全力で体育祭準備!

 夢食さんにアロマや妖怪の事を教わりながら日々を過ごし、気温も段々上がり制服が暑くなってきた頃、学校はある熱気に包まれていた。


「さて、今日のHRだがみんなが知っている通り来月には体育祭をやることになっている!」

「おおお!」

「その体育祭への準備を円滑に進めていくには、体育祭実行委員を決める必要がある。男女2名ずつ、やりたい奴は居るか?」

「はーい、私やります!」

「あ、俺も!」

「お、花咲と松浦だな。他にやりたい奴居るか?」


 体育祭か~多くのクラスメイトが体育祭で盛り上がるなか俺も運動が好きなので楽しみにしながら実行委員が決まるのを待った。俺が通っている学校である私立月詠高校は、進学校という訳では無いがそこそこの学力を持ち部活の分野ではインターハイに出場する部活がちらほらとあり一見パッとしない。だが、一つこの学校の特徴があってそれは自由さだ。この自由さの例として、体育祭の内容を生徒が主体で決定し種目も自由に変えられることや、文化祭の予算が多くこだわって出店を作ることが出来るなどだ。一年生は夏休みを終えるまで、学生服だが夏休みを終えてしまえば登校する服装は自由だし髪型や髪色だって自由になる。そして選択授業の豊富さでも有名なのだが、それはまた今度の話で。


 という訳で体育祭実行委員になれば自分がやりたいと思った競技を道具から何まで用意して出来るんだが、生憎そこまでのやる気は俺には無いし実行委員の会議は放課後にやることになっている。それだと、バイトの時間が短くなってしまうので実行委員になるつもりは無いのだ。


「あ、じゃあ俺やります!」

「渡か」

「私もやります」

「霧浜だな。よし、それじゃあ体育祭実行委員はこの四人で決定だ。四人は今日の放課後B棟の会議室で早速会議があるからそこに行ってくれ。実行委員じゃない奴は、協力してやるんだぞ~。それじゃHR終了」


 爽太は顔が広しクラスの中に溶け込んでいるから、実行委員には適任だしお祭り騒ぎが好きだから立候補するのは分かる。だけど、霧浜さんが立候補をするのは意外だな~。霧浜さんは愛想がよくどんな人とも仲良くなりクラスの注目を集めている人だが、体育会系というイメージが無いから驚きだ。もしかして、他にやる人が居なかったから仕方が無くやったのか?


「霧浜さん」

「ん?なあに?」

「もしかして、無理して立候補した?」

「あはは、そんな事無いよ。体育祭実行委員って楽しそうだし、安全に開催するために協力したいなって思ったから立候補したの。理沙ちゃんとも仲良いしね」

「なるほど」


 理沙というのはもう一人の体育祭実行委員である花咲理沙のことだ。聞いた感じだと、嫌がっている感じは無いし楽しみにしていることが感じられる。


 なんか押し付けたみたいにならなくて良かった。


 その後いつも通り従業を受け、あっという間に昼飯の時間になったので何時ものメンバーと体育祭実行委員の話となった。


「そういえば爽太、体育祭実行委員になったみたいだけど部活は大丈夫なのか?体育祭実行委員って結構放課後に集まらないといけないんだろ?」

「あ~大丈夫大丈夫。俺そんなにマジで部活をやってる訳じゃなくて、趣味としてやってるだけだから本気でやってる奴らと違うんだよ。だから、割と練習は自由が利くし顧問にもそういう行事には積極的に参加しろって言われてるから大丈夫!」

「趣味で部活ってなんだそれ」

「む、覚は部活の仕組みを知らないのか?」

「見学とか行かなかったのか?中学で合気道やってたんだろ?」

「ゆる~くな。高校では部活やるつもり無かったから見学は行かなかったんだよ」


 中学では合気道をやっていたけど、本当にガチガチで毎日練習そして大会出場を目指すって感じじゃなくて合気道を憶えてみたい人が入部するゆるい部活だったのだ。顧問の先生も熱血って訳じゃなく殆ど生徒に任せる感じだった。


「なるほど~あのねうちの学校の部活って、部活内で二つに分かれてるんだよ」

「部活内で?」

「そうだよ~」

「そ、日向の言う通り部活内でやる気のあるグループと趣味でやるグループで分かれてるんだよ。やる気のある方は全力で部活に取り組んで大会とかを目指す奴らで、趣味の方は体を動かしたりやることは好きだけど大会を目指すほど本気でやるつもりは無い奴らが集まってるんだ」

「へ~何でそんな事になってるんだ?」

「昔、一方は全国大会に行きたいって思っているけど、もう一方はみんなで部活をするのは好きだけどそこまでの熱量は無い人で部活内が真っ二つに割れたことがあったらしい」

「へ~」

「その事で生徒同士が大きな喧嘩に発展しちまったらしい。それで、この騒動が起きた原因って、同じグループ内にやる気のある人間と違う目的がある人間が一緒のグループに居ることが問題だろ?だから、解決案として部活内を二つのグループに分けることにしたんだよ」

「なるほど~でも、それって関係性の修復にはならないよな」


 同じグループ内で熱量の差が出てしまうのはどうしようもない事だ。どうしようもない事だけど、本気で取り組んでいる人から見ると、自分達の熱量に付いてこない人間を見ると自分はこんなに頑張っているのにどうしてお前はって気持ちになってしまうんだろうな。グループ内で足並みを揃えることは大事だけど、それを人に強制するのは良くないことだ。まぁ、多くの人達に迷惑をかける場合はその熱量に付いていかなければならない場合もあるけどな。


 爽太の話を聞いただけだと、学校側が取った対策は二つの相性が悪いのであれば切り離して壁を作ってしまうというものだ。二つの仲を修復せずにそんなことしたら、関係性最悪になって部活が崩壊してしまうと思うんだが。


「勿論一方的に分けた訳じゃないぞ。話し合いの場を設けて、その結果としてそうなったんだ」

「あ、ちゃんと話し合いしたんだ」

「そ、かなりの話し合いには時間が掛かったらしいけど、双方納得の上で部活内を二つに分けることにしたらしい」

「うむ、そして他の部で同じような状況が起きないようにその部活以外もグループを分けることにしたんだ。グループを分けたからと言って二つのグループには壁はあまりなく交流を深めていると聞く」

「おう、陸上部も別に壁がある訳じゃないぜ」

「へ~なんか面白い仕組みだな」

「僕は凄く良いと思うよ~その部活に興味や趣味として参加したい人も結構いるだろうからね」


 日向の言う通り興味があるが、その部活の熱量が高い場合入るのを戸惑ってしまう人はいるだろう。その仕組みなら気軽に参加できるという事で部員を増やす効果もあるだろうし、本気でやりたいと思ったらグループから移動すれば良いだけなんだから柔軟に対応できるだろう。


「日向は美術部に入らないのか?」

「僕は一人で書くのが好きだし、周りに人が居ると集中出来ないんだよね~」

「なるほど、大和は?」

「俺は、家で稽古があるから部活には参加しないことにしているんだ」

「そうなのか」


 大和の家は、古くからある剣道場をやっているらしく大和も小さな頃から剣道の鍛錬をしているらしい。


「だから、体育祭実行委員になっても大丈夫なんだよ」

「なるほどな~」

「何の話してるの?」


 部活と体育祭の話をしていると、お弁当を持って戻って来た霧浜さんが話しかけてきた。


「体育祭と部活の話~」

「そっか~あ、そうだ今日の会議でクラスTシャツ決めてねって言われるんだけど、覚君と日向君は美術の選択授業だよね?誰かデザインが上手い人知らないかな?」

「え、何で知ってるの?」

「先輩から聞いたの」


 そう言って笑う霧浜さん。上級生とも関りがあるなんて交友関係広いな~先輩と関わる機会なんてほぼ無いし、委員会か部活で交流があったりするのかな?


「絵が上手い奴だと・・・・」

「ごめんね~僕はパスかな。他にやる人が居なければやるけど」

「デッサンなら出来るがデザインは得意ではないな」

「そっか~覚君は?」

「デザインはな~」

「爽太君は・・・・」

「無理!」

「そっかぁ~他に絵が出来る子が居たら教えてね」

「分かった」


 手本があるデッサンとか簡単な絵だったら書けるが、一からモチーフを作るのは俺には難易度が高い。だから、今回は断られせてもらおう。全員に断られて少し残念そうな顔を見せたが、すぐに笑顔に変わり友達の元へ行く霧浜さん。体育祭実行委員大変そうだな~出来るだけ協力しないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る