第23話 練習着

今日は学校は休みだ。

そして、同時に部活も休みだ。

理由は、男女共に監督が出張でいないためだ。


「すぅ…すぅ…」


完全なオフの日であるため、神門煉はまだ寝ていた。


『ピンポーン』


神門家のインターホンが鳴る。


「すぅ…」


『ピンポーン』


「すぅ…すぅ…」


『ピンポーン』


「んぅ…」


『ピンポーン』


「うるせぇな…」


『ピンポーン』


「分かったよ…」


インターホンの音で目が覚めた神門は、そのまま玄関へと向かった。

この日も両親は、仕事で神門煉しか家に居なかった。


「はーい」


『ガチャ』


神門が扉を開けると、その先に一人の女の子が立って居た。


「遅いです、先輩」

「お前か…」


扉の先には、霧崎が居た。


「お前、何で家知ってるの?」

「だって、この前位置共有アプリを入れたじゃないですか」

「あー、あったな」

「それより、約束覚えてますか?」

「あぁ…あ?」

「買い物行くって約束してたじゃないですか」

「あーはいはい」

「忘れてましたね…」


以前、オフの日に共に買い物に行く約束をしていたのだが、神門は忘れていた。


「それで、先輩。行けるんですか?」

「ああ、今から準備するから…。外で待つのもあれだから、上がれ」

「えっ」

「外で待ちたいのか?」

「いえっ!お邪魔します!!」


神門は、霧崎を家に招き入れる。


「リビングのソファーに座ってろ。着替えてくる」

「はい」


霧崎にくつろぐように言って、着替えるために部屋へと戻った。


「ふぁぁぁぁ」


寝起きという事もあって、あくびが出る。

クローゼットから着替えを取り出し、身だしなみを整える。

その間、霧崎は…。


「(先輩の寝起き、なんかいやらしかった…)」


霧崎は、ただでさえ細い目が寝起きだともっと細くなる神門の目を見るのが好きだった。

その上、部屋着を見ることが出来て、嬉しさがカンストしていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「それじゃ、行くか」

「はい!」


着替えを済ませ、2人は買い物に行く。


「それで、練習着を買うんだったか?」

「そうですね」

「お前ってそんなに部活に熱心だったか?」

「先輩がバスケで輝いているのを見て、僕もバスケで頑張りたいなって思って」

「そう」

「はい」


店まで、歩きながらそんな事を話しながら向かっていた。


「あっ」

「どうしたんですか?」


神門は、何かを思い出したかのように立ち止まる。


「私服似合ってるぞ」

「はっ!?」


急な言葉に驚く霧崎。

神門自身、あまりこういった事を言わないが、なんとなく思い出して言ってみたのだ。


「先輩って時々、こういう事言うから困ります」

「そうなんだ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


スポーツ用品店に着いた2人は、いつものようにバスケ用品が置いてある場所に進む。


「もう長袖が多いですね」

「みたいだな」

「この手袋みたいなの持ってます?」

「あ?ああこれね。持ってない」

「欲しいとかは無いんですか?」

「うん、邪魔」

「邪魔って…」


2人は、バスケ用の手袋を見つける。

主に手甲をカバーするものであって、指がむき出しになっているデザインだ。


「男子の方ってアームカバーとか着けてる人多くないですか?」

「まあ多いかもな」

「香威先輩とか一色先輩とか着けてますし」

「まあな」

「先輩とかオールラウンダーな選手なんですから、そういうのを着けたらどうなんです?」

「面倒くさいし、腕になにか着くと違和感とかありそうで嫌」

「出た、面倒くさい」

「本当の事だから仕方ない」

「でも、膝のサポーターは着けると」

「そりゃあ、膝の負担が凄いからな」

「あんだけ、飛んだりしたら負担かかりますよね」


神門のポジションは、基本はスモールフォワードだが、基本的にどのポジションもこなすことが出来る。

時には、ポイントガードとしてボール運びやゲームメイク。

時には、インサイドで勝負。

時には、アウトサイドからの駆け引き。

ドライブもスリーポイントも出来る選手だった。

そのため、運動量や疲労が他の選手よりも多かったりする。


「というか、お前はそういうの着けなくて良いのか?」

「んー、僕の場合は、まだスタメンでないですし。それに、先輩みたいにどのポジションも出来る訳ではないですから」


霧崎のポジションは、シューティングガード。

アウトサイドを主体としたプレイが主な役割だ。


「それに、先輩は中学生のくせにダンクとかできるから体に負担かかるんですよ」

「いや、そんなにダンクはしてないから。できるけど、そんなに意味が無いからしないだけ」

「ダンク出来ない人に喧嘩売ってるんですか?」

「売ってねぇよ」


2人は、目的でもあった練習着を購入し、行きつけの喫茶店で残りの時間デートをした。

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