第6話
「……君が神様だったんだね」
《東川高校の神様 仮》と読み終える。
グラウンドからの声は弱くなり、放課後の終わりを告げている。教室は少し暗くなってきた。
「……音読しないで」
由衣に顔はすでに真っ赤だった。暗い教室でもよく見える。
「それで……どう?」
「うん。いいと思う」
元々、"東川高校の神様”はモテない学生によって広まった噂だ。"我々がモテないのは青春の神様が意地悪をしているからだ”。
「ふ~ん。そう」
少し嬉しそうだ。
「ストーリーに元ネタはあるのか?」
「オリジナル」
「そりゃあいい」
「でも、盛り上がりが少なくないかな」
「まあ、その点は映像でなんとかするよ」
それがおれの仕事だ。
「じゃあ、任せたよ」
「了解」
我々が制作する映画についてまとめよう。
題名 《東川高校の神様について 仮》。
キャスト 村方天馬、田中由衣、八木くるみ。
ジャンル ミステリー。
提供 私立東川高校映像部。
内容 私立東川高校3年寺島修は学生の何者かの手記を拾う。そこには学生達の運命が記されており、寺島は彼等の青春を支配する者の存在を認知した。彼は自身の青春を正しい形に戻すために奮闘する。
ざっとこんなもんだろうか。
「そういえば、最後の台詞は未定なのか?」
《東川高校の神様 仮》の最後には台詞が書かれていなかった。
「うん。まだ決まってない」
「後々考えればいいさ」
「電波くんが決めてよ」
「君が書いたんだ。君がきめなよ」
おれにそんな資格はない。
「それが出来ないから頼んでるんだよ」
「わかったよ。これも後々考えるよ」
まだ、始まったばかりなのだ。ゆっくり決めればいい。
「次はどのシーンを撮ろうか」
「手記を拾うシーンとかどう?」
「映像としても浮かびやすい」
「ね、寺島くん」
「男装って手もある」
「逃げるなよ」
「わかったよ」
撮影の様子を見ると真面目になればなるほど後からのダメージは大きそうだ。だからといって、不真面目にやるわけにはいかない。大人しく、恥を受けよう。
「そろそろ人が来そうだな」
いつの間にか隅にあった影が教室を包んでいた。外には鞄を持った学生がちらほら見え始めていた。
「クルミちゃんには後で伝えとくね」
「ああ、ありがとう」
おれは教室を出る。
明日は休日だ。休日の間に色々と考えればいい。
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