第23話 救援

 エルメノン王国から逃げてきた怪我人達の治療が、無事に全て完了した。これで、落ち着くことが出来ると思っていたら、遠くから声が聞こえてきた。


 村人の慌てた声は、あまり良くない知らせのようだ。


「また、魔物から逃げてきた人がいるぞ! 怪我人も多い!」

「早く村の中へ! 怪我が酷い人は、彼女に任せよう」


 また、王国から逃げてきた人がやって来たようだ。村の人達は、全員を受け入れて助けるつもりらしい。それなら私も、力になりたいと思う。


「すまないが、治療が必要な怪我人が増えてしまった。彼らの治療を頼みたい」


 申し訳無さそうな表情で村人に頼まれた私は、快く引き受けることにした。まだ、余裕はあるから。


「もちろん、任せて下さい、私が診ます。早く連れてきて」

「ありがとう! 頼む!」


 次々と運ばれてくる怪我人を順番に治療していった。聖女の力は余裕で、精神力が途切れること無く最後まで救うことが出来た。


 しかし、他の村人達の多くが疲労困憊のようで座り込んでいる。回復した、逃げてきた人達も救助を手伝っている。だけど、どんどん人手が足りなくなってきていた。


 村に受け入れ可能な人数も既に超えていて、食料や寝床が足りていない。これは、どうにかしないといけない。


 そんな時に、誰かが村にやってきた。森とは反対方向の帝国方面から、馬に乗ってやってきた数十人の男達。彼等は、立派な紋章の入った鎧を着ていた。


 その集団の中から1人が前に出てきて、村長に話しかける。


「私は、バイエルン家のシュテファン。王国から来た難民について話を聞きに来た」


 馬に乗って、駆けてきたのはバイエルン家の貴族様。どうやら、この村がある領地を治めている方らしい。武装した兵士を何十人も引き連れて、村を訪れた。村長は、安心した表情を浮かべながら答えた。


「シュテファン様。わざわざお越しいただき、ありがとうございます」

「これから帝国の補給部隊が到着して、食料を届けてくれるはずだ」

「それは助かります」

「それで、状況はどうなっている?」

「この村に逃げてきた者達は全て受け入れて――」


 村長とシュテファンの話し合いが始まったが、私は少し離れた場所で彼らの様子を眺めていた。そして、新しい怪我人が運び込まれた時に、いつでも治療できるように備えた。


 食料の問題は解決できそうだし、領地を治めている貴族が協力的なのも良かった。大変なことになるかもしれないと心配していたけど、これなら何とかなりそうね。


 私はひっそりと影に隠れて、怪我人達の治療に専念しておく。村が落ち着いたら、前のように平穏な暮らしが出来るはずだから、それまで頑張ろう。

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