司書シェリアは世界に飛び立つ
かみさん
第1章 司書シェリアは世界に飛び立つ
プロローグ 『たとえばこんな噂』
その国は異常だった。
武に秀でた帝国。
歴史の長い聖国。
国が繫栄し、力を持つには必ずそれ相応の理由が存在する。
そして、何かに秀でていない国はどこかの国に守ってもらうしかない。
しかし、それもそれ相応の対価を示す必要がある。
労働力。
技術。
金。
自身を守れぬ国は、守れる国が欲しているものを差し出すしかないのだ。
だが、そうでない国があるとしたら?
武はある。しかし、秀でてはいない。
歴史もある。しかし、他とそう変わらない。
労働力、技術、金……すべてが秀でているわけではないのに、帝国、聖国領の国ではない他国を吸収し、大きくなっていった国がある。
次第にその国は、帝国、聖国と並び、王国として二国に並び立つこととなった。
そして、この三国で三大国家と称えられるまでになる。
ここで疑問に思うだろう。
なぜ、王国はそこまで巨大になれたのかを。
戦争ではなかった。
戦争であれば、機を見た帝国が干渉していたはずだったから。
だが実際、王国は繁栄を極め、帝国と武でも並び立つほどの国へと昇華した。
その理由を知るものは少ない。
知ってしまえば恐れられる。
知ってしまえば反感を買う。
だが、知られなければそうはならない。
知らないままに、他国を自ら属国となるように誘導したのだ。
——恩という毒を潜ませて。
簡単なことではない。
他国を助け、恩を売り、自らを属国とするように誘導する。
むしろ、やっていることは異常の一言に尽きた。
しかし、結果として王国は存在している。
ところで、こんな噂を耳にしたことはないだろうか?
王国には『司書』と呼ばれる相談役がいるという噂を。
王国貴族しか知らない。
だが、王国貴族ですら彼女の詳細は知らない。
あらゆる相談に応え、その解決策をもたらすという奇跡の所業。
そして、王国が各国から様々な知識を集めているという噂。
そんな少女が本当にいるのであれば、おそらくその少女が王国の繁栄の鍵を握っているのだろう。
あらゆる知識を備え、未来を見通すとまで言われる少女。
そんな存在がいるのであれば、王国の急発展も納得できる。
でも、注意してほしい。
この噂さえも、彼女が流しているかもしれないということを。
本当に、未知とは恐ろしい……。
ならば、全てを知ると言われているという彼女にはどんな景色が見えているのだろうか?
興味は尽きない。
だから、見せようと思う。
全てを知り、全てを見渡すと言われている少女。
王国に飼われている彼女が、世界に羽ばたいていくまでの物語を——。
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