第25話 寒空とこれから

「はぁ…」


神門は、1人コート横に立ち、指先でボールを回していた。


「つまんな」


全治3か月を言い渡され、ドクターストップをかけられた。

その間、練習には参加できず、大会もいくつか欠場することが確定している。


「煉、退屈なのは分かるけど、不貞腐れるなよ」

「暇なんだよ」

「そんなもん見れば分かる」


退屈そうにボールに触っている神門を見かねて、香威は、話しかける。


「退屈だなぁ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「先輩」

「んー」

「腰、大丈夫ですか?」

「大丈夫ではなさそうだな」

「ですよね」


練習を終え、神門と霧崎は、いつものように2人で帰宅する。


「全治3か月ですよね」

「ああ」

「今が11月で、3か月となると、1月いっぱいはできないですね」

「そう考えると長いな…」

「ですね…」


霧崎は、心配から何と声をかければ良いのか分からず黙ってしまう。


「お前が心配することじゃねぇよ」

「そうは言いますけど…」

「あんまん奢ってやるから」

「僕を食いしん坊キャラと勘違いしてません?」


2人は、コンビニへと立ち寄る。


「そういえば、お前ってつぶあん派?こしあん派?」

「あーそれ良く言いますよね」

「こだわりある?」

「無いですね。僕はどっちでも大丈夫です」

「そうなんだ」


2人は、それぞれ肉まんとあんまんを注文し、いつものベンチに座る。


「夜はかなり冷えますね」

「もう、ここで何か食って帰るのも厳しいかもなぁ」

「そうですね…」


暦は、11月となり夜はかなり冷え込んで来た。

そんな中、外で過ごすのは厳しい時期になる。

そのことで、こうして寄り道できなくなることが霧崎にとってショックだった。


「お前って寂しがりや?」

「そうかもしれないです」

「じゃあ、考えないとな」

「へ?」


神門の発言に驚く霧崎。


「いや、流石にこれからの時期、寒空の下で過ごすのは無理があるだろ。だから、何か考えないとなって」

「えっと、これからも放課後にこうして一緒に居てくれるんですか?」

「嫌なら良いけど」

「嫌じゃないです!」

「あっそ」

「先輩ってそんなに私と居たいんですか?」

「寄り道しないで帰るぞ」

「あぁ!!嘘ですごめんさい!!」


霧崎は、調子に乗ったことに対して、しがみ付いて謝罪する。


「離れろ」

「嫌です」

「はぁ…。それで、これからの時期どうするかなぁ」

「そうですね…」

「いつもの喫茶店に毎回行くのも財布が痛いし」

「ですね」


2人は、これから放課後をどう過ごすかを考える、


「もうこれしかないのかなぁ」

「なにか思いつきました?」

「俺の家」

「ふぇ?」


思わず素っ頓狂な声を出す霧崎。


「仕方ないだろ。まあ嫌なら良いけど」

「いえっ!!むしろ、推奨します!!」

「あっ、そう」


こうして、これからの時期の放課後は、神門の家でひと時を過ごすことが決まった。

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