異世界人に憑依?しちゃいました

神代雪

プロローグ


 わたし、結川麻衣ゆいかわまいはとても困っていた。普段と変わりなく過ごし、ベッドに入って眠ったはず、なのに……。目が覚めたら知らない部屋で寝ていたのだ。

 ビックリしすぎて暫くフリーズしたよ……。


 ここは私の部屋でないのは確かだけど、不思議なことに私の部屋と雰囲気は似ている気がする。その為か、あまり他人の部屋、って感覚はない。

 よくよく観察してみると、家具の配置がわたしの部屋とほぼ同じだ。私の部屋にはない書棚があるが、部屋補広さが書棚が一つ増えても問題はない程度にはわたしの部屋よりも広いようだ。

 あと、わたしが好んでいるイエロー系の小物が多い所まで同じ。この部屋の主はわたしと同じ様な好みなのかな?何となく仲良くなれそうな気がする。


 きょろきょろと部屋を見回していると、人一人が映れる程度の大きさの姿見を発見した。わたしの部屋にも同じように姿見が置いてあるが、少しだけデザインが違うみたい。大きさは多分同じくらいみたいだけど。


 ベッドから降り、姿見の前に立ってみる。わたしと同じ茶髪の女の子が映るが、それは間違いなく私ではない別人だ。わたしはぱっちり二重だが、この子は一重。それに、わたしは眼鏡をかけなきゃ不便なレベルで視力が悪い。だから、少なくとも眼鏡がない状態でこんな風に視界がいいわけがない。けれど、眼鏡をかけなくてもバッチリ姿見に移る自分の姿を確認できる。

 これが目がいい人の視界なんだなぁ。この体の持ち主がちょっと羨ましい……。


 あ、髪の長さも同じくらいだ。これなら、普段と同じ様に編み込みができるかも。よかった。面倒だけど、色んなかわいい髪形にするのは楽しくて好きなんだよね。髪の毛が短いとわたしのちょっとした楽しみが一つ減っちゃうところだったよ。


 姿見の隣には勉強机があり、学校指定と思わしきシンプルな紺色のカバンと、本と一冊のノートが置いてあった。

 わたしと違って読書家なのかな……。わたしは文字を読んでると眠たくなっちゃうタイプだから、小説は苦手なんだよね。漫画なら問題ないけど、それよりも友達と遊びに出かける方が好きだから、結局漫画もそこまで読まないかな?友達に勧められて読むことが多いや。


 というわけで本はいったん置いておいて。机の上に放置されているノートの表紙をめくってみる。どうやら日記らしい。よくある大学ノートに日付とその日あったことが書かれていた。

 どのページを見ても、学校で上手くなじめなくて苦労していることや、自己嫌悪に陥っている、といったようなネガティブな内容ばかり。見ているこっちまで気持ちが沈んじゃうよ……。


 日記を閉じて、今度はカバンの中を漁ってみる。中には筆箱やポーチ、教科書やノート類が綺麗に整頓されて入れられていた。わたしと違って几帳面な性格なのかな?わたしだと面倒で適当にひとまとめにしちゃうからなぁ。そのせいで何がどこにあるのかすぐに分かんなくなっちゃうんだよね。わたしも見習わなきゃな。


 いくつかある冊子の中から一冊、適当にノートを手に取る。


青沢美紀あおさわみき……。この体の持ち主の名前、なのかな。」


 表紙には名前の他に、1-A 1番とクラスと出席番号が書かれている。青沢だから1番なんだ。さっきの日記にも、出席番号が1番ってだけで何かと頼み事されたりして苦労してたって書いてあったな。

 わたし、出席番号後ろの方でよかった……。初めて結川って苗字に感謝したよ。"ゆ"だから、絶対に出席番号は後半になるんだよね。


 今度はノートを開いてペラペラと中を見てみる。すると、中には不思議な魔方陣のようなものがいくつも描かれていた。


「え、なにこれ。……炎魔術の応用、熱を加えるための簡易魔方陣……って、魔術?!魔方陣?!」


 なにこれ、妄想にしてはすっごく作り込まれてる。それに、よくわからないけど仕組みも書いてあるみたい。まぁわたしにはさっぱりなんだけどね。

 他のページを見ても、大体同じように魔方陣らしきものが描かれていて、それに合わせて解説のようなものや、注意点らしきものが書かれてる。


 全然気が付かなかったけど、ここってもしかしてファンタジー世界?そしてわたし、その世界の誰かに憑依しちゃったわけ?


 なにこの漫画的展開!!


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