第73話 宮廷道化師ーキャラ
発言者の属性が発言の正誤に影響するかと言われると、論理的には「しない」のです。
例えば連続殺人鬼が常温核融合の実用化に関する重要な論文を書いた時、「そんな奴のいうことなんか信用できるか!」と論文をはじめから読まないという事は無いし、逆に核物理学の大家である教授が書いたから絶対に正しいと検証もせずに受け入れる事もない訳ですね。
しかし、一般にはしばしば発言者の属性、というか権威が重視されてしまいます。
「ノーベル賞学者が言ってるから、生物は進化なんかしないんだよ!」
みたいな発言ですね。うん、その人天文学者であって生物学者じゃ無いんだけどみたいなツッコミは無視されます。
逆に、あえて発言者の属性を悪く設定する事で発言の正当性を怪しくしていた例もあります。
中世ヨーロッパの王侯貴族らはしばしば道化師を召し抱えていました。単純に芸をさせて楽しむという面もあるのですが、道化師らをある種の助言者として、あるいは悪い知らせを王に伝える役目として使っていた面もあります。
もちろんそれは雇い主の逆鱗にしばしば触れるのですが、それでも『道化師たちは愚者であり、たわごとを言っているだけなので、罰するに値しない』とある程度の免責をする事で道化師たちの言動の自由を守っていたわけですね。
とはいえ、あのシェイクスピアの『リア王』でも言いすぎた道化師が王に脅されたりもしてるので、全てが完全に許された訳ではないのですが。
道化師らは公式には愚者とされていますが、雇い主の言動を上手く諌めるには相当頭が回る必要があり、実際には賢い道化師も珍しくなかったようです。
そういう意味では、創作においてある種の天才を宮廷道化師として登場させるのもありなのかなと。
いわゆるギフテッドの中には、自分の興味がある分野においては無類の能力を発揮するが、通常の人間関係の維持に困難を抱えるタイプもいます。ましてや複雑怪奇な宮廷儀礼となると対応できるとしてもしたくない、という人も多い事でしょう。
そうした無礼に免責を与えつつ、手元においてその才能を使うための手法として、宮廷道化師という言い訳を使う訳ですね。
もっとも、使われる側も同意していないといけないので、設定に工夫は必要ですが。
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