11. カメラあぷり

「さあ、着きましたぞ。」

 ロボットのエメラルがどこか得意気に言った。


 3人の子供たちは、宇宙船が着陸した星の外を窓から見た。

「一体、ここはどこだ?」ピーターがかすれた声でロボットに聞いた。赤毛が燃えるように赤くなっている。怖いのだ。

「数世紀先の地球ですよ。」ロボットのエメラルはすまして答えた。


 窓の外には無数の首長の恐竜が見えた。辺り一面に緑に生い茂るジャングルが広がっていた。

「あの怪物は何?」末っ子のレオは怯えたように聞いた。

「恐竜という生き物ですよ。」ロボットのエメラルが何の問題もないように言い放った。


 何ですって?

 怪物が沢山いる中でミッションとやらをするの?


 ジョージアは、滑稽な様子で立派なドレスを着てすまし込んでいるエメラルが憎たらしくなった。


「外に出て、皆さんで超忍者になる実をカメラアプリで撮って認識させてください。」ロボットのエメラルは機械的な声で言った。


 カメラあぷり?

 その言葉の意味、ぜんぜん分からない!!


 若い男の人も頭に同じようなものを付けさせられていたが、手を窓に押し当てて、穴が開くほどじっと、無言で外を眺めているだけだった。

「参ったぜ」ピーターの耳には、男性がそう言うのが聞こえた。


「さあ!行ってください!」エメラルがそう大声で言うと、宇宙船の扉が開き、3人の子供と若い男の人は外に投げ出された。


「えー、嘘だろ、嘘だろ。」若い男の人がおろおろと惨めなうめき声をあげた。

「一体何をすればいいのかさっぱり分からない!」ジョージアは声を潜めて言った。


 だって、そこら中にいる首の長い気色悪い怪物に見つけられてしまったら、殺されてしまいそうだから。


「ええい!」突然、若い男性がそのあたりにある植物に頭を向けて、頭に付けられた黒い物体の横を押しまくった。

パシャパシャと連打されるような音がした。


「違うかー!」男性は言いながら同じ動作を続けている。


「君たちもやるんだ!ほら、ここのボタンを押すんだよ。」いつの間にか若い男性が、子供たち3人に指示を出し始めた。テキパキして、身振りも交えて、有無を言わさない態度でリーダーのように指示を出し始めた。


「とにかく植物に向けて、木の実っぽいのを見つけたら、頭のこの部分をその方向に向けて、このボタンを押すんだ。うまく行ったら、どういうことか分かるよ。」


「あなたは一体誰ですか?」ピーターはおそるおそるといった風で若い男性に聞いた。

「俺は颯介。何でもいいから、早くやりな!さっさと終わらせてここから脱出するんだよ!」男性はそう言うと、ジョージアやレオにも手取り足取りやり方を教え始めた。


 よく分からないけど!

 やるしかないのね!


 ジョージアもレオも、若い男性の指示通りに、パシャパシャ音をたてて色んな木の実に向かい始めた。


「ぎゃあ!」その時、すごい声がして、振り返った3人の子供たちの目には、颯介と名乗った男性が、首の長い怪物の背中にぶら下がっているのが見えた。


「颯介さん!」ピーターとジョージアが叫んだ。


「おりゃあ!」聞いたこともないような声を出して、颯介と名乗った若い男性は首の長い怪物の上によじ登り、またがった。その途端、首の長い怪物が空を飛んだ。


「飛べるんかーい!」男性の声が響きわたり、男性を乗せた怪物は空を飛んで行った。


 ピーターとジョージアとレオは震え上がった。3人とも目を丸くして怯えた様子で顔を見合わせた。


「おおーい!みんなー!」その時、空から声がして、颯介と名乗った男性が怪物にまたがった状態で、手を降ってきた。


「これ、最高だよ!」ニコニコ笑っている。


 ええ!!!!


「君らも乗ってみな!乗って探したほうが早いかも!」男性がそう言うので、まずレオが一番近くにいた首の長い怪物に近づき、勢いつけて助走して背中に飛び乗った。ガストロノムスバックストッカー家の俊足は役に立った。身軽にレオは怪物の背に飛び乗り、驚いた怪物は空高く上昇した。


「レオ!!」ピーターとジョージアは突然のことに叫んだ。


「ヒャッホー!」レオが笑いながら楽しそうに叫ぶ声が響きわたった。

「兄ちゃん!姉ちゃん、最高だよ!」


 ピーターとジョージアも後を追うべく、身近にいた首の長い恐竜めがけてダッシュして、見事に背中に飛び乗り、空中に高く舞い上がった。

「みんな!頭を下に向けてみて!少し反応したところで、下に降りてみるんだ!」颯介と名乗った男性がそう笑いながら説明した。


「いいかい!」そう言って颯介と名乗った若い男性は頭を下に向けて周りをゆっくり旋回した。

「ぴきん!ほら、なんか今音がした!」突然そう言うと、「あっち!」と指さすと、空飛ぶ怪物はそちらの方向にゆっくりと降下した。ある木の途中で、頭の中央につけた黒い物体がピカッと光り、そこから声がした。


「龍者の実を認識しました。」


「やった!ね、これだよ!」

「みんな、やってみな!」若い男性が嬉しそうに言った。


「分かったわ!」

 ジョージアがそう叫び、真似を始めた。ピーターもレオもすぐにゆっくりと周りを旋回し始めた。

 そして、首の長い怪物に指示を出して、あちこちの木に降下してはだめだったと首を振りながらまた急上昇して旋回を始め、反応があると降下して、木の実を調べると言ったことを繰り返し始めた。


 この時は4人は誰も気づいていなかった。4匹の怪物たちが空中を旋回しては木に降下して、また飛び上がると言った行動を繰り返している状況を、物陰からじっと見つめているモノがいることに。

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