もう愛は求めませんから!
暁 莉都
第1話 何よりも求めた愛情
昔から、欲しい物はたくさんあった。ぬいぐるみに色鉛筆、好きなアニメのおもちゃなど。それは尽きることはなかった。そしてその全部を手に入れることが出来た。
でも、ただ一つどんなに望んでも、願い続けても手に入れられないのが、親からの愛情だった。
だから私は小さい頃、誰よりも優秀であろうとした。勉強に運動、芸術分野、全部を頑張った。父に
見てもらうため、褒めてもらうために。だけど、それも叶わなかった。結果、努力をしなくなった。全部、親の権力でなんとかするようになった。お金の力で、なんとかするようになった。大学に裏口入学したのは、その最たる例だ。でも、父は何も言わない。今、21歳だが、もう約8年まともに話もしていない。あの人は、私なんかに、関心は持ち合わせていないのだ。
「〜でさー。愛、聞いてるー?」
ぼーっとして、話しを聞き流していたら、親友 松坂絵美が顔を覗き込んできた。すると、私は慌てて
『聞いてる聞いてる』
と返事をした。すると、絵美が頬を膨らませ
「聞いてないでしょー」とプンプン怒る。それを、かわいいなぁと思いながら、私は素直に聞いてないことを白状するように、
『ごめん、ごめん。で、なんの話?』
と聞くと、怒りながらも、
「今日の夜、家に泊まりに来て!新しく買ったシャネルのバッグを見せようと思って。あと、愛の家の財閥が、新しく立ち上げた服飾ブランドのミューズあるじゃん。それね、今結構流行ってて〜。私も、そこのワンピース買ったんだ〜。だから、私にあうか、見てほしくて!」
と言った。私は、他に予定もないし、それを了承し、会計をして、カフェを出た。店の前で、絵美と別れ、帰路につく。夏の昼間は思った以上に暑い。すぐ近くの駅に行くのでさえ、歩くことが辛く、タクシーを呼んだ。
愛が去った後、絵美はいつも浮かべている無邪気で、純粋な笑顔を引っ込め、妖艶に笑い、言った。
「フフッ、騙されてくれてありがとう。私の可哀そうで、かわいい愛。やっと、このときが来る。」と。
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