25 風呂上がりの心音くんはエロい
「失礼いたしました……! 男性の方だとはつゆしらず……」
お風呂場から出て髪の毛を乾かしているお姉さんにボクは頭を下げた。
いつぞやにお姉さんが着ていた脇あたりから手が入る服をぶかぶかと着て。
「ボクが悪いんだよ。女性だと思われてることは知ってて訂正しなかったんだもん」
ドライヤーをとめたお姉さんは、ぼくの顔を覗き込もうとかがみ込む。
「だから、ごめんね? どこかで伝えておかないとなって思って」
「ぐっ……」
艷やかな唇から言葉が発せられて、男性のはずなのに甘い香りがする。
か細くも引き締まっている体、年上らしさもありながら、幼さも感じる顔。
「わかったか、ましろん。心音くんの魅力が」
横から聞こえたお姉さんのお姉さんの声。
ぼくはそれには応えずしも、お姉さんの目を見た。直視できずにそむけたけど。
「ぼく……おねえさんのこと、ずっと気になってて……」
「え、嬉しい」
「あ、え、と、学校で友達いなくて……優しく声かけてくれたの、嬉しくて」
「そうなの? ましろくん面白いのに。あと、顔が可愛い」
「みおとくんの言葉に同意する」
そんなことない。ぼくは、いい人間じゃないから。
「……ぼく、お姉さんのようないい声は出ないし、優しくもないんです」
ガキで、なにかあったらすぐに嫌な気持ちになって怒る。
「お姉さんの真反対みたいなヤツで……。だから、お姉さんみたいになれたら……友達ができるかなって思って」
「え? ましろくんはましろくんのままで良いでしょ」
「うん」
「ボクみたいになりたいって……ボクなんかより、ましろくんの方が魅力的だし、配信者向きな性格だと思うけど」
「ましろくんの持ち味は唯一無二。その子どもっぽさが良いのよ」
「でも、コメントでも……子どもっぽいとか、大人になれとか言われてて」
「良いんじゃない? それがましろくんの持ち味だと思うよ」
お姉さんに微笑まれて、顔が熱くなった。
男性だって分かってるのに、それでも、まだお姉さんはお姉さんなんだと心がそう言っている。
そうか、別に、性別とかじゃなくて。ぼくは、お姉さんの人間性が好きなんだ。
「それに、ボクをお手本にしたらもっと友達できないよ……ボク、ぼっちだし」
「ええええっ!? お姉さんが!?」
気まずそうに頬を掻くお姉さん。
なんで? お姉さんってそんな、えっ? 嘘でしょ……?
「だから、ましろくんはそのままで大丈夫! ボクも友達づくり頑張らないとだから、一緒に頑張ろ?」
「……」
なんで、この人に友達がいないんだろう。
こんな優しくて、かわいい人に……。
「自分のものにしたいと思っただろう、ましろん」
「……なにいってんですか」
「心音くんの風呂上がりなんて最高にエロい。血行が良くなって火照ってる体、風呂上がりで隙だらけな体にダル着を着るという、もう、襲ってくれと言ってるようなもの。そして、全肯定で包みこんでくれる母性と、自分は大した事ないっていう控えめな性格。こんな子を見逃すなんて世の男どもは見る目がない」
「ほんとうに何言ってるんですか……」
「そうですね……」
「そうですね……!?」
うん。やっぱり、そうだ。
「あの、あお……さん? ちょっと」
「お、なんだい?」
「あ、お姉さんは、ちょっと」
「ぼくぬき……?」
ミルクティ髪のあおさんという人にこそこそと相談を。
すると、親指を立てて、ニヤッと笑ってくれた。
「知り合いに話を通してみるよ。正直、わたしも考えてたんだソレ」
「本当ですか! ありがとうございます! 連絡先っていただいても」
「やった~。ましろんの連絡先ゲット~」
これで、お姉さんに恩を少しでも返せれる。
おろおろとしているお姉さんの方を振り向いて、ぼくは笑った。
「お姉さん! ワガママの件! もうちょっと待っててくださいね!」
「……気になる……」
「あとからのお楽しみだよ、ね~、ましろん?」
「はいっ!」
GW終わってからにはなっちゃうけど、それでも喜んでくれるはず!
そのタイミングで……アレのことに関しても話をして……。
ウズウズと口の端があがる。あぁ、今から楽しみだ……!
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