第24話 王国の聖女
大人しくしていようと思っていたら、村長から確認したいことがあるらしいからと呼び出されて、バイエルン家のシュテファン様の目の前に連れて来られた。
簡単に挨拶を済ませた後、いきなり突きつけられた。
「君は、先日までエルメノン王国の聖域を維持していた聖女だね」
確信を持って、私に尋ねるシュテファン様。やはりバレてしまった。どうしよう。
ここから逃げるか。でも、村に迷惑をかけてしまうかもしれない。私を受け入れてくれた彼らに、恩を仇で返すようなことはできない。
目の前の貴族様を倒すか。聖女の力があれば、数十人の兵士達も相手できる自信がある。だけど、それだともっと村の人達を巻き込んでしまう可能性が高い。
ここは素直に認めて、捕まるのが無難だろう。その後に状況を見ながら、逃げ出す方法を考えるしかない。
「はい、そうです」
覚悟を決めて、肯定する返事をした。だけど、私の考えていた最悪な事態は起きなかった。
「我々は、君を傷つけたり捕まえるつもりは一切ない。君の、帝国内での自由を保証するつもりだ」
「えっ? そうなのですか?」
予想外だった言葉を聞いて、思わず聞き返した。それなら私は、この村での平穏な生活を続けられるということだろうか。それは嬉しいこと。村にも迷惑をかけないで済む。
「陛下から、失礼のないよう対応するように厳命されている。だから、安心して欲しい」
「わかりました」
どこまで信用できるのかわからないけど、信じてみるしかなさそうだ。
「それと、これは命令ではなく、お願いになるのだが」
「なんでしょうか?」
シュテファン様の話は続くようだ。やはり何か、都合の悪いことを命じられたりするのだろうか。お願いと言っているけれど、本当のところはどうなのか。
私は警戒心を強めながら、彼の話を聞く。
「一度、帝都まで一緒に来て欲しいのだ。そこで陛下と謁見していただきたい」
「私が、ソレズテリエ帝国の陛下とお会いするんですか?」
「陛下は、聖女である君に興味を持っていらっしゃるのだ」
興味を持たれているらしい。帝国内での自由を保証や、失礼のないよう対応しろという指示。どうしてそこまで私に関心を持っているのだろうか。不思議に思うことが沢山ある。どうしてなのか、知っておきたい。
そのためには、実際に会って話し合う必要がありそうだ。だから私は、帝都に行くことを了承した。
「わかりました」
「急ぐ必要はない。君も、村の状況が気になるだろうから。ここが落ち着いてから、帝都に行けばいい」
今すぐ帝都に行く必要は、ないらしい。シュテファン様から、村の状況が落ち着くまでは出発しなくていいと言ってもらえた。
「それに、皆を助けるために君の力は必須のようだから。引き続き、村の者や王国の難民達を助けてほしい。もちろん、働きに見合った報酬も支払うつもりだ」
わかりましたと、私は頷いて答えた。報酬をもらえるとは思っていなかったので、驚きながら。
「陛下に君を発見したことを報告だけさせてもらうが、よろしいか?」
「はい、大丈夫です」
わざわざ確認してきたのは、こちらに誠意をみせるためか。私としては、帝国側が誠実に対応してくれていることに感謝している。ただ1人の小娘に対して、ここまで丁寧に対応してくれるとは思わなかった。
だから私も、できるだけ真摯な態度で接しようと決めた。そして今、出来ることを頑張るだけ。まずは、私を受け入れてくれた村のために。
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