嘘と思い出はエレベーターとともに

西尾

プロローグ

 ガラスペンの先端に爽やかなブルーが吸い込まれた。

 この瞬間は今でも冒険のはじまりのような、そう、例えば本の1ページ目をめくるような高揚感がある。ノートを左手で押さえながら、私は文字を書き始めた。

 

 昨日の出来事を書き留めるために。

 あの人の嘘から始まった小さな物語を。


 ガラスペンの「カリカリ」という小気味良い音にのせられて、ノートがブルーで彩られていく。


 昨日出来事はそう、他愛のない推理から始まったのだった。

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