生意気な後輩が嫁になりたがっている。

MiYu

第1話 夜桜中の春

夜桜よざくら中学校、春。

新学期が始まり、新たな学校生活が始まる。

2年生となった、神門煉みかどれんは、バスケ部の部室に居た。


「春だなぁ」


部室の窓際に肘をかけ、外を眺める。


「煉、監督が呼んでるぞ」

「は?何で?」

「知るか」


煉に声をかけたのは、煉と同じクラスであり、同じ部活のチームメイトでもある香威かいあさひだ。


「めんどくさいなぁ」

「仕方ないだろ。お前、去年、選抜の代表への参加を蹴ったんだから」

「えぇ…。それ関係あるやつ~?」

「さあな」


神門煉は、昨年、1年生にして県の選抜のメンバーとして選ばれていたのだが、面倒になり参加を取りやめたのだ。


「あんな堅苦しいところでやってられるか」

「お前は、多くの人を敵に回していることに気づかんのか?」


神門煉という男は、良くも悪くもルーズな男だ。

とは言っても、別にやる気が無いわけではない。

むしろ、やるべきことはやると言った、責任感は顕在している。


「そういえば、香威って昨日デートしたんだろ。どうだった?」

「話の逸らし方が、恐ろしく清々しいな」

「えぇ…。良いだろ、気になるんだから」

「お前なぁ」


こうして神門と香威が話していると、どこからか足音が聞こえてきた。


『バンッ!!』


部室のドアが強く開かれた。


「神門、お前呼ばれたらすぐ来いって言っただろ!」

「奥村監督。ドアを強く開かないでください。建てつけ悪くなっても知らないですよ」


ドアを開けたのは、彼らが所属する男子バスケットボール部の監督、奥村真綾だ。


「神門の三者面談の用紙をさっさと出しなさい。なんで課題の提出は完璧なのに、こういうのは期日を守れないんだ?」

「あぁ…。それならここにあります」

「あるんなら、猶更出しなさいよ…」


奥村真綾は、監督でありながら、神門煉と香威あさひが在籍するクラスの担任でもある。


「というか他のみんなは?」

「他のクラスは、掃除じゃないっすかね。先輩たちは知らないっすけど」

「キャプテンなら、生徒会があるって言ってましたー」


奥村監督の問いを、神門、香威の順に答える。

この学校のバスケ部は、人数がそこまで多いわけではない。

神門たち2年生は5人。

彼らの先輩である3年生は、キャプテンの一人だけである。


「明日は、部活動紹介あるけど、何かやること決めてるの?」

「あぁ、軽く練習風景見せて、残り2分でミニゲームをするといった感じっすね。だよな香威?」

「だったと思います」

「そう、じゃあ神門。そのミニゲームの時に派手な事しなさい」

「派手って何すか」

「ダンクとか?」

「ふざけてるんすか」

「冗談よ。まあスリーとか撃ちなさい」

「軽いなぁ」


新入生の部活動勧誘を兼ねた紹介なのだが、中学の部活というのは、スキルよりも人数が多ければ良いみたいな節がある。


「まあいいや、みんなある程度集まったら練習始めるよ」

「「はーい」」




その後、他のバスケ部部員が集まり、練習が始まる。


「キャプテンは、忙しそうだなぁ」

「みたいだな」


神門と香威がストレッチしながら話をする。


「ねぇ、神門、香威。お前らのクラス、女子可愛いの居すぎじゃない?」

「あっ、それ俺も思った!!」

「そうなん?良いなぁ」


彼らを羨むのは、残りの2年生のメンバーである、一色瑞希いっしきみずき神薙桜かんなぎさくら音無紅葉おとなしもみじだ。

彼ら5人は、昨年の1年生のみ出場できる大会にて、全国大会に出場できる実力だ。

しかし、2年生のメンバーは、5人しか居ない為、交代はできなかった。

それでも、かなりの実力を持っている。


「そうは言っても、俺はともかく、香威は彼女持ちだし」

「神門は、裏ではモテるけど告白されないから独り身だもんねぇ」

「告白されてないから、裏でモテているかも分かんねぇし」

「「「へー」」」


そんなこんなで、夜桜中バスケ部の練習が始まる。

その日の練習メニューは、走力アップを込めた、外周をランニング。その後、ディフェンスの練習、速攻の練習、ドリブルのスキル向上、シュート練習、そして3対3である。


「集合!!」

「「「「「はい!!」」」」」


奥村監督の掛け声に返事する5人。


「今日は、三神は来れなさそうだから、2対2をする。余った一人は、得点板をしなさい」

「「「「「はい!!」」」」」


奥村監督が言っていた、三神みかみという男が、このバスケ部のキャプテンである。

その名も三神希空みかみのあ

彼は、バスケ部キャプテン兼生徒会執行部会計だ。


「じゃあ最初に出るやつ決めるか」


香威の一言に、残りの4人が拳を構える。


「「「「「最初はグー!!。じゃんけんポン!!」」」」」


これが彼らの日常だ。






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