第29話 先生は俺が守る
次の日、学校に行くといつもの陰湿な嫌がらせに遭う。
「藍原、こんなのもわからないのか、小学生からやり直せ」
古文の柳田先生は執拗に俺をいじめる。
「次の問題、藍原答えろ」
「次の問題、藍原答えろ」
「次の問題、藍原答えろ」
何回答えさせるのだろうか………
そろそろ俺もイラっとする。
「次の問題、藍原答えろ」
「古文の柳田は陰湿でしつこいが答えです」
クラスはどっと笑う。
柳田は唇をかみしめてこちらをにらむ。
そして手に持ったチョークを投げつけてきた。
俺には当たらなかった。
「さっきの答えは『古文の柳田はノーコン』が答えでしたか?」
クラスが再度どっと笑う。
柳田は俺の元へ怒りながら歩いてくる。
「おい、藍原、お前のその腫れたほおはなんだ。
誰かと喧嘩したのか?
傷害事件を起こしたら退学だからな」
吐き捨てるように言う。
「先生もくだらないことやって解雇されないでくださいよ」
一触触発だ。
「柳田先生、授業進めてください」
くるみが割って入る。
柳田も冷静になり授業を再開する。
このことは瞬く間に学校中に広がった。
柳田先生と藍原が大揉めしていると。
周りがどう言おうが俺は気にしない。
授業も終わり、掃除当番でゴミの処分をしようと
校舎の裏手に回る。
そこには杏子先生と柳田先生がいた。
この前、杏子先生が俺のために柳田先生に掛け合ってくれたことを思い出す。
俺のことかもしれないと思い、
見えない位置から近づく。
杏子先生の声が聞こえてくる。
「ほんとうにもうやめてください。
お願いします」
杏子先生が頭を下げる。
それも90度近く深々と下げている。
「わたしはなにもやっていないが?」
柳田先生はなにかシラを切っている。
「わたしはどうなってもいいので
藍原くんには手を出さないでください。
本当にお願いします」
さいごは涙声になっていた。
「なんだ、その声は。今度は生徒にでも恋をしたのか?」
柳田先生は杏子先生のお辞儀をした髪の毛を掴み持ち上げる。
そして顔を覗き込みながら吐き捨てた。
「この変態女が!」
気付いたら俺は飛び出していた。
杏子先生の髪の毛を鷲掴みにしていたその手を払いのけ、
思いっきり柳田のほおを殴り飛ばす。
「藍原くん!」
杏子先生は手で口を押さえて固まっている。
「杏子先生に手を出すな!」
柳田は尻もちをついてほおを手で押さえている。
「おまえ、自分のやったことがわかっているのか。
退学だな。ははっ、はははっ!退学だ!藍原」
柳田は立ち上がり俺の横を通り過ぎる。
「バカな男にバカな女だ」
柳田はすれ違いざまに吐き捨てた。
「藍原くん、ごめんね、わたしのせいで………」
「杏子先生こそ大丈夫?あんなクズやろうの言うことなんて
気にしなくていいから」
「でも、藍原くんが退学になっちゃう」
「いいよ。先生。だって先生が俺を守ろうと
してくれたんでしょ。俺にも守らせてよ、先生を」
「藍原くん………、先生がなんとかする!」
先生の目つきが変わった。
………………………………
ふたを開けると俺は停学3日間を言い渡された。
俺は退学を覚悟していた。柳田の陰険さを考えると
絶対に退学をさせようとしたはずだ。
杏子先生がなにかをしてくれたのはわかるが
何をしておれの処分がこんなにも軽くなったのか
わからなかった。
次の日から3日間自宅謹慎だった。
もちろん、杏子先生のストーカーの件がまだあるので
3人とも泊まりに来ていた。
未知さんもくるみにも停学になった経緯を話した。
やはり気になるのはなぜ処分が軽かったのかだ。
もちろん先生に理由を聞いた。
未知さんとくるみはその理由に納得していたが俺は納得できなかった。
理由はこうだ。
あの日俺以外にあの場面を見ていた女子生徒がいて、
杏子先生が柳田先生に暴行を受けていたのを見ていたと証言したとのことだ。
その暴行から杏子先生を助けようと俺が柳田先生を殴ったというところまで証言があったらしい。
おれは覚えている、間違いなくあの場に他の人間はいなかったと。ましてや、その女子生徒をどうやって探したと言うのだろうか。
それでも杏子先生が頑張ってくれたことには間違いない。
おれは杏子先生にお礼を伝えた。
その時の杏子先生の返事が脳裏に焼き付く
『かっこよかったよ、藍原くん......』
…………………
あとがき
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