Act1 Scene1-1 都市クロノポリス

 都市クロノポリスは島国 ミスティス王国の首都であり、人種のるつぼとも呼ばれる場所である。天を突くようにそびえ立つ尖塔には、この街に住むさまざまな民族の旗が飾られている。狭い石畳の道は、壮大な建物の間を縫い、迷路のような路地を作り、そこは余すことなく活気に溢れている。遠く離れた土地からもたらされたエキゾチックなスパイスの香りが、ストリートミュージシャンの甘いメロディーが、商人の物売りの音と混ざり合って、空気を満たしている。


 クロノポリスには、エルフ族、人族、獣人族など、さまざまな民族や習慣が集まっている。それぞれの民族が独自の技術や伝統を持ち寄り、芸術、音楽、知識の豊かな都市を育んできた。例えば、クロノポリスの大図書館には、古今東西の言語で書かれた無数の巻物や書物が収められており、こうした知恵の結集を物語っている。


 しかし、クロノポリスは、その活気と華やかさの一方で、暗い面も持っていた。団結と協力の輝きの裏側には、偏見と緊張が渦巻いていた。壮大な建築物の陰で、人種間の不信が常にささやかれていた。都市にはそれぞれの地区があり、それぞれの習慣や伝統に従って生活することができる。それでも、その地区が目に見えない障壁となり、住民を隔離し、古くからの固定観念を根付かせることにもなっていた。


 しかし、そのような隔たりを感じさせないのが、街の賑やかな市場である。ここでは、さまざまな人々が集まり、品物を交換し、話をしながら時には好奇心のこもった視線を送っていた。エルフは尖った耳を持ち、魔法を使いこなし、人族は寿命が短いにもかかわらず、適応力と機知に富むことで知られている。また、獣人族は、その穏やかな性格とは裏腹に、堂々とした姿で混雑した通りを行き来していた。


 活気ある市場とは対照的に、王宮は街にそびえ立ち、ミスティスを支配する権力を常に思い起こさせる。王宮の豪華な建物は、精巧な彫刻と金色のアクセントで飾られ、王国の繁栄と威信を物語っている。ミスティスの統治者たちはここで、臣民の生活を左右する決定を下し、その勅令は池の波紋のように街に響き渡っていた。


 王宮の神聖なホールの中では、種族間の絶妙なパワーバランスは辛うじて保たれているにすぎなかった。それぞれの種族が影響力のある立場にあり、王国の未来を左右する意見と見解のぶつかり合いはまさにカエルの合唱の如しであった。


  この外交と陰謀の複雑なダンスの中で、クロノポリスの市民は日常生活を営んでいた。その多くは、この街の平和を脅かす脅威にすら気づいていなかった。狭い路地や混雑した市場では、人種や文化の垣根を越えて友情が生まれ、同盟が結ばれていた。この複雑な世界の中で、謎めいた過去と歴史を変える運命を持つ少女シェリーは、自分の人生を歩んでいく。


 太陽が昇り、賑やかな通りやそびえ立つ尖塔に暖かな黄金の光を放つと、クロノポリスの人々は、今日も一日また一日の歩みをはじめた。この先に何が待ち受けるかなんて知りもせず...。そして、街の中心で、銀色の髪を輝かせながら用事をこなす少女シェリーは、心の奥底で期待に胸をふくらませていた。

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