[毎月第2第4金曜日0時更新]オタクが考えた理想の彼女が現実になるラブコメ

あめのかっぱ

第1話Uber SISTAR

「はぁ…タバコ切れてるし…」


朝起きてそう呟くのは

惹来木守(ひき こもり)だった


木守は極度の引きこもりで

外出は滅多にしない

故にタバコを買いに行くのも面倒なのだ


「あ、姉ちゃんに買ってきてもらうか…」


姉ちゃんとは木守の彼女

姉萌真白(しもえましろ)

のことである

一応こんな木守だが金銭トラブルは避けたいと

真白と同じ銀行を使っていて

タバコも買って来てはもらうが

お金は電子送金をいつもしている


「姉ちゃん起きてるかな…とりま連絡するか」


木守は真白に連絡を取った

するとすぐに返信が来た

内容はというと


「お姉ちゃんがいないとほんとダメだね

今から買っていくから待っててね」


というものだった


そもそもなんで木守が真白のことを

姉ちゃんと呼んでいるのか

それは木守が一人っ子で姉というものに

幻想を抱いていて勝手にそう呼んでるだけである

だが真白も悪い気はしないようで

姉ちゃんと呼ばれるのを受け入れている

ちなみに2人は姉弟でもないし

なんなら木守のほうが年上だ

ちゃんと真白と呼ぶこともたまにある


「姉ちゃんが来るまで2時間はあるな…

ヤニ切れきついなぁ」


そう思いながら再びベッドに転がる木守


「やることもないしバーチャルYouTuberでも見てるか…」


木守は根っからのオタクである

最初はラノベやアニメを楽しんでいたが

最近はバーチャルYouTuberにハマっている

もちろん真白にこの事を隠す訳もなく…

真白にもバレている


「スピーカーで推しの癒しボイスでも流しとくかぁ…」


木守はハマると徹底的にオタクで

スピーカーもマーシャルのかなりいい物を

使っている。が最近はASMRを聞くために

イヤホンもワイヤレスから有線まで

かなり揃えていた


「あー。この膝枕シチュエーションボイス

めっちゃいいなー。姉ちゃんにやってもらお」


真白は木守のオタク気質も受けいれた上で

交際してるのだが真白もどこかズレてて

ノリノリでコスプレやらボイスなどを

やってくれる


爆音で響く膝枕シチュエーションボイス

大体この類のものは1-2時間で

気づいたら真白がもう木守の家の近くまで

やってきていた


「姉ちゃんバス停に着いたのか。コーヒー買うついでに迎えに行くか…」


真白に迎えにいくと返信し

膝枕シチュエーションボイスを爆音で

流したまま家を出た木守

木守の言うコーヒーは家から徒歩10秒の自販機だ

それすら滅多に買いに行かない

ちなみにバス停までは1分

コーヒーを買って飲んでいると

セミロングのモコモコのマフラーをした

少し小さい女の子が歩いてきた

そう。彼女が真白である


「姉ちゃん。ありがとうね。寒かった?」


そう言う木守に真白が答える


「木守くん。髪の毛ボサボサじゃん…寝て起きてタバコないからってのは分かるけど…」


木守は徒歩1分の人気のない住宅街だから

という理由で基本だらしない


「そんなのいつものことだろー。

それより姉ちゃん家行こうぜ。寒いわ」


寒い思いをしていたのは

真白のほうなのだが…

そんなことで怒る真白でもなく

木守の部屋に真白が到着した


「木守くん…部屋散らかりすぎ…

お姉ちゃんが片付け手伝おうか?」


どこまでも優しい真白

しかし片付け手伝おうかとは言ってるものの

木守がやらないことくらい付き合いの長い

真白は分かった上で言っている


「それよりタバコくれ…ヘビースモーカーにはきついぜ」


そう言いながらタバコを真白から貰う木守

ここで膝枕シチュエーションボイスを

スマホで切った


「ふぅー。やっぱりタバコはうめぇわ

姉ちゃんありがとうな」


一服して落ち着いたのか1人掛けの

ソファに座る木守

真白は木守のベッドに座った


「それより木守くん?なんか家から音漏れてたよ?どんだけ爆音で聞いてたのよ…」


どうやら真白には部屋に入る前から

膝枕シチュエーションボイスのことは

バレていたようだ


「あ、あぁ…うるさかったかな。すまん」


恥ずかしさなどもないように答える木守


「木守くん。あーゆーのが好みなの?

どーせタバコのついでにお姉ちゃんに甘えようとか思ってたんでしょ?」


真白には全部バレている


「バレてたか…膝枕してよ。姉ちゃん」


割と素直な木守

真白のクリーム色のレザースカートに

頭を乗せる


「この前会ったの2週間前でしょー?

もう寂しくなっちゃったの?」


そう言いながら頭を撫でてくれる真白


「引きこもりだからな…寂しくなる時もあるんだよ」


真白は元々子供好きな性格で

こうして木守の世話をするのも

そんなに嫌ではないようだ


「木守くん。お姉ちゃんお姉ちゃんって、

ずっと寂しそうにしてるんだもん。わかるに決まってるでしょ」


そう言われながら敵わないなと思い

真白に甘える木守


「姉ちゃんの生足膝枕されたいなー」


真白は肌が透き通るように真っ白で

何故か体質的に体毛が薄い

それもあって髪の毛も綺麗なのだが

脚もつるんとしている


「分かったわよ。スカート脱ぐから

ちょっとまっててね」


真白の白い足が見える

もちもちとしたハリのある肌に

木守は吸い込まれる


「おぉー。姉ちゃんの生足ひんやりして

気持ちいいー。落ち着くわ…」


もはや欲望のままといった木守

部屋は暖房が効いているので

真白の体温が冷たく感じる


「あ、そうそう。寒い季節だけどさ

お姉ちゃんアイス食べたくて買ってきたんだ」


コンビニでタバコを買ってきているので

何かしらついでに買うだろうなとは

予想してた木守

そして大体真白が木守の好みを把握してくれていることも分かっている


「姉ちゃん何買ってきたの??」


膝枕から離れずに聞く木守


「2人で分けられるのがいいと思ったから

雪見だいふく買ってきたのよ」


雪見だいふく…真白は木守に姉ちゃん以外の

あだ名で呼ばれる時がある

そのあだ名は大福だ


「雪見だいふくってなんか姉ちゃんそのまんまって感じのアイスだよな…」


普通の女の子なら大福なんてあだ名付けられたら

それこそ喧嘩ものだが真白は

そんな小さなことで怒らない


「木守くん。お姉ちゃんのどこが大福なんですか!」


分かってはいることだがちょっとむすっとして

ぷんすかと拗ねる真白


「え。だって姉ちゃん肌白いし、顔まん丸だし…」


姉ちゃんとは呼んでるものの

真白は童顔でメイクしてても幼く見える

顔が丸いのは本人も気にしてそうだが…


「どーせ大福お姉ちゃんですよーだ。

そんな事いいから雪見だいふく食べよ?」


やっぱり怒らない真白

この広い心と木守の心を見透かしてるかのような

優しさのおかげで喧嘩はしたことがない

99パーセントが真白のおかげである

そのことは木守も分かってはいる


「それじゃお姉ちゃん大福…じゃなくて雪見だいふく頂きます」


絶対普通の女の子ならブチ切れ案件の

大福あだ名の天丼発言も

真白は軽く流す


「肌白いのはお姉ちゃんの自慢でもあるからいいの!でもこのもちもちした食感好きなの!」


真白はやたらもちもちした食べ物が好きである


「雪見だいふくが雪見だいふく食べてるようにしか見えないけどな…」


木守としては照れ隠しの褒め言葉である


「素直に可愛いって言えばいいのに…

さっき甘えて恥ずかしく

なっちゃったんでしょ?」


図星である…

どーでもいい時は服装可愛いとか

メイク似合ってて可愛いとか

ちゃんと言うタイプの木守だが

恥ずかしくなるときもあるようだ


「正直今日の姉ちゃん可愛くて、待ち合わせの時一瞬別人かと思ったわ…」


そう。コーヒー片手に迎えに行った木守だが

普段度付きのサングラスをしてるくらいには

視力が悪く、裸眼で外に出たら

真白のことを認識できなかったのだ


「ちゃんと手振ったのに…もしかしてお姉ちゃんのこと別人だったら恥ずかしいとかで声掛けられなかったの?」


これまた図星である


「サングラスしてなかったから…しょーがないじゃん」


どこか言い訳めいたことを言う木守


「そんなに可愛かった?今日のお姉ちゃん」


いじわるなようでからかうような

視線で話しかけてくる真白


「お姉ちゃんはいつも可愛いけど。今日はもっと可愛かったって言うかなんて言うか…」


そんな言葉に真白は

内心嬉しいようだが顔には出さない


「でもさっき木守くん。お姉ちゃんのこと大福って言ったでしょ」


そう言われてしまうと何も言えない木守


「大福って褒め言葉なんだよ?ほら、姉ちゃんと一緒にパチンコ行くと当たるじゃん」


そう。木守はパチンコもやるギャンブラーである

オタクでギャンブラーはもうツーアウト

そして喫煙者。スリーアウトである


「お姉ちゃんのパチンコはお姉ちゃんの好奇心からやってることですー!欲にまみれた木守くんとは違うから当たるんだからね」


真白もパチンコはするが付き合う程度だ

パチンコの腕前は木守のほうがさすがに上で

木守はもう10年くらいの腕前だが

真白は昨年からデビューしてる

台のエラーとかに気づけない為

行く時は木守といつも一緒である


「パチンコで勝った分は姉ちゃんにも使ってるからいいじゃん!タバコは辞められないけど…」


木守の言うことも正しく

初めて真白とデートした時は

ホテルとご飯など全て。占めて10万円程

奢っているのだ

ちなみに木守はパチンコだけで黒字3桁である

つまりプロのひきこもりであるが

稼ぐ時は稼ぐと言った具合だ


ひきこもりオタクの木守としっかり者のお姉ちゃんこと真白はなんでこうなったのか

それが明らかになるのはまだ先のことである

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