第6眠

 ――う~ん、むにゃむにゃ。


 むにゃ?


 ……。


 んん?


 ………………?


 目が覚めたら、真っ白な世界にいた。

 どれくらい真っ白かっていうと、もう完全な白一色って感じ。

 どこを見ても白い光に包まれてて、真っ白なキャンパスの中に入り込んだみたい。

 影もないから遠近感がなくてふわふわするけど、逆にそれが気持ち良くて、なんとなく眠気を誘ってくる。




 ……眠い。




 ふぁ~っと、欠伸を一つしていると、どこからともなく声が……


 声が……


 …………

 

 ……はい、もちろん神様の声なんて聞こえてきません。

 この光も俺が魔法で生み出したヤツだしね。

 当然だね。


 ……はあ。


 ってか、あれからどうなったんだろう?

 相変わらず、光は膨張し続けているんだろうけど。

 ちょっと『鑑定』してみよっと。





 【鑑定結果】


 現在、およそ秒速三〇万kmの速度で、その規模を拡大中。





 ……


 ……


 ……


 ……うん、俺は何も見ていない、何も見ていない。

 

 そう考え、俺はそっと目を背けた。


 ……残念、背むけた先にも光が溢れていた。

 めっちゃ眩しい。





 え~~、これどうすんの?ってか、どうにかしなきゃダメ??


 う~ん、ダメか、どう考えてもダメだよね。

 だってこんなに眩しいと、眠りが浅くなりそうだし。

 

 俺、寝る時は電気を消して寝る派だから、こうも明るいと寝付が悪くなっちゃうんだよね。

 だから、いつまでもず~っとこのままっていうのは、どうにも都合が悪い。


 ……そうだ、いっそのこと電気を消すみたいな感覚で、オン・オフが切り替えられるようにならないかな?

 よし、やってみよう。


 う~ん。


 ……う~~ん。


 …………う~~~~ん。


 ………………う~~~~~~ん。





 ……飽きた。





 出来なくはなさそうだけど、秒速三〇万kmもの速度で広がり続ける光を掌握するのに時間がかかり過ぎる。


 だって、秒速三〇万kmだよ?

 掌握したそばから広がっていくから、全然追いつかないの。


 こういうのなんて言うんだっけ?

 カメとアキレス?

 そんな感じ。


 そんな面倒くさいことをするぐらいなら、一生アイマスクでもしていた方がましというものだ。


 ……あっ、そっか。

 光をどうにかするんじゃなくて、俺の方をどうにかすればいいのか。


 でも、本当に一生アイマスクを着けたままなのは嫌だから……


 ……


 ……


 ……


 よし、ちょっとだけこっちの位相とか概念とかをズラして、眩しくないようにしてしまおう。


 そうと決めたならあとは早い。


 これは『光』であって、視覚的に感じている光とは別もの。

 何せ俺が魔法で創り出したものなんだ。

 だからあれは『光』であって光ではない。

 誰が何と言おうとあれは『光』なんだ。

『光』と光は別物、いいね?


 そう、無理矢理定義した。


 そしたら急に眩しくなくなった。


 あれはもう光じゃないんだから、眩しくなくても当然だよね。

 うんうん。


 ……こらそこ、臭い物に蓋をするとか言わない。





 どうでもいいけど、結構頑張ったから眠たくなってきちゃった。

 丁度良い具合に明かりも消えてるし、今日はここまでにしよっと。

 そんなわけで、おやすみなさい。






 ………………






 …………






 ……






 ……ぐぅ。

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