第27話 帝都で
ソレズテリエ帝国の首都に到着した。
ここが帝都なのね。私の知っているエルメノン王国の首都と比べたら、ずいぶんと雰囲気が違っていると思った。
建物の造りも違うし、街並みの色使いにも統一感がない。けれど、それが悪いわけじゃなく、個性的で良い感じだった。力強い印象も受ける。それに、人が多いわね。
馬車の窓から街の様子を観察していた私は、そんな感想を抱いた。
早速、帝都の中央にある大きな城へ連れて行かれた。これから早速、帝国の陛下と謁見することになる。
「不安に思う必要はない。安心して、自然に振る舞えばいい」
「はい」
ここまで連れてきてくれたシュテファン様に言われて、私は少し緊張しながら返事をした。
謁見の間に通された。そこで、しばらく待っているように言われる。やがて、皇帝らしき人物が入ってくると、玉座に座って私をじっと見つめてきた。
「よく来てくれた、王国の聖女。歓迎するよ」
「初めまして、クローディです。お目にかかれて光栄です、陛下」
帝国式の作法やマナーは知らなかったので、王国で習った方法で挨拶しておいた。これで大丈夫かと少し心配したけれど、特に問題はないようだった。
挨拶を終えた後、どうして私に興味を持っていたのかについて教えてもらった。
帝国が聖域について調査するために、王国の教会に工作員を送り込んでいたこと。
王国から聖域を失わせるために、教会で修行していた聖女を連れ出していたこと。
最近になって、ようやく目的を果たせたこと。
帝国が行ってきたことを包み隠さずに、全て話してもらった。そんな事が行われていたなんて、私は知らなかったな。
帝国のやり方について、少し思うところはある。そのせいで、役目を引き継ぐ者が教会から居なくなってしまい、私が1人で聖域を維持することになったのだから。
だけど、教会や王国が何も対処していなかったことの方が呆れてしまった。そんな簡単に帝国の工作員が入り込めるほど、教会は杜撰な管理をしていたということね。聖域には頼っていたのに、聖女という存在に対して無関心すぎたんじゃないかしら。
まったく、あの国はもう。そんな風に思いながら、私は帝国側の話を聞き続けた。
パトリック王子が、私を追放したのは帝国は想定外だったそうだ。それで、聖域が失われてしまった。帝国の計画が、最後は王国側の手によって成功してしまった。
王国から追放された私が、帝国に訪れたことは幸運だったと言われた。
「聖女である君に対して、敵意は一切ない。それを直接、伝えておきたかった」
「ありがとうございます」
帝国のトップである皇帝陛下から言われたのだから、安心してもいいのでしょう。勝手に侵入してきて、捕まるのではないかという不安が消えたのはありがたい。
「それから君に、会わせたい者達が居る」
私に会わせたい者達とは一体、誰だろうか。今の話の流れから、予想つくけれど。そして私は、とある場所に案内された。
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