第24話 初日から目をつけられてた
「やっぱり同じクラスだったのね」
「いや、Sクラスは一つしかないから当然でしょ」
先ほどの上品な装いから変わって運動服に着替えたアンジェリーナがぴったりとくっついてきた。
運動しやすいような薄い生地を挟んだだけの柔らかい肌の感触に図らずもドキッとしてしまう。
「初日の一番初めの授業が剣術だなんて学園なのに血気盛んなのね」
「そ、そうだな……」
俺はしどろもどろで答えるしかない。
決して異様に距離が近いアンジェリーナからフローラルの香水のような匂いがしているからではなく……!
「むぅ……」
シュヴァリエがこっちをにらみつけてんのが怖いんだよ!!
俺のせいじゃないって!! アンジェリーナが近づいてきて「王族だから邪険にできないなぁ」とか「振り払って嫌われたら死亡フラグあるよなぁ」とか考えちゃって動けないだけだから!!!
「な、なぁ距離が近すぎると思わない?」
「そうかしら? このくらい密着してないと面白いものを見れそうにないもの。あとリーナって呼んでちょうだい」
アンジェリーナもといリーナはそう言うとはいたずらっぽく笑い、運動服の裾を破れんばかりに握りしめ血の涙を流しているシュヴァリエに目くばせする。
そういう問題じゃなくて俺婚約者いるんですぅー!! さっきから視線で殺されそうなんですー!!
どう絡んできた腕をやんわりと外そうかレグルスも引っ張り出して思考していると、
「アン、リーナ王女!! その腕を離してください!! レグルスさんが困っているじゃないですか!!」
「そう、彼は困っている風には見えないけど?」
おどけるようにこちらに顔を向けてくるリーナも、「本当に困ってないんですか?」って思っているであろうシュヴァリエの顔も、怖い。
困っているんです!! 貞操も立場も何もかもでね!!
さすがにシュヴァリエも俺も我慢の限界だったのでやんわりと組まれていた腕を外す。
「あの、さすがに離れなせんか。周りの目が痛いんですけど」
もうすぐ授業が始まるとあり、教室となる訓練場にはSクラスの生徒のほとんどが集合していた。
そのほとんどの視線は俺たちに向けられていた。
特に俺には男どもからの殺気だった怨念すら感じる。
「そうね。それに──」
リーナは私の席が空いたと言わんばかりに俺の寄り添っていたシュヴァリエを見ると楽しそうに目を細めた。
「かわいいものも見れたから満足よ」
そう言い残してリーナは先生のもとへと向かっていった。
「さ、さあ俺たちも行こうか」
リーナの後を追うように歩こうとした矢先、袖口をぎゅっと握られる。
「──嫌です」
「え?」
「向こうに行ったらまたアン……リーナが話しかけてくるじゃないですか。お二人が仲良く話しているのを見るのはその……なぜか胸がムカムカして嫌なんです」
そうぽつりとつぶやく彼女の眼は不安げに揺れていた。
「すみません。わからないんです……こんな気持ち、初めて、なので……」
「大丈夫。その感情は適切なものだから。まあ、俺はそんな感情にさせないように努力はするつもりだけど」
戸惑う彼女の手を引き、先生のもとへ向かう俺の顔はいたって平静に婚約者を励ます好青年そのものだろうが内心はこうである。
──っ!!!! 嫉妬!? 嫉妬なの!? ちょっ、急に供給過多はやめてくれぁぁああああああ!!!
さんざんな悶えようである。
レグルスはドン引きして何も言ってこなかった分余計に恥ずかしい。
エロゲの本領、ここにあり……!!
「そんな顔しているってことはちゃんと面白いことが起こったのね」
整列しているとまたもやリーナから声をかけて来た。
「リーナのおかげで可愛いものは見れたけど次からはうちの婚約者を困らせるようなことはしないでくれよ」
「当分はしないわあんなこと。まあつまらなくなったらするかもしれないけど」
やめてくれ。次刺されるのは俺だからな。
命の危機を感じ始めている俺とは裏腹にシュヴァリエはこれ見よがしに腕を組んできた。
「リ、リーナさんっ!! レグルスさんは私の……なんですからね!」
そこ婚約者入れないほうが含みあるぞー。
必死に主張するシュヴァリエをリーナはほほえまし気に見つめると、
「大丈夫よ。今はまだからかっているだけ」
「今はまだ!?」
「面白いものは長く見たい主義なの」
そう言うとリーナは先生の方へ向き直った。
「これより剣術の授業を始める! 入学一発目の授業だ! 心して取り掛かるように!!」
いかにも体育会系であんな指導やこんな指導をしてそうな……いや失礼か。
「この授業では俺の指導と共にお前たちが切磋琢磨することも重要になる!! そこで初回に各生徒で一騎打ちを行いその成績でグループを作ることにする!!」
実力が拮抗している者同士で高め合うのは理解できるけど今じゃないんだよ。
「最初にやりたいものはいるか! ──そこの手を上げたお前! 名乗れ!」
「レイト・タレス。相手は、レグルス・クレイモアだ」
全員の視線が俺に注がれる。
まあリベンジしに来ることは予想できていた。
「受けてやるよ」
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【あとがき】
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