死を喚ぶモノは懺悔する

高久高久

とある王国と、異世界召喚

――あるところに、王国があった。

 王が治める国は、隣国と争っていた。

 何故争いが起こったか。最初は領地争いか、互いの面子か。切欠はそのようなもの。

 争いが続き、どちらも互いの国を壊し、兵を殺し、民を穢した。

 妥協して終わらす時期は過ぎていた。この争いは、どちらかの国が亡ぶまで終わらない。

 拮抗していた争いは、隣国が兵力を強めた事で崩れ始めた。外部から傭兵などを集めていたのだ。

 王国は後手に回っていた。押され、殺され、追い詰められ。残る道は王の首を差し出すしかない。そう思われていた。


 王国にある教会が、挽回の手立てを持ちかけた。

 それは【異世界召喚】という、この世界とは異なる世界から力のある者を召喚する儀式。

 王の娘である姫に召喚の力がある事が判明し、藁にも縋る思いで儀式に頼った。


――そして、1人の男を召喚した。


 その男は、という事に長けていた。

 数多の兵を殺し、指揮する者を殺し、そして遂には隣国の王をも殺した。


――争いは終わった。召喚した1人の【英雄】の手によって。

 王国は隣国を手に入れ、その勝利を祝った。


――だが後に、王国は突然滅ぶ事となる。

 王が死に。

 王族も死に。

 王の周りに居た者も死に。

 教会の者も死に。

 民も死んだ。


――何故王国が滅んだのか。

――何故王国の者が死んだのか。

――【英雄】がどうなったのか。


――それは、語られてはいない。

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