聖女様は黒幕? 水晶玉は未来を見通します!
さすらい人は東を目指す
第1話 プロローグ 舞台の裏側で
わたしは、特別な力を授けていただきました。
それは、未来の分岐を見通せる力なのです。
運命の女神アルメルス様から授けられた聖なる力。
この力を用いて人々を高みへと導く力が、わたしにはあるのです。
その力は、基本的にアルメルセウス神聖帝国の繁栄を導くためにだけ使われるものです。
ですが、例外が生じました。
それは長年の間、神聖帝国お呼びアルメルス教団が追い求めていた秘宝スフィア。
別名、黄金の果実。
それの存在が明らかになったのです。
偉大なる母なる帝国に、更なる繁栄と恩寵をもたらす秘宝スフィア。
それの入手は最優先事項となりました。
ですが、そのためには、とある人物の協力は必要不可欠となりました。
わたしは、蒼く輝く水晶玉の映像を見て安堵のため息を漏らしました。
待望の人物が映し出されているからです。
「もうすぐです。もうすぐ彼がこの街にやってきます」
わたしは嬉しくなって向かいに座る男性に声をかけます。聖堂騎士の鎧をまとった壮年の方です。鍛え抜かれた体躯の武人で、わたしの警護専属の騎士の方です。
騎士は大きく頷くと、
「やっと主役のお出ましですか。随分とやきもきさせられました」
感慨深げにそう言いました。
「ふふ、そうですね。わたしも同感ですわ」水晶玉に視線を戻す。
「ついに主役の登場ですからね」わたしは大きく頷いた。
「これでようやく舞台の準備が整いました。それでは自分は持ち場に向かいましょう」
壮年の騎士の役柄。呼び名は非常に悪いのですが、便宜上「伊達男」と呼ばせてもらいます。
短く切りそろえた顎髭が似合う彼には、お似合いかもしれませんね。
「ええ。気をつけていってらっしゃい」わたしは伊達男に女神様の祝福を祈る。
「貴方に女神様の思し召しがありますように」
「はい。貴女様も」
伊達男は膝をかがめて祝福を受ける。
「では」
立ち去る伊達男を見送りました。
「聖女様、私も続きます」
腰まで届く美しい銀髪の女性騎士が、わたしの方を向きました。
「はい。貴女もお気を付けて」
女性騎士の役柄。この方には似つかわしくない呼び名なのですが、「派手な女」と呼ばせてもらいます。
彼女にも女神様の祝福を送りました。
二人の仲間を見送ると、いよいよわたしの出番です。わたしも持ち場に行かなくてはなりません。
わたしは銀の仮面を被ります。これからは「占い師」として演じるために。
仮面を被ると、手の震えが収まりました。
これから先の未来に対する期待と興奮。それと同じくらいの罪悪感。
……人の運命を弄んでしまう後ろめたさが、スッと消え去りました。
これで聖女から「占い師」になれたのです。
さあ幕は上がりました。これからが本番です
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