第396話 食べる宝石ーガジェット

仕事が詰まってるのにさらに追加が来て、正直ちょっとグロッキーなこの頃です。

 先週は1万4千字も書いたのですが、今週はちょっと止まり気味……。


 さて、暗い話をしていても仕方がないので、『塩の魔女』のネタの残りを。


 舞台のモデルとしているバルト海は海底に琥珀の鉱脈があるので、海辺によく打ち寄せられているそうなのです。

 琥珀と言えば化学系としてはコハク酸という物質名が思い浮かびます。琥珀から発見されたのでこの名前になっており、薬にも使えるんだとか。さらには特にアサリやシジミによく含まれるうま味成分でもあります。

 ……となると、琥珀っておいしいの?という疑問が浮かぶわけで。


 調べると「琥珀糖」という寒天で作る宝石の形をしたお菓子が引っかかって調査が進まず。琥珀糖は琥珀糖で綺麗ではあるんですけども。


 ただ、琥珀自体は古くから知られていて、軽く調べるだけでも燃えるといい匂いがするとか漢方薬になるとかいろいろ使われているという情報が得られます。でも、琥珀を食べておいしいという話はすぐには引っかからない。

 ということは、そのまま粉にしてかけるとおいしいなんてレベルでは使えないのだろうなと推測。そもそものコハク酸の発見自体、砕いたものを乾留、つまりあるていど熱分解させた結果ですし。


 でもまあ、フィクションだしねと開き直った結果、トバル海の塩は海底の琥珀鉱脈から成分が抽出された海底近くの水を使うことで、良い香りと旨味が持ち味の特殊な塩になった、ということにしています。

 メタ的に言えば、コスト面で既存製塩産業に勝つのはリアリティがないように思えたので、付加価値をつける必要があったからなんですが。


 もう少しリアル側に寄せるとして、そのままでは美味しくないとしても、何らかの処理で一部分解させてやれば旨味が出るわけです。そういう処理が言い伝えられている、というのもありかもしれません。

 高分子体を分解させるとなると、熱とか触媒、ある種の酵素など……

 宝石を大根で煮てみるとかひどくシュールな絵面が浮かびました。いやまあ、大根に含まれる酵素はデンプン分解するアミラーゼなんで今回の目的とは違うのですけれど。

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