第2話 一回目での死に様
LINEで送られてきた住所を頼りに、閑静な住宅街へとやってきた。私は、絵美の実家には行ったことがあっても、一人暮らしをしているアパートには、来たことがなかった。
絵美が暮らしているアパートは、白を基調とした爽やかな外観のアパートだった。
12号室の前へ行き、チャイムを押すと、
「は〜い。どうぞ〜」
と可愛らしい声が奥の方から聞こえた。私は、
『おじゃましまーす。』
と言い、ドアを開けると、目の前には見知らぬ男が立っていた。思わず1歩後ずさり、恐る恐る
『誰ですか?』
と尋ねると、男は鋭い眼光で、こちらを睨み、
「アハハハ、ハハッ、ハハ」
と壊れたように笑った。私は、その雰囲気に押され
また、1歩後ずさった。すると、男も1歩近づく。
膠着状態が何秒か続き、男はおもむろに口を開いた。
「お前は、俺のことなんか覚えているはずがないか。俺は、忘れたくても、忘れられないのに…
…白鳥 貴美子…」
最後に男が呟いた名前を聞き、私は大きく
目を見開く。私の反応を見て、笑ったかと思えば、次の瞬間には叫び、言った。
「そうだよ。お前が、ただなんとなく気に入らないという理由だけで、使用人をクビにさせられた女だ。あの後、細川家をクビにさせられたという噂が広まり、雇ってくれる所はなくなった」
その言葉を聞き、私は
『まさか、貴方は…』
とつぶやく。それを聞き、男は、
「ああ、そうだよ。俺は、白鳥 貴美子の一人息子だ」
と言った。男が、一歩ずつ近づいてくる。その手には、鈍色に光るナイフが握られている。私の
『まっ、待って!!』
の静止の言葉は届くことなく、ナイフは振り下ろされ、胸に刺さった。おびただしい量の血が床や壁にも飛び散る。私は玄関に倒れ、意識が朦朧とする中いつもと同様に可愛らしい声が響いた。
「あまり、部屋に血をつかせないでって言ったじゃん!」
私は、その声に目を見張り、
『……ぇ……み……』
と言う。すると、絵美は私の顔を覗き、無邪気な笑顔で、「自業自得だね。あんたに恨みがある人は、いーっぱいいるの。私もその一人。傲慢で、愚かだからこうなるの。本当に可愛くて、可哀想な愛。愛情を貰えなくて、でも求め続けたからこうなった」
その後も何か喋っていたが、朦朧とする意識のなか、絵美のあざ笑うような声が頭の中に響いていた。
視界がどんどんぼやけ、瞳からは涙がにじむ。最後の気力を振り絞り、
『……ご……め…ん……』
と、その言葉を告げ、私の視界は真っ暗に染まった。
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