2. 伯爵の家
3人の子供たちは、そっと家の外にでて、ピーターが玄関の鍵を静かに固く閉めた。自分たちが家を留守にしている間に、真夜中に誰かが家に入ってくるなんてゾッとする話だ。そうならないよう、自分たちが夜道を歩いている間に誰にも家に侵入できようになった事を確かめた。
怖いけど、やるしかないわ。
「行くぞ。」ピーターが妹と弟にささやき、妹と弟は真剣な顔でピータにうなずき返した。真っ暗で、夜道は本当に怖かった。三人とも耳をすませ、辺りに目をこらし、野良犬や怪しい人影がいないことを確かめた。そして、急ぎ足で静かに通りの端っこを歩き始めた。足音をなるべく立てずに、かなりの急ぎ足で進んだ。目的地は、伯爵の家のある、大通りの突き当たりだ。
伯爵の家は、村一番の大きな大きな屋敷だった。
夜ひっそりと確かめるのは、父さんが話てくれた話の中で、じいちゃんが伯爵の家に忍び込んだ時に使った木の下の「穴」がまだあるのか確かめることだった。
子供たち三人は、伯爵の家の大きな門の前まで来ると、門のすぐそばの木からゆっくり数え始めた。
門に向かって右に進み、高い城壁の外を囲んでいる二十一本目の木の下に、その穴はあると父さんは言っていた。大きな大きな木なので、二十一本目まで歩くのは思ったより時間がかかった。
「ここだ。」ピーターとジョージアが同時にささやいた。
その木の下には穴なんてなかった。確かに二十一本目の木なのに、木の根本の辺りには穴なんて全くなかった。ピーターとジョージアは明らかに落ち込んで、木の下に二人とも座り込んでしまった。
あの話は嘘だったの?
父さんが話してくれた話は嘘なの?
レオはそんな二人をそっちのけで、二十一本目の周りの木の下をはいつくばるように、見て回っていた。レオは数を数えていなかったのだ。父さんは木の下が三股に別れているようになっていて、穴はやぶに覆われていると言ってた。だから、レオは三股に分かれている木を探していた。
「これだ!」レオは、ジョージアとピーターが座り込んだ所より二本先の木の下を指差して、言った。
「え?」ジョージアとピーターはレオが指さした方を見て、立ち上がってやってきた。
「本当だわ。この木は三股ね。二十一本目の木は三股じゃなかったのに。」ジョージアは言った。
「分かった。じいちゃんが忍び込んだ時より、二本多く植えられたんだよ。」ピーターははっとしてそう言った。
「そうか!」ジョージは言った。
「ね、この薮をかき分けたら、穴があるよ。」レオは三股の根本を覆っている薮をかき分けて見た。
そうすると、伯爵の家をぐるっと囲んでいる高い城壁の下に、子供がやっと通れるくらいの「穴」が空いているのが見えた。
「やったわ!」ジョージアは小躍りして喜んだ。
ついにやったわ!
本当なのよ、あのじいちゃんの冒険は!
「入ってみよう!」レオはそう言って、あっという間に「穴」に身を滑らせて、ジョージアとピーターが止める間もなく、レオは城壁の中に滑り込んでしまった。
「レオ!戻ってこい!」小声でピーターは驚いてレオを呼び戻そうとしたが、辺りはしんと静まり帰っていて、レオの声はしなかった。ジョージアも、ピーターも恐怖で心臓が潰れそうだった。
嘘でしょう!なんで一人でさっさと行ってしまうの?
レオ!戻ってきて!!
「レオが戻ってこないわ!私も行く。助けなきゃ。」ジョージアは泣きそうな声でそう言って、「穴」に身を滑らせた。
「ジョージア!」ピータも、妹と弟が心配で、自分も続いて「穴」に身を滑らせた。
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