14. 村に戻った後

 辺りは真っ暗だったが、ピーターの髪の毛が月明かりで燃えるような赤毛に見えて、ピーターの顔の周りがぼんヒャリ明るく見えていた。

「にいちゃん、もしかして、忍び込む前に戻ったのかな?」レオがおそるおそる言った。


 辺りには静寂が漂い、奇妙なぐらいに静まりかえっているように思えた。辺りは真っ暗だった。


 怖いぐらいに静かだわ!


「分からない。そうかもしれない。父さんの話では、じいちゃんが冒険の旅に出て戻ってきた時、時間がどのくらい経ったのかの話はなかったな。」ピーターは父さんが話してくれた話を思い出すように言った。


 伯爵の家に忍び込んでからどのくらいの時間が経ったかわからなかった。しかし、ジョージアの服は伯爵の家に忍び込んで、月明かりに照らされた庭を走っていた時に気の根っこにつまづいて破けた服のままだった。


 私ったら、こんな破けた服のままでずっといたんだわ!

 サファイアやダッカーは何も言わなかったけど、恥ずかしいわ。


 ジョージアは呪われたゲームに参加させられた王子ダッカーのことを思い出して、胸がちくりと痛んだ。


「おおーい。」すぐ向こうから松明の明かりが近づいてきた。


「おお、いたか。どうしたこんな夜更けに出歩いて。」

 やってきたのは、隣のケビンさんだった。自分の家にも子供が四人もいて大変なのに、3人の子供たちにパンを分けてくれた人だ。


「君たちが夜中に抜け出して行く音がして、心配して探しにきたんだ。明日は、隣町に私が作った道具を売りに行くから、何か買えるかもしれない。君たちにも分けてあげるから、こんな夜中に歩き回らずに、家に帰って寝よう。」ケビンさんはそう言って、三人の子供たちを励ました。


 ケビンさんに従って、黙って三人は家に向かって帰り始めた。


 今のケビンさんの話で分かったわ!

 私たちが伯爵の家に夜中に忍び込もうとしたあの時間に戻ったんだわ!


 3人の子供たちの家に着くと、ピーターはケビンさんも家の中に招いた。


「ケビンさん、僕らのじいちゃんの話を聞いたことがある?」ピーターは不思議そうに三人の子供たちの様子を見ているケビンさんに聞いた。

「え?あるよ。」ケビンさんは何かをはっと悟ったようにして、粗末なテーブルの机の上に置かれた3つの大きな袋を見た。


「僕たち、じいちゃんと同じように、食料を獲得して来たんですよ。」

「ケビンさんには、本当に助けてもらったので、この袋を一つ差し上げます。」ピーターはそう言って、レオが持ってきた袋をケビンさんに持たせた。


「そんな!」ケビンさんは驚愕したように言って、袋の中身を見て、おいおい泣き始めた。


ジョージアは、大泣きしているケビンさんの背中を優しく叩いて慰めた。


「さあ、ケビンさんの所の子供たちが起きて心配すると行けないから、早くこの袋を持って帰ってください。」ピーターはそう言い、優しくケビンさんを玄関の外まで送っていった。

「ありがとう。本当にありがとう。」ケビンさんはそう涙ぐんで言って、帰っていった。


 ピーターは玄関の扉を閉めると、三人の子供たちは持ってきた食料のうち、すぐに食べれるパンに何かジャムのようなものを塗って食べた。


 よく分からない袋に入っていたり、別世界から来たような食べ物に見えたが、袋を開けると自分たちがいつも食べているものでできているものが分かり、三人の子供たちは幸せな気持ちでいっぱいになった。朝になったら、村中に分けてあげるのだ。そう思うと誇らしかった。


 3人の子供たちはお腹もふくれ、久しぶりに幸せな気持ちで自分だちのベッドで眠った。


 翌朝、起きると肉を焼いてパンを食べると、ジョージアの持ってきた大きな袋を担いで、村中を一軒一軒回って、村人たちに食料を分けて回った。


 村の子供たちを含めて、歓声をあげて、家々で喜ばれた。3人の子供たちの祖父は、知る人ぞ知る伝説の人だった。同じように3人の子供たちが食料を求めて旅をしてきた話は、あっという間に村中に広がり、大変な喜びようで歓迎された。


 3人の子供たちが家に帰ると、家の前に老人の伯爵が仁王立ちしていた。ピーター、ジョージア、レオは驚いて思わず立ち止まってしまったが、伯爵は3人の子供たちのところまで歩いてやってきた。


「うまくやったようだな、君たちの祖父のように。」伯爵はそう言うと、ニヤッと笑った。

「次の旅がある。」伯爵はそう言った。


「なんですか?それは。」ジョージアが驚いて言った。ピーターとレオも警戒したように後ろずさった。


「|次の旅さ。」

「村中に配ったんだから、1週間もすれば食料がまた尽きるだろう。」

「そうだな、出発は1週間後がいいだろう。」


伯爵は3人の子供たちにそう言って、高笑いして、通りを戻って行った。

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