もはや、詩に近い何か。
エリー.ファー
もはや、詩に近い何か。
この競技には悪魔がいる。
明らかにやってくる人間たちを食い物にしている。
魅入られた人間は帰って来ないだろう。
死ぬまで奴隷として生き続けるしかない。
しかし。
その顔は歪んだ笑顔で塗られている。
何が嘘で、何が真実なのか。
何が虚像で、何が実像なのか。
それは誰にも分からない。
競技なのかすら怪しい。
その形は。
詩に近い。
誰かが吐き出した愚痴であり。
誰かが抱え続けた不満であり。
誰かの形をした嫉妬である。
美しさなどあるわけもない。
ドラマなど後付けだ。
すべてを置き去りにして出来上がったのは、純粋なる魂と魂の結晶。
誰が勝ち、誰が負け、誰を勝たせて、誰を負かすのか。
濃すぎる戦略に、競技と無関係の思惑が複雑に絡み合う。
ただ勝つだけでは終われない。
ただ負けるだけでは悔しすぎる。
道はまだ続くはずだろう。
まだ歩くのだろう。
いや。
まだ走るのだろう。
これはスポーツか。
いや、違う。
これは競技か。
いや、それも違う。
これは詩か。
あぁ、そうかもしれない。
どこを斬っても血が噴き出すような。
そんな戦い。
血と汗と涙に価値があると思いたがる凡人たちが、死体となって積みあがる。
優勝をするしかない。
優勝以外に道はない。
優勝こそ全て。
そう思い込めば。
準優勝にも、最下位にも価値が生まれてくる。
しかし、それでも。
優勝できなかった者はすぐに去るべきだ。
その絶望の中を生きている。
まるで栄光があるかのように見える。
もちろん、すべてが幻だ。
暇人を殺すために夜を待っているだけだ。
私を救ってくれ。
いや。
私が救ってやるから、そこで待っていろ。
いつまでも、いつまでも、いつまでも。
私たちが作り出してしまった崖の下で夢を見続ける小さな戦士たち。
どうにかしてくれ。
謝罪をしてくれ。
月並み。
凍えそうな戦いがなければ、私たちは立ち上がれなかった。
これはドラマだ。
筋書のない物語だ。
もしも、同じ場所を歩き続けているというなら。
殺してくれ。
直ぐに復活するから。
直ぐに殺しに行くから。
直ぐに皆殺しにしてやるから。
決戦を大切に。
大切な決戦に。
いや、むしろ石鹸に。
石鹸ってなんですか。
もう、なんだってよくないですか。
いや、決戦前の石鹸はだめでしょう。
だめってどういう意味ですか。
考えてもしょうがないですよ。もう、感じるだけでいいです。
抱えてくれ。
このリスクを。
投げかけてくれ。
この問いを。
捨て去ってくれ。
その時を。
決勝戦と敗者復活戦の違いとは何ですか。
違いはありません。
一回戦と二回戦の違いもありません。
どちらも、命と命のぶつかり合いです。
反論がありますか。
「水を飲んで死にたい」
「水だけはあげません」
「水が飲みたいだけなんです」
「あげません」
「死にそうです」
「じゃあ、死んでください」
「嫌です。死にたくないです。助けて下さい」
「こっちこそ嫌です。絶対に助けません」
「お願いします」
「死んでください。さようなら」
「せめて、お水を」
「水だけではなくて、何もあげません」
「お願いします。お願いします。何でもします。お願いします」
「では、お水を飲まないで下さい。そして、死んで下さい」
「無理です。それだけは無理です」
「わがままな人ですね」
もはや、詩に近い何か。 エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます