突然変異③
訓練室の端に置かれている横長のベンチ。そこに腰かける女が二人。
そして部屋のど真ん中、離れた位置から向かい合って立つ男が二人。距離にして10m。一方は
「お互い殺しちゃダメだよ〜、OK???」
「了解です。合図を」
「それじゃあよーーーい……──ドンッ!!」
柊の掛け声と共に師人は能力を発動。相良は地面を思いっきり蹴り、距離を詰めながら刀を斜に構える。
「よっしゃぁ!! 行くでぇ!」
「『
「んあッ? なんやこいつら!?」
空中を泳ぐ無数の肉食魚が、相良に襲いかかる。
血走った目つきに肉を
「もうちょっと苦戦しろよお前」
「なんや手ぇ抜いて欲しいんけ?」
「
師人は覆っていた霧の一部を手先に集め、その形を作り出す。持ち手の
「そんなことも出来んのかいな」
「絶賛練習中。こういうのは嫌いか?」
「笑かすな、
お互いの距離は気がつけば残り四歩分。得物を持った二人の制空権は重なり、文字通りその火蓋が切って落とされた。
「そのアホ面ぶっ飛ばしてやるよ相良!!」
「ヒャッハァ〜〜!! いてこますで師人!!!」
皮一枚でその刃を避け、受け、流す。斬撃の軌道を予想し返す刀で攻撃する。
「柊先輩はどっちが勝つと思うっすか?」
「う〜ん、師人はタフだし
「よっしゃぁ! もろたで師人ッ!!」
一瞬の隙をつき師人の黒刀を吹き飛ばした相良。そのガラ空きとなった胴へ、間髪入れず横薙ぎを払う。続く一閃、それは勝敗を決するに十分な一撃のハズ。だった────。
「なっ、切れへん!?」
「性能テストって言っただろ」
天高く挙げられた師人の手には、既に新たな黒刀が握られている。上段からの振り下ろしは相良が体勢を整え"受ける"よりも圧倒的に速い。避けは不可能。だから、相良は敢えてその体を師人に預けた。
「は……?」
「内部からの攻撃はどうや?」
相良は数ミリの間隔を開け、体を寄せ、その手の平を腹部に当てる。そして────。
「『
「ぐふぁッッッ!!!!?」
内部打撃。力積を高め内蔵を直接揺らすその発勁は、衝撃によって師人の体をくの字に曲げる。攻撃は最大の防御。その打突は
「師匠直伝の中国拳法、手応えありや」
「………ふぅーーー」
「あ?」
吐血、
ものの数秒で再生していく身体を前に、相良は冷や汗と共に弱音を吐き出した。
「それはアカン! かんにんして!!」
油断していた所に斜めからの一閃。直感的に上体を反らした相良は薄皮一枚切られるも、致命傷を避けて後方へ距離を取った。
「どうやらこの体……バラバラにされない限り問題なさそうだ」
「いやいやチートですやん。
「俺が運営だ」
「それは最悪や」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます