アフター・アポカリプス

早苗月 令舞

Episode1:テールとテセラ

第1話 破滅から再生へ

 私達が暮らしている地球……

かもしれない、とある惑星。


 この惑星は、「L国」「R国」の

二つの大国が引き起こした

最終戦争の渦中にあった。


 かつて100億人もいた人口は

9割以上が死滅して、人々の暮らす街も

生き物を育てる自然も

何もかもが破壊された。


 L国とR国は両軍共に戦力は乏しくなり

最早どっちが勝っているのか負けているのか

判別も付かない状態だった。


 そんな中、戦いの終わりを信じて

今日も武器を取る兵士達。


 最前線……かどうかも分からない

とある戦地では、激戦を生き延びていた

R国歩兵と支援用ロボットが

命を削る戦いをしていた。


ダダダッ!ドシュキューン!!!


 L国の兵士がビームガンで撃たれ倒れた。

その向かい側には、銃を持ったR国の兵士と

煙の上がる右腕を構えた

頭部がサイコロのようなロボットがいた。


「敵兵排除確認」

「また一人やったのか。テセラス……

あと何人で、戦いは終わるんだ……」

「この先まばらながらL国兵の反応あり。

およそ5人ほど」

「5人か……俺の仲間の数よりは少ないな。

ていうか、もういないけどな」


 このR国兵には沢山の仲間がいたが

支援ロボのテセラスを除き全員戦死した。

一人と一機で、数ヶ月生き延びていた。


 テセラスはR国で量産され大量配備された

歩兵支援用ロボットであり、サイコロを

ベースにしたデザインとなっている。

それぞれの目に多彩な機能を搭載して

兵士を支援する。


「あと5人倒したらひとまず帰ろう」

「そうですね……敵兵一人反応消失」

「何だって?」

「その代わり、高エネルギー反応を

ひとつ確認……敵兵また一人消失」

「何が起こっている…?」


 テセラスのレーダーが謎の反応を

キャッチしてから、敵兵の反応が

次々と消えていった。


「3人目、4人目、5人目も消失。

高エネルギー反応、こちらに向けて接近」

「あ、あれはなんなんだ……!」


 不気味な音を鳴らしながら、それは

兵士とテセラスに近付いてきた。


グオオオオオオオオオ!!!


 兵士とテセラスの目の前には

全長5mほどもある大型機械兵が姿を現す。

その手には先程手にかけたであろう

L国の兵士の屍が握られていた。


「状況を分析……非常に危険!」

「来るそ!」


 機械兵は屍を投げつけ襲いかかってきた。

兵士とテセラスは銃撃で応戦した。


ドダダダダッ!!!


「L国はこんな兵器を作り、最悪な事に

無差別攻撃までするようになったのか!」

「そうらしいですね」


 鳴り響く銃撃音と駆動音。

激しい戦闘は数十分続き……!


「た、弾が切れた……うわっ!」


 弾切れになった所に、大型機械兵の

腕が迫ってきた……!


ズパッ!!!


 機械兵の腕が兵士を掴む直前に

テセラスのレーザーブレードで吹き飛ぶ。


「……あなたはこのまま逃げて

生き延びてください!それが最適解です!」

「そんな!テセラスを置いていけるか!」

「私はもともと戦争のために作られた。

戦争が終わればもう用済みです」

「……!」

「あなたはこれから生き延びた人達に

この戦争の事を伝えてください!

そして自ら犯した罪を子供達の手で

償わせてください!」

「ああ………分かった!」

「危険です!離れてください!!!」


 するとテセラスは5の目を

大型機械兵に向けた。そして……


ピュウン……ズバアアアアアアアア!!!


 五連装ビーム砲が大型機械兵を焼いた。

その様子を背にして兵士は走っていった。


   * * * * * * *


 機能を停止した大型機械兵を前にして

エネルギーが尽きたテセラス。


「これで……私の役目は終わりました。

あとは……頼みましたよ………」


 テセラスは眠るように動かなくなった。


 生き延びたR国兵士は、他の生存者から

戦争は既に終わっていた事を知らされる。

L国首相もR国首相も爆撃によって

死亡が確認され、両国共に解体という形で

この戦争は終結した。


 この兵士はその後、自らの罪をこう語る。


「多くの兵士を殺して、仲間も死なせた」


 その罪を背負い、少しずつであるが

ライフラインの復興活動を始めたのである。

そうして生き延びた人々が集まって

集落を作り、その地は『リンカーネ』と

名付けられた。


程なくして、彼は元研究員を名乗る女性と

結ばれた。彼女の罪状は


「遺伝子改造でバケモノを生み出した」


 との事である。

生まれてきた子供には、15歳を迎えた時に

両親がお互いの犯した罪を教えた。

その子供が成長して結婚した時も

自分の両親の罪を相手に教えて

生まれてきた子供にさらに伝えたのである。

もし、その子供が新たに罪を犯したならば

その罪も新たに子孫が背負う事になる。


 こうして、荒廃したこの世界では

『先祖の罪は子孫が償う』という習わしが

広まっていき、長い時間をかけて

人々が普通に暮らせるような環境が

整えられていったのであった。


 そして、数百年の時が流れた。

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