第4話 ヒント
「これ朝ごはん.....」
そう二有無は机の上にことりと皿を置く
そこにはお粥に梅干しが添えられてある食べ物が乗っていた
「ごめん.....。貧乏でこんな食べ物しか無くて」
二有無はポリポリと頭をかく
それに藍火は優しく微笑んで答えた
「ううん。大丈夫。二有無君が作ってくれるものなら何でも大丈夫だから」
「あ、ありがとう」
そう微笑む藍火の姿は先ほどまでとは打って変わって美しくなっていた
黒く大きいパーカーに身を包むが、その服の色とは対照的に肌が白く美しい
長髪はサラサラになびいていて、風が来るたびに踊っている
「.....?どうしたの、二有無君。私の顔に何かついてるの?」
「いや.....。別に、何でもないよ」
そうはいいつつも、二有無は僅かに横目で藍火を見つめていた
その美しくオーラのある姿に思わず見惚れる二有無であった
「あっ.....」
「どうしたの?」
二有無は時計を見て声を上げた
「そろそろ学校に行かなきゃ.....」
「なんで?昨日、振られたじゃん。学校に行ったらその子と会うことになるけどいいの?苦しんじゃないの?」
「そうだけど.....。僕は将来、立派な仕事に就くためにも今は勉強を頑張んなくちゃいけないんだ。学校で辛い思いをしても行かなくちゃいけない」
そう朝日を眺めながら二有無は言った
早く学校に行きたいのか、早口で食事をしている
だが、それに対して藍火が低い子でこう言った
「なんで?」
「ごめん.....。だけど、今は勉強しなきゃいけない時期なんだ」
「なんでなんでなんでなんで。私を独りにしないって言ったじゃない」
「終わったらすぐに帰ってくるから。あ、家の者は好きに使っていいから」
そう二有無は言うと、カバンに教科書や筆記用具を詰めて
家の玄関を開けた
「それじゃ、行ってくるよ。すぐに戻ってくるから」
藍火の思いとは裏腹に、扉は無情にもピシャリと閉まる
藍火はまたもや独りに残された
「分かった!本当は行きたくなかったけどクラスの人たちに脅されてしょうがなく行ったんだね。そうに違いない違いない」
残された部屋でぶつぶつと藍火は言い始める
「分かった!私が、二有無君を救えばいいのね!そうすれば、私は二有無君とずっと一緒になれる.....」
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一方、二有無の方では
今にも死にそうな表情で学校の下駄箱で靴を履いていた
いつもなら人で溢れかえっているが、今日に限っては来る時間帯が遅く
そこには二有無が一人残されていた
このまま教室に向かえば注目の的だろう
更には自分は告白に失敗した身
皆から何を言われるか分かった物ではない
あれだけ虚勢を張っていても、内心ではびくびく怯えていた
「大丈夫.....。いつもどおり陰口には無視してればいいんだから」
暗い顔をして、階段を上った
一歩一歩上へ上るにつれてその表情には曇りがかかってくる
「はあ.....。僕は空気僕は空気僕は空気」
そう呪文のようにぶつぶつと喋る
二有無は自分の教室についた
震える手で教室の扉をゆっくりと開けた
(誰も構ってきませんように.....)
出来るだけ自分の気配を消して、音を消して教室の扉を開けた
「あっ!昨日告白失敗した、二有無君じゃん。お疲れー」
だが、無情にも教室の扉を開けてすぐにそう二有無の耳に届いた
その声を聴いて、二有無はげんなりする
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