第1話 廃墟の呪い

わたしは30代の日本人男性です。


あなたに恐怖体験を語るのは、忘れたくても忘れられないからです。


それは2年前の夏のことでした。わたしは友人と一緒に山奥の廃墟に探検に行きました。廃墟というのは、昔はホテルだったらしい建物で、今では壁が崩れて草木が生い茂っていました。友人はカメラを持って写真を撮りまくっていましたが、わたしは何となく不気味な感じがして、早く帰りたかったです。


廃墟の中を歩いていると、突然友人が「おい、見てみろ」と言って指さしました。わたしが見ると、そこには小さな部屋がありました。部屋の中にはベッドや机や椅子がありましたが、すべて埃まみれでした。部屋の壁には赤いペンキで「死ね」と書かれていました。「ここ、何かあったんじゃないか?」と友人が言って部屋に入ろうとしましたが、わたしは止めました。「やめろよ、危ないだろ」と言って引き戻そうとしたのです。


しかし、その時です。部屋から女性の声が聞こえてきました。「助けて……」という声でした。声は弱々しくて悲しそうでした。わたしたちは驚いて顔を見合わせました。「誰かいるのか?」と友人が言って再び部屋に入ろうとしました。「やめろよ!」とわたしが叫んだ瞬間、部屋から凄まじい悲鳴が聞こえてきました。「キャーーーー!」という声でした。声は女性ではなく男性のものでした。


その後、何が起こったか覚えていません。気づいたらわたしは外に出ており、友人はどこにも見当たりませんでした。カメラだけが地面に落ちており、液晶画面には「死ね」と書かれておりました。


それ以来、わたしは夜も眠れません。友人の行方も分かりません。あの廃墟に何があったのか知りません。でも一つだけ分かることがあります。


あそこに行ってはいけなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る