修羅場③
線香の煙が昇る。墓の前で手を合わせる相良は目を閉じ黙祷を捧げる。そしてその後ろにはツーブロックに短い髪、半袖の服からは入れ墨が見える筋骨隆々な身体。一見すると反社会的とも思える男が立っていた。
男は煙草に火を付け一服すると、ふーっと一呼吸置き、咥えていた煙草を墓石の上に乗せた。
「
「んなもんサボった。そんな事よりよぉ相良、夏目はどこだ?」
「心労で休暇中」
相良の返答を聞くと手を合わせる播磨。ほんの少しだけ間を置き、また新たな煙草を口に咥えて話す。
「ふーん、まあ無理もねぇ。アイツ、終始口にはしなかったが、鏑木さんのこたぁ家族のように慕っていたからな」
「オッサンも、最後の最後までその言葉を聞けずに死んでまうんやから……とんだお笑いやで」
精一杯の冗談。いつもなら茶化す場面だが、相良の声色から察した播磨は頭を掻いた。
「笑えねぇな。でもよ、必要な情報は得られた……そうだろ?」
イヴが生き残りを尋問の後に殺処分し、そこからある程度の事は分かった。今回の一件、特異局そのものを狙った悪辣行為として奴らを叩く。
当事者である相良も本来、駆り出される所ではあるのだが────────
「後の事はオレが引き継ぐ。お前はしっかりと休んで、傷を癒やすことに専念しろ。いいな?」
「………………」
◇
学校は崩壊したものの怪我人は極端に少なく、その場にいた一般人は全て奇跡の生還を果たした。
その後、対応のため休校となった生徒達は適当な理由で説明を施され、午前は遠隔での授業、午後は自由の身と実質的な休みに入った。
播磨が仕事を引き継いだその日の午後、金本・朝陽・小田の三人は学校からの説明に納得がいかず、当時の状況を整理するため、ファストフード店に集まった。
しかし特異局すら全貌を明かせていない事柄をただの学生が理解出来るはずも無く、話し合いは徒労に終わる。
仕方がない、と三人は食事を済ませ、店から出ようと席を立つ。とその瞬間、周りの客も一斉に立ち上がり、その行く手を塞ぐように詰め寄り始める。
高校生と思わしき未成年を大人達が取り囲む、そんな異常な光景に誰も警察を呼ばない。
三人は叫び、抵抗するも抑えつけられ、薬品が塗られたハンカチで口を塞がれる。
そしてその時、裏社会に足を踏み入れていた小田だけがその違和感の正体に辿り着く。
暴力団・悪名高い指名手配犯すらも忌避する存在。南米の犯罪組織を起源とする宗教『一心教』。その信者共に自分達は目をつけられたのだ、と意識を失う直前、小田は理解した。
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