第13話

一人残されてから、どれ位時間が経っただろう?

腕時計を確認してみると、三時間ほど時間が経っていた。


流石に色々あったのと病み上がりの影響で眠気が襲ってくる。

かといって、ここで寝てしまうのは相手への印象が悪くなりそうだ。


そんな風に思っていたのだが、実際は睡魔に勝てずに眠り込んでしまった。



凄くグッスリと寝られた後のスッキリした目覚め、無意識に体を伸ばそうとして手を頭上に挙げようとしたのだが、硬い物に当たって手を挙げることはできなかった。

その瞬間、俺は自分の置かれていた状況を思い出し、飛び起きようとした。


ガンッ!

頭をしこたま何かに勢い良くぶつけて目の前に火花が散る。

その後、たっぷりと時間を掛けて頭の痛みに悶えると、自分の状況を把握しようと周囲を観察する余裕ができた。


何やら透明なカバーがされた寝台に横たわっているようだ。

パッ!と頭に浮かんだのは、SF作品などで見ることがある宇宙船の中のだった。

それが頭に浮かんだ直後に思ったのは『アトランティス人って、こういう装置で寝るのかな?』というしょうも無い疑問だった。


腕時計を確認すると、午後三時。

眠ってしまったタイミングを考えると半日は寝ていたことになる。


たぶん、あそこで眠りこけてた俺を運んでくれたのでは無いだろうか?

冗談抜きで、俺の印象は最悪なんじゃ?

とか色々と良く無い予想だけが頭を巡っていた。


それから三十分ほどすると、俺からは見えないが誰かが近付いて来る気がした。


「遅くなりました。今開けますので少し待ってくださいね」


それは、あの転移して来た部屋で会った彼の声だった。


俺が入っていたのは多目的寝台と呼ばれる物で、彼の仲間が寝ている俺をここに入れたらしい。

俺がここで眠らされていた理由は、俺が風邪のウィルスを持っていたからだった。

風邪のウィルスは、アトランティスではと呼ばれる種類のウィルスで、それに対する抗体を持っていないアトランティスの住民には非常に危険だと判断されたらしい。

そのため、それに接触した彼もウィルス除去の対象となってしまい、直ぐに俺の所に戻れなかったらしい。

その後も、施設内の除去作業や俺自身のウィルスの除去などがあったことで、隔離型の寝台に入れられることになったようだった。


更に、その時に俺の生体データの取得もされたようで、そこで俺に必要なワクチンの投与や怪我などの治療、アトランティスで生活するために必要な基礎知識の睡眠学習なども平行して行われたそうで、結果三日間ほど、ここで眠らせられていたようだ。

確かに言われてみると、俺にはこの装置の基礎的な知識があることが分かる。

言われるまでは知らない物と感じていたために、上手く認識できていなかったようだ。


その知識から、俺の今の立場を言い表すとって感じ。

手続きなどは、全て俺の生体データだけで終わりらしい。


要は、ここに来るための鍵を持ってることが一つ、その鍵の正当な所有者であることが一つ、生体データを提出することが一つ、の三つが揃えば良いってことだな。


今の俺は自動で最後の検査をされているところ。

この検査が合格になれば許可証が発行されて、ここを出られるのだ。


ただ、俺の基礎知識が少しおかしい気がするので、そのことを確認しなければならないと思ってる。


何がおかしいか?

俺の知識では、現在生存しているアトランティス人は十四人、そのうち三人が目覚めていて、残りは眠っている。


おかしいよな?十四人って種の存続ができないレベルになってるってことだぞ!

何か、とんでもない情報を知ってしまった気がする。


他にも、このアトランティス大陸って場所は、異空間に存在するらしい。

元は地球上にあったのだが、ある問題が発生して、この異空間に逃げ込んだみたい。


その異空間ってのも安全な場所では無かったようで、最初の二年で人口が半分に、次の五年で更に半分になったらしい。

その主な原因がと呼んでいる存在。

と言っているのは、本来どんな生物も生息できる環境では無い異空間にいることと、死後に肉体が消えてしまい残らないことから生物である証明ができないのだと言う。

また、アトランティス大陸を守っている結界(バリアの様な物)を透過して進入してくることからも、生物らしからぬであると考えられている。

ただ、行動などを見る限りは生物らしさがあるために、その存在を何処に置けば良いのか判断ができずにいるのが現状らしい。


そんな過去の出来事から色々と結界の性能も進歩し、現在はが侵入することはできなくなってはいる。

ただ、最初の十年でアトランティス人の男性の九割が死亡しており、そのために種の保存が難しくなってしまった。

結果、選ばれた者達のさせ、一部の者に管理を任せることで、今までこの場所を存続させてきたのだ。


そしてその残っている生存者もになってしまったようだ。


なかなか壮絶な歴史があるようだ。

だが、アトランティスってのは高度な文明があったと言われているんだが「それでもそんなことになったのか?」と言う疑問がある。



俺の睡眠学習での基礎知識には、その辺の情報は無いようで、その疑問の答えは出なかった。

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