エイプリルフールの1日

灰雪あられ

第1話 朝から刺客

4日1日時刻は6時30分。


圭人は不安気に写真を見つめて呟いた。


「今年は平穏に過ごしたい…」


ピンポーン


ビクッと肩が跳ねる。

急いでインターホンのモニターで、相手の様子を確認した。


「は?」


そこにはユニフォームを着て手を振る晶の姿が映し出されていた。


「いや、なにし、は?」


一瞬の合間に、圭人の頭の中では長い議論が行われた。


エイプリルフール、だよな?

そうだろ。高校のユニフォーム着てくるとかそうとしか考えられないだろ…

コスプレじゃんか。どこがエイプリルフールなの…?

高校生のフリをするってことじゃないか?

そもそもなんでこんな朝早いんだ

しかも今日なんの約束もしてないだろ

やっぱりあいつ狂ってる

イカれてるよな

どうする?

開けるか?

いや無視だろ


晶はドアノブをガタつかせ、


「居るのはわかってんだぞー開けろー」


と大声で叫んだ。


「やめろ俺の体裁!借金取りかお前は!」


困惑し、焦り、圭人はついドアを開けてしまった。


「おはようって圭ちゃんなにその格好!まだ準備出来てねーの⁈」

「は?え、いや今日、なんの予定も入ってない、けど…なんか約束あったっけ」


圭人は不安になりスマホのカレンダーを開いた。


「なに言ってんの圭ちゃん!まだ寝ぼけてんの?あ・さ・れ・ん!遅刻しちゃうって!」

「いや今日ほらまじ何にも…何の朝練?」


2人は顔を見合わせた。


「野球だろ?なに、どしたの圭ちゃん」


圭人はハッとした。


「エイプリルフールか!そうか。あーもう分かってるのにいつもお前のペースに持ってかれる。」

「何言ってんの圭ちゃん!なにマジでどうしたん⁈熱でもあんの⁈」

「もうしつこいって。午後までもたんよ。」

「いや圭ちゃんまだ気づいてないし、嘘ついてないし」


そう言って、晶は胸を張った。


「は?」


腕を組み、上げ、胸を強調させる。


「俺、ホントはオンナノコなんだよね」


いつもよりたしかにボリュームのある胸を確認した圭人は、憐れみの目を晶に向けた。


「クオリティひっく。お前の大事なとこ何度も見てんだけど」

「しょうがないでしょ部活前なんだから。てかいい加減にしないと置いてくよ?」

「まだそれ続いてんの?」


うんざりとした顔を見せる圭人に晶は顔をしかめた。


「圭人マジで熱あんじゃねーの」


晶は圭人の額に手を伸ばす。

しかし、届かない。

瞬間、時間が止まった。


「何、してんの晶」

「圭人1日でめっちゃ背ぇ伸びた?」

「は?そんなわけないだろ。高校で身長止まったわ」


互いの違和感に、また時間が止まる。


「いま、高校だろ?」

「いや大学だろ。いい加減やめろって」

「は?なにをだよ。圭人こそ大学ってなんだよ」


しばらく2人は顔を見合わせ続けた。

そして、


「本気で言ってんの?」


2人の声は綺麗にはもった。

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エイプリルフールの1日 灰雪あられ @haiyukiarare

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