女性とゴーストライター

エリー.ファー

女性とゴーストライター

「さようならで御座います」

「分かっていましたか」

「もちろんですよ」

「何もかも知っていましたか」

「いいえ、知りませんでした」

「これは何ですか」

「鮎です」

「ありゅ、ですか」

「鮎です」

「あぁ、鮪ですね」

「そうです。鮪です」

「まぎゅろ、です」

「まぎゅろ音頭とかいかがですか」

「いいですよ、あぁ、よいよい」

「よいよいって、めっちゃダサいですね」

「ぶっ殺してやる」

「分かったよ、かかってこいよ、この野郎」

「うっせぇ、バーカ、地区長」

「たぶん、畜生って言いたかったんだと思います」

「やるせねぇ気持ちにさせるんじゃねぇ」

「ばっきゃろう」

「ばっきゃろう、とはどういう意味ですか」

「馬鹿野郎という意味です」

「説明を求めた私は馬鹿野郎ですね」

「そうです。そうやって使うのです」

「正しい使い方を知って、私は幸せものです」

「幸せってどこにあると思いますか」

「空の上です」

「死ねってことか、貴様」

「貴様とはなんだ、貴様とは」

「ごめんなさい」

「許しましょう」

「あぁ、がたんごとん、がたんごとん」

「列車ですか」

「いえ、乗り物です」

「いえいえ、一緒です」

「では、降車しますか」

「はい、ここで降ります」

「あなたの意思とは関係なく、降ろします」

「なんてことだ。夢を見ていたみたいだ」

「うなされていましたよ」

「どんな感じでしたか」

「列車に乗っている感じでした」

「いえいえ、乗り物です」

「いえいえ、一緒です」

「がたんごとん、がたんごとん」

「脱線するぞ」

「脱線はしません」

「いや、脱線するんだって」

「しないって」

「なんで、そう言えるんですか」

「だって、もう脱線してるから」

「あっ、はぁっ。夢か」

「うなされてましたよ」

「どんな感じでしたか」

「電車か乗り物に乗っている感じでした」

「重複です」

「分かってます。対策です」

「大作ですか」

「はい、素晴らしい作品が出来上がりました」

「おっ、見せてもらおうかな」

「はい、お願いします」

「あぁ、ダメだね。全然、面白くない。やり直し」

「どこがダメなんですか」

「全部」

「全部って言われても直しようがないんですけれども。その、どうすれば」

「自分で考えなって」

「自分で考えられるんだったら、ここには来ないですよ」

「そうですか」

「はい」

「はいはい」

「はいはいはいはい」

「はいっ、はいっ、はいはいはい」

「強く大きな我がチーム、光り輝く一番星。打て、捕れ、投げろっ」

「行けっ、進めっ、戦えっ」

「かっとばせーっ、かっとばせーっ」

「選手の名前も知らないが」

「かっとばせーっ、かっとばせーっ」

「競技のルールも知らないが」

「かっとばせーっ、かっとばせーっ」

「勝っても負けてもどうでもいいけど」

「かっとばせーっ、かっとばせーっ」

「だったら、さっさと道譲れっ」

「なんだ、あいつら喧嘩を売ってきやがった」

「よし、戦争だ」

「行くぞ」

「おうっ」

「行くのをやめようっ」

「おうっ」




 誰が書いたかなんて分からないですね。

 でも、涙を流している人がいるんです。

 そう言われても作品には見えて来ないんですが。

 そりゃそうですよ。作品のクオリティを上げるのが仕事であって、自分の不幸を描くのは仕事ではありません。

 辛くはないんでしょうか。

 まぁ、プロですから。

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女性とゴーストライター エリー.ファー @eri-far-

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