第4話 距離感が近くなっている2人

桜の木々は、華やかな桃色から、鮮やかな緑色へと変わっていた。

世間はゴールデンウイークとなり、大型連休の話題で溢れていた。

それは、夜桜中のバスケットボール部にも言える事だ。


「ゴールデンウイークだなぁ」


神門は、部室の窓際に肘をかけ、外を眺めていた。


「おはようございます!」

「うぃー」


今年、入部してきた1年生が挨拶をする。


「煉、お前何してんの?」

「香威か」

「部室に入るたびにお前が黄昏ているのを見てる気がするんだけど」

「そうなんだ」

「何で他人事なんだよ」


『コンコンコン』


神門と香威が話していると、部室の扉がノックされる。


「入るよー」

「監督じゃないっすか」

「どうかしたんですか?」

「この前の大会の賞状を、額縁に入れたから持って来たよ」

「あぁ、この前の」

「ありましたね」

「いや、2人とも優勝してるんだから。むしろ2人ともスタメンで勝利に貢献したんだから、もっと喜びなさいよ」


ゴールデンウイーク初日、10校のバスケ部が参加する大会が開催されていた。

その大会で、夜桜中男子バスケ部は優勝を果たしていた。


「これでも喜んでますよー」

「煉の言う通りです」

「あなた達にゲームメイクは任せてるけど、自由にやり過ぎよ」

「ファールを貰いながらスリーポイントを撃ってみたかったんで」

「煉がどうしてもやりたいって言うから」

「あなた達は、やることやってるから無駄に怒れないのよね…」


ゴールデンウイークだろうが、彼らの日々は変わらない。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「煉先輩!!」

「ん?」


神門が誰かに呼ばれる。

今は、練習の合間の休憩時間だ。


「おはようございます!」

「霧崎か」

「はい!」

「どうかしたか?」

「いえ、何となく声をかけてみました」

「そうなんだ」


霧崎から神門に話しかけてくることが増えてきた。

それも、アイスを神門が奢った日から、その頻度は増えていた。


「ねぇ、あさひ」

「一華?」

「あの2人ってどういう関係なの?」

「さぁ」

「神門ってどこか掴みどころがないじゃん?。それと、あの悠那が仲良くしてるって不思議なんだけど」

「俺も知りたいぐらいだよ」


神門と霧崎が話しているのを横目に、香威と佐藤が彼らの関係について話していた。


「煉先輩、今日も眠そうな顔してますね」

「俺はいつもこんな顔だよ」

「目が細くて可愛いです」

「それ、褒めてる?」

「チベットスナギツネみたいです」

「そんな具体的な例え出てくるの凄いな」

「ご存知でしたか」

「可愛いよな」

「煉先輩も似てて可愛いです」


『ビー!!』


休憩の終わりを知らせるブザーが鳴り、1年生を交えたゲーム形式の練習を始める。


「おっ、今日はキャプテンと同じチームっすか」

「確かに、珍しい気がするな」

「じゃあよろしくお願いしまーす」

「おう」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




練習を終え、帰路につくのだが…。


「煉先輩、帰りましょ!」

「いや、良いけど。何、1人で帰れないの?」


最早、当たり前のように霧崎と帰るようになっていた。


「良いじゃないですか。一緒に帰りましょうよ~。女の子を1人で返すつもりですか」

「いや、1人で帰る女子もいるでしょ」

「同じ方角なんですから、良いじゃないですかー」

「お前って、そんな生意気キャラなの?。僕っ娘で生意気ってキャラ渋滞してない?」

「これが素なんですよ~」


練習後は、2人でこうして帰るのが日課となっていた。

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