22. 伯爵 VS バッファローのまっき(颯介)ついに、ナディア登場
俺は、中世ヨーロッパの家に初めて泊まった。彼らの父親が使っていたというベッドを借りた。とんでもない冒険で疲れ切っていたので、ぐっすり眠れた。
しかし、次の日の朝、どんどん扉を叩く音で、目がさめた。
なんだ?ここはどこだ?
見慣れない天井と部屋に戸惑った。しかし、すぐに自分が中世ヨーロッパの貧しい村にタイムスリップしてしまったことを思い出した。
「誰ですか?何のご用でしょう?」ピーターが玄関の方で聞いている声がした。
俺も慌てて起きた。石畳の床に置いた靴を慌てて履く。服は気のみきのままで、すぐに玄関に急いだ。
「わしだよ。伯爵だ。」玄関の外で扉を叩いていた人が言った。
俺と3人の子供たちは顔を見合わせた。俺はさらにおじいさんになった伯爵を頭に思い浮かべたが、声が若々し過ぎて、かなり違和感があった。
ピーターが意を決して扉を開けると、そこには、若い青年がニッコリ笑って立っていた。服は伯爵と同じ立派な貴族の服を着ていた。
「君たち!わしだ。持ち帰ってくれた玉手箱で若返ったんだよ!」
その青年はそう言い、くるっと1回転して見せた。若くて非常にハンサムな青年がそこに立っていた。二十歳ぐらいだろうか。青年は貴族の服を着こなし、ふさふさの金髪で三人の子供たちに笑いかけていた。
「さあ、わしもゲームに参加しよう!サバンナに行こう!」青年は張り切ったようにそう子供たちに言った。
「え?伯爵は、若返ったのでしょうか。私たちは、髪の毛の先っぽが白髪になってしまって、昨晩そこだけ切ったんですよ。」ジョージアが何がなんだか分からなくなった様子で、つぶやくように言った。
「そうだ。わしは、若返った。玉手箱は、若者は何十年も年を取り、老人は何十年も若返る効力のある箱なんじゃないか?わしが証明したわい。」青年は見た目にふさわしくない話方で、そう言った。
えー!!!!
俺は要らん心配した。てっきり死んだかと思ってもうたー
「朝飯を食べて、さっさとサバンナに行こう!」青年は繰り返した。
「でも、僕たち当分、ゲームはやりたくないんです。」ピーターはそう言った。
俺だって、あの命がけの冒険に出かけるなんて、まっぴらごめんだ。命がいくつあっても足りはしない。
しかし、そうだな・・・元の世界に戻る方法があるなら、知りたい。
それとも、もう一度ゲームに参加して、開放の呪文を俺が言ったら、俺は戻れるのか?
「だめだ。わしは君たちをゲームに参加させた。君たちは玉手箱を持って帰ってくれたので、感謝している。しかし、わしの目的は若返って、ゲームに参加することだ。わしはゲームに参加したことが一度もないんじゃ!」青年は強い口調で言った。
「サバンナに行って、戻る方法がわかりません。何かを得ないと戻れないゲームなんですよ。また、命懸けの戦いに勝たないと戻ってこれません。」ピーターはそう言って説得しようとした。
「だめだ。一緒にゲームに行くんだ。あと1回でいい。どうせまーた食料が尽きるだろう?」そういうと、青年は口を一文字に結んで不機嫌そうになってしまった。
「にいちゃん、仕方ない。もう一度サバンナに行こう。僕たち足が速いから、今度もクリアできるかもしれないよ。」レオがピーターにささやいた。
「そうね、もう一度、ダッカーにも会いたいわね。サファイアにも。」ジョージアは懐かしそうにそう言った。
「わかった。伯爵。もう一度だけサバンナのゲームにチャレンジしよう。」ピーターはそう言って、青年にうなずいた。
おいおい、俺の意見は?
ま、いっかー・・・もう一度参加して、ニューヨークで俺が開放の呪文を試したいし。
というわけで、俺ももう一度行くことにした。
朝ご飯を、伯爵も入れて5人で伯爵の家のキッチンで食べた。超ご機嫌な伯爵は、俺たちに朝食を振る舞ってくれた。若い伯爵は料理がなかなか上手かった。なんと、昨晩、若くなった伯爵は、張り切って自分で小麦粉をこねて大量のパンをかまどで焼いたらしい。
朝日が上り、あたりはすっかり明るくなり、満腹になった俺と子供たちには村中が輝いて見えた。また再び無事に戻ってこれるのだろうかと思うと、切ない気持ちになり、何度も「ここでやめよう」と伯爵に言いかけた。
しかし、青年になった伯爵は、力強く、強引で、彼の意志を阻む行動をしたら何をするか分からない怖さがあった。ハンサムだが、俺の目からしても、底知れぬ狂気を感じてしまい、なんだか怖かったのだ。
伯爵の家の例の三番目の扉の前に全員で立った。伯爵も!3人の子供も、俺も、全員で目を見合わせて、扉を開けて一気に飛び込んだ。そこはまたサバンナのど真ん中だった。
「ヒャッホー!」若くなった伯爵は大声で叫び、辺りを走り回った。若くなって、すごい速さで元気に走り回っていた。
「待って。伯爵。すぐにバッファローの群れがくる!」
ピーターは叫んで教えようとしたが、「なんだって?」という声が遠くから聞こえるだけで、伯爵は喜びいさんで走り回り、どんどん三人の子供たちから遠ざかって言った。
ジョージアは三つ編みを翻して地面に突っ伏して、「まずいわ!もうすぐここにも来るわ!」と叫んだ。三人の子供たちは「戻れ!」と伯爵に言ったが、反応が全くなかった。
「いくわよ!この前の木までダッシュよ!」ジョージアは叫び、この前、登って危機一髪で危険をかわした木を目掛けて走り始めた。俺の力はすっかり元に戻っていたので、超大慌てで、チョコパンの袋に入っていた龍者の実をひとかじりし、爆走した。
最初にレオ、ピーター、ジョージア、そして俺の順で木に到着し、レオが登れず、ジョージアが枝に飛びつき、上からレオを引き上げた。俺も忍者の要領で木にするすると上り、ピーターを引き上げた。
その瞬間、バッファローの群れがやってきた。
「ぎゃあ!」一瞬だったが、先頭のバッファローの背中に、青年になった伯爵がしがみついているのが見えた。子供たちは驚いて、伯爵が乗ったバッファローが通り過ぎて遠くに行くのを目で追った。背筋も凍る光景が見えた。
伯爵は振り落とされ、次から次にバッファローがその後を走って行った。
ジョージアが泣き出し、レオも泣き出し、ピーターも涙を拭った。俺も思わず涙が出てしまった。伯爵は良い人ではなかったけれども、少なくとも簡単に人が死ぬのを見るのは辛かったのだ。
バッファロー大群が遠ざかると、3人の子供たちと俺は無言でひたすら王の文字のある池まで急いだ。あそこにはライオンも狼もいた。早くしないと、襲われてしまう。
プテラノドンを呼ぶと面倒な事はわかっていた。きっと、この先にもあいつはついてきてしまって、大騒ぎになるだろう。
ニューヨークにプテラノドンは、最終兵器だ。もう、いよいよダメだとなった時に呼ぶしかないけど、今はまだ大丈夫だった。
空を見る余裕もなかった。やがて夜がやってくる。池に着いたら、水を飲むより前に先に王手をかけなければならないのを3人の子供たちはよく知っていた。俺は龍者の実の効果でついていけた。
池につき、辺りの様子を伺いつつ、ジョージアが追手をかけたところで、またライオンと今度は狼3匹が姿を現した。必死にジョージアはレオの肩をつかみ、ピーターがレオの手を握り、俺がレオの手をしっかり握り、俺と3人の子供たちはニューヨークの街に投げ出された。
「見つけたわ!」3人の子どもたちを見て女の人が叫んだ。
いやー、カッケー女の人だな・・・
見惚れてしまう・・
スタイル抜群な女の人と、若者が、3人の子供たちと俺を見下ろして立ち尽くしていた。ナディアとジャック夫妻だった。その横には、その光景に呆気に取られた幽霊王子のダッカーとサファイアが立ち尽くしていた。
「ゲーム スタート」という巨大な文字が頭上に現れた。
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