第72話 通貨レートを決めるべき?ー創作論
物理単位のお話をした流れで、通貨単位のお話。
異世界ファンタジーでも通貨は普通に使われていることが多いですし、そこで使われる単位は普通日本円や米ドルなどの現実の通貨ではない訳です。
じゃあ、その通貨単位、何円分なの? と聞きたくなるのは読者の常。
でも、突き詰めて考えていくと結構難しいのかなと思っています。貨幣だけでなく、その文化圏の経済全体が関わってくる話になるので。
現実世界で例をあげると、日本の江戸時代に使われた一両と、現在の日本円。一両が何円に相当するか、というのは一口では言えません。
江戸時代はかなり史料が多く、一両で何が買えたかはしっかり分かるのですが、それでもです。何故なら、買う物同士の相対的な価値が変わってしまっているから。
例えば江戸時代中期のデータから計算すると、米ベースだと一両=4万円なのに、賃金ベースだと一両=40万円、蕎麦ベースだと一両=12万円になるそうで。
つまり、現代日本と比べると、江戸日本は人間の労働に比べて米の価値がすごく高かった事になります。
現代でも国や地域を隔てれば物の価値はかなり変わってきます。
例えば、タイの高卒新入社員の給料は1万バーツぐらい。彼らが食べるお昼ご飯が30〜40バーツぐらいでお腹いっぱいになります。
さて1バーツは何円でしょう、とここまでの情報だけで考えると、1バーツ=15円前後ぐらいと想像する人が多いのではないでしょうか。これなら、新卒給与が15万円でお昼が500円から600円ぐらいになるので。
しかし、調べればすぐに出てくる事ですが今のレートは1バーツ=4円ぐらいです。
給与が激安になりますが、食事の値段はそれに見合う程度に安いことと、昇給率が良いので特に問題にはならないんですね。
ちなみに、生活必需品は安いですが贅沢品になるほど日本との価格差が詰まってくるので、レートが特におかしい訳でもないのです。むしろ近年は日本円が押されて来てて、駐在者たちの生活が段々苦しく……
愚痴はさておき、創作するときに江戸時代やタイを参考に貨幣価値を設定すると、現代日本の感覚で考えた方から
「さっきのシーンの食事の価格から考えると、賃金が安すぎる! ちゃんとリアリティのある設定にしろ!」
とお叱りを頂く事もある、という事で。
現実世界の中でもこうなのだから、異世界ファンタジーならなおさらです。
もちろん、手抜きな設定しかしていないから作中で矛盾している可能性は十分あります。
しかし、しっかり考えた結果として、単純に1通貨=⚪︎⚪︎円が当てはまらない設定になる事もあると私は思うのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます