるのはもう御免だった。
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