前世

Rotten flower

第1話

最近よく前世診断というのが話題だ。

内容はその名の通り前世を調べるという非常に簡素なものだがSNS上で誰かがツイートし始めたことが有名になった要因らしい。

「すみません。前世診断を予約した相田ですが。」

「相田さんですね。どうぞ、席にお座りください。」

私はその男が指した椅子に座った。特に椅子に怪しい点は見当たらなかった。

「まず先日申込みフォームに入れていただいた情報をですね、再度確認させていただきます。」

男がそういうとある一つの無機質なファイルを手に取ってきた。

「名前、相田沙名。年齢、27歳。独身。身長……」

顔色を変えずに男は私の情報を話していく。時には話されたくないことですら淡々と話し続けている。

「……ですね。これから質問させていただきます。まず、悩みは……」


私は15分間質問攻めにあった。深い質問、浅い質問。色々在ったがその人はなんのリアクションもなく、ただただ手元のメモにメモをしていた。


「診断結果が出ました。あなたの前世は人間です。」

私は口から放たれる言葉に心のなかで喜んだ。もしここが人前でなければ両腕を伸ばしながら勢い良く立ち上がり喜んでも良いほどだった。


街は爆発し、雲は黒く染まり、人の心は灰のようになってしまっていた。

「ごめんね。ごめんね。」

私を抱いてくれている母親は涙を流しながらそう謝るように呟いた。

戦争が激化していったある日に村長が非現実的なことを言い始めた。

「前世が弱い奴は生きる資格がない。出て行け。」

そんな噂が流れるとみんなは、

「どうやって前世を確かめるんだ。」

「前世なんてわかるはずがないじゃない。」

そう周りの人が│五月蝿さわぐとある人が、

「僕。前世見れます。」

そう言い始めた。


やっと私の番がやってきた。

「君は……人間だね。」

「人間?!……弱すぎる!出て行け!」

私は村八分になってしまった。


人間って、本当に弱いのかな。

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前世 Rotten flower @Rotten_flower

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