第2話【影向】




 第二章【影向】




















 私は多く傷つき、多く苦しんだ人が好きです。挫折感の深い人は、その分、愛の深い人になります。       瀬戸内寂聴












 ああ、ここはどこだろう。

 そうだ。確か友達が出来たんだ。

 「李、今日は何処を探検するんだ?」

 「今日はね、俺の兄貴分に会いに行こう!」

 「李の兄貴分?お兄さんってことか?」

 「違うよ。兄貴はいたようないなかったような気がするけど、兄貴分はお前らがここに来る前からいて、小さい頃よく遊んでもらってたんだ」

 「・・・今でも小さいけどな」

 研究所に来て少し経った頃だ。あいつら最初は怖がってたし、正直、他の奴らにとっては怖い場所なんだろう。

 俺だって最初は怖かったけど、その兄貴分のお陰で怖くなくなった。

 という名の男は、不思議な男だった。

 「某―!友達連れてきたー」

 「お?友達?」

 某は俺の後ろにいる2人を見て、部屋に招き入れる。

 某の部屋はすごく広くて、なんで広いんだと前に聞いた時、「俺はすげぇんだ」と言っていた。

 詳しい事は結局わからなかったけど、まあそれでもいいやと思った。

 「こっちが拓巳、こっちは死神」

 「死神ぃ?大層な名前だな。なんでそうなった?」

 「野暮なこと聞くのは無しだぜ」

 「おいこら、俺の言葉真似するんじゃねえ」

 「へへへ」

 某は研究所に長くいたからか、研究所の施設のことも詳しかったし、そこで働く奴らのことも詳しかった。

 それから、俺達みたいに研究対象になってる奴らのことも。

 俺は2人の承諾を得て、某に話した。

 「拓巳は売られてきたんだって。死神は本名わかんなくて、何かに感染してたって」

 「ほー」

 どこから来たのかなんて、そこまでは知らないけど、拓巳が来た時、周りの奴らがそういう話をしていた。

 親に売られたとか、可哀そうなガキだとか、いつまで生きていられるかとか。

 拓巳は感覚系とか眼球、海馬を主にいじくられているらしい。

 俺も最初少しだけそんなことをした気もするけど、拓巳は特に海馬の研究対象にはうってつけだったようで、拓巳自身がどこまで憶えていて、それがどこまで正確なのかはわからない。

 一度、記憶の上書きとか、記憶の消失・抹消がなんとかって話を聞いたことがあるから、もしかしたら家族のことも何も覚えていないのかもしれない。

 実際、ここに来る前のことは何もわからないという。

 死神は、わからない。

 さっきも言ったように本名もわからないままここに来て、何かに感染していて、そのせいで研究所の職員が何人か死んだらしいけど、死神は死んでいないから、そんな名前を付けられたのかもしれない。

 その感染はもう治ったらしいけど、結局何の病気だったのか、分からない。

 死神は主に臓器とか血液、脳幹とかの研究をされていた。

 多分、その感染症の関係かもしれない。

 なんで死神の周りにいた奴らは死んだのに、死神は死ななかったのか。

 孤児だったのか、死神は街をフラフラしているところを研究所職員に声をかけられ、そのままここに来たらしい。

 行くところが無い奴に声をかけて、衣食住を与える代わりに研究材料とする、いかにも腐った人間の考えそうなことだ。

 「逃げ出そうと思ったことはないのか?」

 ふと、某が拓巳と死神に聞いた。

 最初は2人ともキョトンとしていて、まるでそんなこと考えていなかった、と言っているようだ。

 「聞き方を変えよう。住むとこ、食いもんが他にあれば、ここにはいたくねえと思うか?」

 「「うん」」

 「誘導尋問だ」

 「どこがだよ」

 某は何気なく立ち上がると、某の部屋に設置されている冷蔵庫から飲み物を取りだし、俺を含めた3人分のジュースを準備する。

 俺は某に呼ばれ、そのコップを受け取ると、拓巳、死神と渡していく。

 某は自分の分の水を用意すると、それを持ってまた定位置へと戻る。

 「つまりだ。お前らはここ以外に住むところがない。食いもんも手に入らない。だからここにいるってことでいいか?」

 「「うん」」

 「俺もだよ!」

 はい!と勢いよく手を挙げたけど、「お前はいい」と某に下げられた。

 唇を尖らせて拗ねたアピールをしてみたけど、ジュースが美味しくてすぐににやけた。

 「痛ェだろ?」

 「「・・・・・・」」

 「大丈夫だ。俺の部屋には監視カメラも盗聴器も付いてねえから」

 「え、俺の部屋には付いてるの!?やっべ。昨日もめっちゃ文句言ってた・・・」

 「お前は誰かれ構わず文句言ってんだろうが」

 「このジュース美味しいからおかわり」

 「勝手に飲め」

 俺がジュースのおかわりをしている間に、某たちは話を進めてた。

 「痛い、し、嫌だ。毎日、怖い。優しいフリしてるけど、優しくない。鬼よりも怖い」

 「俺も嫌だ。嫌い。自分が自分じゃなくなっていくのがわかる。器は同じなのに、中にあるものが全部・・・他人みたいだ」

 「俺達、いつまでここにいなきゃいけないの?一昨日、隣の部屋の奴が死んでるって騒いでた。俺、そいつから聞いたんだ。俺達はずっと籠の中の鳥だって。一生出られないんだって。・・・・・・出られる方法は2つ。1つは、研究が失敗して死ぬこと。もう1つは」

 「自ら死ぬ、か」

 拓巳が何か言う前に、某がそう言った。

 俺は正直、自分から進んで死ぬ奴なんて放っておけばいいと思ってた。

 だってそうだろ?ここにいたくないって言ったって、どうしようもないんだ。

 なら、大人しくしてた方がいい。

 でも、俺だって外の世界は見てみたい。

 「それ以外に方法は無いの?」

 だから、そんなことを聞いたんだ。

 もしかしたら、某なら何か知っているかもしれないと思って。

 某は少し何か考えたような素振りを見せたけど、いつもの飄々とした適当な某に戻ると、こんなことを言った。

 「まあ、そのうちなんとかなんだろ」

 「なにそれ適当だな」

 「ここのセキュリティ舐めんなよ?そんじょそこらのハッカーじゃ歯が立たねえってよ」

 「ハッカーってなに?薄荷のこと?」

 「どういうことだよ。薄荷じゃ歯が立たねえってめっちゃ硬ぇ飴じゃねえか」

 俺もそんな適当な某に適当に合わせていれば、拓巳と死神もその空気に慣れたみたいで、ちょっと経てば某の部屋でかけっこをしてた。

 某も少しだけ走ったけど、歳なのかすぐに疲れたらしくて、後半はずっと椅子に座って俺達を見て笑ってた。




 「あー、まだ痛いや」

 その日の俺の実験が終わって部屋に戻ろうとしたら、なにやら研究所が騒がしかった。

 なんだろうと思いながらも、身体が痛かったから早く部屋に戻りたくて足を動かした。

 「拓巳!」

 聞き覚えのある声が、聞き覚えのある名前を叫んでた。

 意識なんてしてなかったけど、俺は気付いたら研究所内にある処置室に向かっていて、同じように処置室の前で中の様子を窺っている死神に聞いた。

 「何があったの?」

 冷静に言った心算だったけど、自分で思っていたよりもずっと低い声になった。

 俺の声には聞こえなかったのか、死神は少しびっくりしてたけど、俺のことを確認すると話してくれた。

 「わからない。でも、実験中に痙攣を起こしたらしくて」

 「痙攣・・・」

 「拓巳・・・!!」

 多分、拓巳が請け負っている感覚実験か眼球実験あたりで何かあったんだろうと思った。

 これまでに同じように処置室に運ばれた奴らを沢山見てきたし、その後どうなったかも見てきた。

 拒絶反応なんてザラにあることだし、そもそも某のように長くここに留まっている奴の方が珍しいんだ。

 俺だって、いつ死んだっておかしくない。

 俺は一旦部屋に戻ろうと死神に言ったけど、死神は戻らないと言い張った。

 ここにいたって出来ることなんて何もないのにと思いながらも、俺はその場を後にし、でも気になったから夜中また処置室に行ってみたんだ。

 そしたら、死神はまだそこにいた。

 「・・・なんでそんなに心配してんの」

 ここにいる以上、まず心配しなきゃいけないのは自分の身。

 「俺がここにいても俺でいられるのは、拓巳と李がいるからだ」

 「・・・・・・」

 「もし1人きりだったら、俺はもう、この世にはいない」

 「・・・・・・」

 ここでの生活は、不自由はない。

 不自由がないから、自由がない。

 用意された部屋も食事も、衣類も、明日も、全部が俺の意思とは別である。

 「もし拓巳が死んだら、どうするの?」

 「仮定の話でもしたくない」

 「仮定だとしても可能性があるなら考えておくべきだと思うよ。その後の自分の人生だってかかってるんだから」

 「その後の人生?」

 一体何のことを言っているんだという顔をして死神が俺を見てくる。

 それに対し、俺はいたって平然と言う。

 「1人だったら死ぬんでしょ?」

 この世界には、永遠なんてものはない。

 生きている以上、いつかは死んでいくのが摂理というものだ。

 「でも、お前がいるだろ」

 「え?」

 何の話していたかと、俺は一瞬思った。

 ああ、そうだ。拓巳がもし死んだとしたら死神も死ぬのかという感じの内容だった。

 思ってもいなかった死神の言葉に、俺は思考回路停止(一瞬だけど)、フリーズしてしまったが、すぐにこう返す。

 「なんで俺?」

 「だから、拓巳と李がいたからって話しただろ。聞いてなかったのか?李の耳は上等な飾りだったのか?」

 「・・・え?喧嘩売られてる?」

 「そこまでな、お前ら」

 俺と死神が喧嘩を始めそうになったからか、某が制止してきた。

 「某って頻尿?夜中にトイレ?」

 「うっせぇな。てか失礼だろ。普通に起きただけだからな」

 何があったかと某に聞かれ、俺はなんでもないと言ったのだが、ご丁寧に死神が説明をしていた。

 別に話すほどのことでもないだろうと思っていたけど、某は興味深そうに聞いている。

 一通りのことを話すと、某は俺に向かってこう言ってきた。

 「お前はサーカス団のゾウだな」

 「はあ!?」

 俺は人間だぞと某に飛びかかろうとしたのだが、リーチがある某は俺の頭に手を置いて、俺は空中で手をブンブン振りまわす。

 それを死神は笑うこともなく見ていた。

 某はどこぞで聞いたという、その“サーカス団のゾウ”の話をする。

 「李、勝つ奴の共通点を教えてやろうか」

 「は?」

 「それはな」

 「聞いてないけど」

 「俺は聞きたい」

 「よし、死神は良い子だな」

 某が口を開いたとき、何やらまたバタバタと処置室に人が入り乱れる。

 何かあったのかと、俺たちはそれに紛れて処置室へと入って行く。

 しばらく慌ただしかったが、背の高い某が何かに気付いたようで、俺と死神の頭をポン、と叩いてきた。

 某の手が頭に乗ったまま足を進めていくと、まだ幾つもの管に繋がっている拓巳が僅かに目を開けていた。

 「拓巳!!」

 死神はすぐに拓巳に駆け寄る。

 声は聞こえるようで、拓巳は死神の方に顔を向けると、小さく、本当に気付くか気付かないかくらいの小さな笑みを見せた。

 俺と某も拓巳の傍まで行くと、某はこう続ける。

 「勝つ奴らの共通点は“諦めないこと”だ」

 処置室にいた奴らがどんどんいなくなると、俺も夜中だったことを思い出して、寝る為に部屋に戻ろうとした。

 「李」

 背を向けた俺に、某が言う。

 「良い奴らだな」

 「は?」

 「お前も、諦めるなよ」

 「・・・何言ってんの」

 俺はその場を後にして、さっさと部屋に戻って行った。

 それからすぐ、拓巳は通常の生活が送れるようになったらしい。

 とはいえ、それが良いことなのかどうかは別問題ではあるが。

 研究所の被検体の数は年々減ってきていると聞いた。

 だからこそ、今回の拓巳の治療も迅速に行われたのだろう。

 貴重な被検体である俺達は、そう簡単には死なせることが出来ないのだ。

 そもそも、どこの命令でこんなことをしているのか、財源はどこからきているのか、職員たちはどこから調達しているのかとか、色々知りたい事はあるものの、それを聞くことは許されない。

 「李、今日はチャンバラな」

 「俺が勝つ!」

 「李は身軽だからな」

 「でも腹が減ったな。チャンバラの前に飯食うぞ!!」

 「え、李がチャンバラやりたいって言ったのに、ご飯食べるの?」

 「いいだろ。腹が減っては戦は出来ぬとかなんとかって、どっかの誰かが言ってたらしいから」

 「適当だな、誰だよそれ言ったの」

 「わかんないけど」

 そしてあの日、俺達は研究所を逃げ出した。

 その記憶さえ、正しいものなのかはわからないが、研究所が火事になって、それに便乗して逃げ出した。

 同じように逃げ出した奴らもいたけど、途中で捕まったり殺されたりした。

 どうして火事になったのか、どうして火事と同時に部屋、いや、檻の鍵も開いていたのか。

 火事のとき限って、研究所の職員も人手が足りなくて大変そうだった。

 その時は無我夢中で逃げていたし、そこまで気にする余裕なんてなかったのは確かだ。

 だが逃げてる間、ふと某のことを思い出し、気になった。

 逃げ切れたのか、捕まってしまったのか、そもそも逃げるという行動自体起こしたのか、何もわからなかった。

 ただ、頭の中に響く某の声と言葉。

 『諦めるなよ』

 俺は、走るしか出来なかった。

 走っている間、俺は何度も振り返りそうになったけど、しなかった。

 すぐ後ろまで、研究所の奴らが追いかけてきていることはなんとなくわかっていたし、ここで捕まったりしたら、折角のチャンスが無駄になる。

 連れ戻されたとして、これまでと同じ毎日を送るくらいなら、外へ飛び出て野たれ死んでやる。

 そんな風な考えになってしまったのも、俺の隣で走っている2人と、あいつの、せいだ。

 自分たちの身を守るべく武器を手に入れて、生きていくために人を傷つけてきた。

 信たちと最初に会ったときだって、俺たちは目的のために人を殺したし、自分たちの自由のためなら何だってしてきた。

 それが正しいかどうかなんて、どうでもよくて。

 あの頃に戻りたくない、自分でいたい、ただそれだけで人を。




 「拓巳、憶えてるか?」

 「何を?」

 「“勝つ奴らの共通点”」

 「・・・ああ。当然」

 感情も何も無い李を相手に、拓巳と死神は攻撃を続ける。

 一方で、信も傷を庇いながら戦っていたが、それよりも、海埜也のことが気がかりであった。

 「(さっきちらっと見えたけど、海埜也、すげぇ血だらけだった・・・!!これ以上海埜也を戦わせたら・・・!!)」

 「あんた、ずーっと他のこと考えてるでしょ!?」

 さらにその信の思考がみりあを苛立たせ、信は防戦一方となっている。

 みりあの刃が信の頭をかすめるが、信はそれを剣で弾きながらみりあとの距離を縮めていく。

 もう少しでみりあに当たるというところで、みりあは信の顔面を蹴り飛ばして回避する。

 「あんた、もとは城の人間なんですって?なんでわざわざこんなことに首突っ込んでんのよ。馬鹿みたい」

 再び剣を構えようとしたのだが、すでにみりあが信の件の切っ先分を踏みつけており、持ちあげることが出来ない。

 信が睨みつけるが、みりあは刃で信の肩を貫く。

 「・・・・・・・ッ!!!???ぐあああああッッッ!!」

 「自分から危険な道を選んでおいて、死ぬ覚悟も出来てないってわけ?」

 みりあは信に近づき、髪の毛を掴みあげる。

 「助けを呼んでも無駄よ。いつも守ってくれてるあいつは、亜緋人たちに囲まれて死亡フラグ立ちまくり。他の連中も、あんたに気をかけてる暇がない」

 「・・・ッ!」

 「ねえ、良く見なさい」

 そう言うと、みりあは掴んでいた手を放し、今度は信の顎を掴んでボロボロの状態でなおも戦い続けている海埜也の方を無理矢理向かせる。

 「可哀そうに」

 「・・・っ」

 海埜也は、立っているだけで辛そうだ。

 信の見たことの無い表情をしていることからも、亜緋人たち相手に本気になっていることは間違いない。

 もう、誰も失いたくないと思っていたのに。

 「あいつはあんたを守ることが出来ず、あんたはあいつに守ってもらうことが出来ず、互いに死ぬ。ま、仲良く死ぬんだからいいんじゃない?」

 同情もなにもしていないであろうみりあの声色が耳にまとわりつく。

 こびりついて離れないその光景に何も言えないでいると、みりあは信の顎を掴んでいた手を放し、信の首に刃をくっつける。

 「最期にあいつに助けを求めれば?その方が、あいつはあんたが無残にも殺されるシーンを見られるわ」

 「・・・!!!」

 膝から崩れ落ちてしまった信の頭上で、みりあが高笑いをしている。

 「じゃあね」

 首を切るべく刃を振りあげると、信は同時に衝撃を受け止めるべく目を瞑る。

 意外と死ぬ時はこんなもんなんだな、と思っていると、頭上から何かがボタボタと垂れ落ちてきた。

 自分の血かとも思った信だが、痛みがやってこないため不思議に思い目を開ける。

 そこには、みりあの刃をクナイで受け止めている海埜也がいた。

 「海、海埜也・・・」

 「ッ・・・ご無事、ですか」

 こんなときまで自分の心配なのかと、信は思わず涙ぐむ。

 海埜也はみりあの刃を流れるようにクナイで沿っていけば、刃は綺麗に真っ二つとなり、そのままみりあの顔面に焙烙火矢を投げつける。

 みりあはその場に倒れこみ、動かなくなった。

 ひとまずみりあは動かないだろうと思っていた信だが、海埜也が掠れた、なんとか振り絞った声でこう言う。

 「多分、気絶しているだけです。ッ、は、早くこの場から・・・」

 「海埜也、ごめん。本当にごめん!!」

 自分よりもボロボロなのに、それでも戦い続け、戦う事も止めず、戦いから逃げることもしない海埜也の背中に、信は唇を噛みしめる。

 「おいおい、人様助けてる余裕あんのかよっ!?」

 エドと鳴海が2人して海埜也に襲いかかる。

 ―俺が、城を出なければ・・・。




 海埜也を始め、みんな良い奴らだった。

 小さい頃から遊んだりもして、暗殺をしていたなんて、知ったのは何歳だっただろう。

 それでも、みんな城のために戦っていて、それを誇りに思っていた。

 物心ついたとき、ふと思ったんだ。

 ―でも人を殺していることに違いはない。

 城主を守るため、城を守るため、なんでもするのがあいつらだったんだろうけど、もとは俺と同じ普通の人間だ。

 前に1回聞いたことがあるんだ。

 「なあ、人を殺すのってどういう気持ちなんだ?」

 「何言ってんだお前」

 〵煉は呆れたように言っていたが、隼がそんな〵煉の頭を叩いて俺に言った。

 「正直、辛いですよ」

 「辛いんだ?」

 「幾ら人のためといえども、相手が生まれてきたこと、生きてきた時間、これから生きるはずだった時間、守りたかったもの、それら全てを奪うことなので」

 「・・・そっか」

 「それでも戦わなければ、国は守れません」

 「海埜也もそうなのかな?」

 「海埜也?なんであいつ?」

 「なんか、任務として全うしてそうだから」

 「・・・いいか信」

 「〵煉」

 「わかってら」

 隼がなにか釘をさしたらしいが、〵煉は手をひらひらさせて適当に返事をする。

 「あいつはな、残酷だ」

 「え」

 「はあ・・・。おい、〵煉」

 「わかってるって」

 何をわかっているのかが分からないが、隼は腕組をして〵煉を見張る。

 「なんで残酷かってーと、あいつがとんでもねえくらいお人好しな奴だからだ」

 「え?」

 「つまりな、優しすぎて敵だろうと殺せなくなっちまうから、あえて心を殺してんだよ。じゃねーと、まじでお前らのこと守れねえから」

 「・・・そうなんだ」

 〵煉の説明に少しは納得したのか、隼が見張るような目つきと腕組みを止め、信の前に片膝をついて目線を合わせるようにして座る。

 「我々とて人間です。人を傷つけることに抵抗はあります。それでも、あなた方を守ると誓ったのです。ですから、我々に何かあっても、何があっても、生き延びねばなりませんよ」

 「・・・でも、俺はみんなに生きててほしいよ。例え城が没落したって」

 「信様・・・」

 「一丁前なこと言うな、お前」

 「こら〵煉」

 「自分が平穏に暮らせてるのは、みんなのお陰なんだな、って改めて思ったよ。なんていうか、正直さ、感覚がおかしい奴らの集まりかなって思ってたんだ」

 「失礼な奴だな」

 「ごめん。でも、俺と同じ、ちゃんと、痛みとか悲しいとか楽しいとか感じる人間なんだなって、気付けて良かった」

 「本来、こんなに慣れ合ってはいけないんですけどね」

 「いいじゃんか。みんなが忍だけど1人の人間であるように、俺だって、1人の人間、ただの男だよ」

 「まあな。見りゃわかる」

 「〵煉・・・」

 隼がまた目をカッと開いて〵煉を睨みつける。

 俺はそんなやりとりも楽しくて、笑った。

 そしたら、少し怒っていたはずの隼も、穏やかに笑ってくれた。

 〵煉は豪快にケタケタ笑いだすし、そこに任務から戻ってきた朷音と燕网はわけがわからないといった具合に俺達を見て怪訝そうにしていた。

 それがさらに面白くなって、もっと笑った。

 「いつかさ」

 ひとしきり笑い終えた俺が口を開くと、みんな俺の方を見て耳を傾ける。

 それがなんだか照れくさくて恥ずかしがっていたら、未来の国王がこんな人数前に恥ずかしがるなと言われてしまった。

 〵煉に背中を叩かれ、やっと言葉が出てくる。

 「いつか、みんなで花見しよう」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「花見?」

 良いことを言ったと思っていた俺は、また恥ずかしくなった。

 隼たちは互いの顔を見たあと、いきなり笑いだした。

 そんなに馬鹿にしなくてもいいじゃないかと思っていると、そうじゃなくて、と俺の心を読んだかのように〵煉が言う。

 「そうだな。いつか、俺達がお天道様に顔見せ出来るようになったら、しような」

 「約束な!」

 「その時は、私が何か美味しい物をお作りいたしましょう」

 やったー!なんて両手を挙げて喜んでいたら、そろそろ部屋に戻った方がいいと隼に注意されてしまった。

 あれから結局、一度も花見なんて出来なかった。

 大事な人がいなくなって初めて、俺は俺であることを後悔したし、俺という存在の重大性を知った。

 みんなを守りたくて、危険なことから遠ざけたくて、俺が城からいなくなれば、肩書きなんて無くなれば守れるなんて、簡単に考えてたんだ。




 ―ごめんな、みんな。ごめんな、海埜也。

 〵煉だって、命懸けで俺のことを守ってくれたのに、俺は、こうして今また、海埜也を危険に晒してる。

 俺が城を出たりしなければ。

 俺が、旅をしたいなんて言わなければ。世界を見たいなんて言わなければ。

 大人しく城にいればよかったんだ。

 そうすれば、みんなを困らせることも、傷つけることもなかった。

 海埜也が付いてくるって言ったときも、突き放せばよかったんだ。

 俺の旅だから邪魔するな!くらいのことを言って、海埜也には城を守ってもらえばよかったんだ。

 全部俺の我儘が引き起こしたことだ。

 和樹のことだって、俺の我儘だ。

 誰かを助けることも出来ないくせに、1人で戦うことも出来ないくせに、いつだって誰かに守られてここまで生きてきたのに。

 ごめん。ごめん。ごめん。

 「・・・・・・」

 戦闘不能となっている信を見て、亜緋人は何か考えている。

 横では、すでにまともに動けていない海埜也を相手に、エドと鳴海が頑張っている。

 「・・・・・・うん。だな」

 1人で何か決めたようで、亜緋人はうんうんと頷いたあと、エドと鳴海に向かって声が届くように大きめの声で言い放つ。

 「ついでだから李もぶっ壊して連れて行くぞ」

 「あ?あいつは壊すだけじゃなかったのか?」

 「面白そうだから調べようと思って。どんな実験されてたのかは知らねえけど、和樹とタッグ組めば最強兵器になりそうじゃん」

 「和樹とはまた別物だろ?」

 「ま、いらなかったら棄てりゃいいから」

 そんな会話があることなど知らない拓巳と死神は、李の動きを封じれないかと模索していた。

 3人の中で、研究所に一番長くいたのが李であり、その研究内容もざっくりとは聞いていたが、今でも良く分からない。

 「死神」

 「なんだ」

 「李って、弱点とかあると思うか?」

 「俺に聞く?」

 おおよそ一緒にいた3人だ。

 拓巳が知らないことは死神も知らないだろうし、死神が知らないことは拓巳も知らない。

 いつもニコニコしていて、それでいて強くて、自由気ままに生きていた李は、拓巳と死神にとっては憧れでもあった。

 「?」

 ふと、拓巳は亜緋人たちの動きが気になった。

 いや、正確に言えば、動いているのは亜緋人だけで、エドと鳴海は今もなお海埜也と戦っているが、亜緋人がその戦闘から抜けたのだ。

 何か企んでいるのではと動きを追ってみると、李の方へ向かっているのが分かった。

 拓巳と死神からは見えるものの、2人と戦っている李からは見えないように上手く動いている。

 「(李に何かする気か?!)」

 ちらっと死神の方を見てみると、死神もそれには気付いていたようで、小さく頷いた。

 それからすぐにことだ。

 「ちょーっと動かなくするぜ」

 「李!!!」

 李の後ろから現れた亜緋人は、腕一本を突き出してきた。

 コマ送りとはよく言ったものだが、まさしく、この時はそんな映像だった。




 それは、瞬きする間の出来事だった。

 李に向かっていた亜緋人を止めるべく亜緋人の前に出てきた拓巳だったが、その拓巳の身体を、亜緋人の腕が貫く。

 時が止まったかのように静かで。

 映画でも見ているかのように鮮明で。

 これが現実だと気付いたのは、拓巳が崩れ落ちたときだろうか。

 「・・・・・・へ?」

 倒れそうになった拓巳だが、踏みとどまって亜緋人の腕を掴んでいる。

 「・・・ありゃ。捕まっちまった」

 「ごほっ・・・!!グッ・・・」

 拓巳の口から、腹から、とめどなく溢れてくる鮮血。

 「拓巳・・・拓巳・・・!!」

 「・・・なんで庇うかなぁ?こいつは人間じゃない。知ってるだろ?死にゃしねぇよ」

 「うっ・・・はあっ・・・!!」

 拓巳の身体から一国も早く腕を引きぬきたい亜緋人だが、出来ずにそこに立ちつくす。

 そんな拓巳のもとへ行こうとした死神だが、拓巳の声が聞こえてきて、足を止める。

 「俺、たちは・・・っあ、あき・・・諦めねぇ・・・!!」

 「あ?」

 「李・・・は、お・・・たちの・・・」

 すでに呼吸するのさえ苦しい拓巳だが、ぐっと自分の意識に鞭を打ち、言葉を紡ぐ。

 「あ、あいつが・・・いる、だけで・・・はあっ、た、ただそれ、だけ、で・・・ぐっ・・・あ・・・俺、俺は、生きる意味を、見出せて、いた・・・んだ」

 「!!喋るな拓巳!もういい!!!

 「絶、望しか、なかっ・・・世界、に・・ううっ・・・あっ・・・それ以、上の、希望を・・・!!くれ、た!!!」

 「・・・・・・」

 ―頭がクラクラしてくる。舌が回らない。意識が、飛びそうだ。いや、ダメだ。まだ、まだ・・・。




 「拓巳、大丈夫か?」

 「うん。大丈夫」

 「心配したぞ」

 「うん。ありがとう」

 無事に俺が処置室から出られると、死神と某が迎えに来てくれた。

 李がいなかったけど、理由は特に聞かなかった。

 でも、某はそんな俺の気持ちを見透かしたように、こう言った。

 「李な、今被検中なんだ」

 「そっか」

 「李って結構冷たい奴なのか?」

 「え?」

 ふと死神が某にそんなことを聞くから、某は驚いていたし少し困ったように笑った。

 大方死神から話を聞くと、某は俺達を某の部屋に連れて行き、こんな話をした。

 「李はな、ずっと1人で戦ってきたんだ」

 「1人で?」

 「ああ。お前ら、李がどんなこと実験してるか知ってるか?」

 俺と死神は首を横に振る。

 某は悲しそうに微笑みながら、さらに話を続けた。

 「李はな、今拓巳や死神がされてることはほとんどやられてるんだ」

 「え・・・李って何年ここにいるの?」

 「そこまで長くはねぇはずだ。けど、特殊っていうか、適応力が高いっつーか。次々に色んなことされてな」

 「なんで李はここに来たの?」

 「さあな。噂じゃあ、ここで生まれたとも言われてるくらいだ。ここには地下室もあるし、そこで生活してたなら俺も分からねえ」

 「・・・今はどんなことをされてるの?」

 「今はな・・・」

 某によると、李は五感操作、キメラ適応、性別超越、兵器としての実験をしているらしい。

 詳細はわからないが、李が来るまでは閉鎖していた部屋も再開しているくらいだから、逸材といえば逸材なのだろう。

 聞いたことのない実験内容だし、周りの奴らでそんな単語を使っているのを聞いたこともなかった。

 なぜか、某は酷く辛そうにしていた。

 「今じゃ分からねぇだろうけど、李は一時、すげぇ酷い顔のときがあってな。ま、キメラか何かが失敗したんだろうな。原型なんて留めてねぇし、焼け爛れたような、皮が剥がれたような、とにかく臭いもすごくてな。あまりにすごい臭いだってんで、隔離されたときもあるくらいだ。そんとき、李から離れていく奴が多くてな。一気に減った。もっと言えば、李が実験から戻ってくるたびに、人間じゃないと遠ざける輩が増えた。李の支えになるような奴は、いなかった。誰1人としてな」

 「・・・某は?」

 「俺か?俺は何か知らねえけど懐かれただけだ」

 「え、謎すぎる」

 「ある日包帯ぐるぐるのガキが歩いてたから、『包帯巻かれててどうやって飯食ってんだ?』って聞いた記憶しかねえ」

 「某ってデリカシーとかないんだ」

 「おいおいおいおい、なんてこと言いやがる。デリバリーの塊だぞ」

 「?デリバリー?」

 「拓巳、某はちょっと頭が弱いだけだ。気にするな」

 「さすが李のダチなだけあるな。俺に向かって生意気なこと言いやがる」

 「某みたいな性格だから李も懐いたんだろうね。なんとなくわかるよ、李の気持ち」

 「俺も。ちょっと対等な感じ」

 「対等?ちょっと待てよ。対等か?」

 「李は、なんで1人で生きて行こうとするんだろう」

 某は何か引っかかったみたいだが、それを気にせず何気なく言った俺の言葉に、某は目を見開いた。

 そして、なぜか頭をワシワシされた。

 髪の毛がすごく乱れたけど、こんな風に頭を撫でられるのは初めてだったから、しばらくそのままにしておいた。

 ふいにいなくなったその手に寂しさすら感じたけど、それを見せないようにした。

 「そうだな。あいつが何がなんでも1人で生きて行こうとするなら、何がなんでもお前らが一緒にいてやれよ」

 「某は?」

 「お前らの方が対等に話せるだろ」

 そう言って、某は笑った。

 研究所が火事になった日、某はどこに行ってしまったんだろう。

 そもそも、あの火事は本当にあったのだろうか。

 あの火事だって夢だったような気もする。

 何しろ、俺は海馬をいじられているんだから、自分の記憶なんてあてにしない方がいい。

 それよりも、ずっと引っ掛かっていたことがある。

 某が李の傍にいた方がよかったんじゃないかとか、その方が李も甘えられたんじゃないか、頼れたんじゃないかとか。

 今更どうにもならないことを考える。

 どんなに悔んだってあの時には戻れないし、戻れたとしても、結果が変わっていたかなんて、その時にならないとわからない。

 それでもこうして考えてしまうのはきっと、それほどまで李という人間の存在を、まだ終わらせてはいけないと分かっているからだろう。

 「拓巳、死神、よく聞いてね」

 同じくらいの年齢のはずの背中は、俺なんかよりもずっと、沢山のものを背負ってきているんだろう。

 それでもお前は、いつだって俺達に微笑みかけるから。

 何があっても大丈夫だと、言ってくるから。

 俺たちは、付いていこうって決めたんだ。

 お前にとって俺達がどういう存在だったのかはわからないけど、いつかわかればと思ってたんだ。

 でも、やっとわかったよ。

 俺がどうして今日まで生きていたのか。生かされていたのか。

 全てはきっと、今、この瞬間のためだ。




 「おい、放せ」

 「だ、だめだ・・・!!放さない!!」

 「いい加減にしろよ。てめえ、どうせもう助からねえよ。諦めて死ねよ」

 「あ、諦め・・・無いッ!!!」

 「だりぃな・・・」

 亜緋人は、なかなか手を放そうとしない拓巳に痺れを切らしたのか、反対の手で拓巳に止めをさそうとする。

 「じゃあ、死んどけ」

 拓巳は、ゆっくり目を瞑る。

 ここで死んだとしても、きっと悔いは残らない。

 それは拓巳自身が一番よく分かっている。

 記憶も思い出も不確かな中で、ただ1つ確実だったことは、李と死神、2人と出会い、今日まで一緒にいたこと。

 それから、それから・・・。

 「・・・ッあ・・・」

 亜緋人とは別の衝撃が拓巳に襲う。

 それが何なのか、把握して理解するまでに時間がかかってしまうのは致し方ないだろう。

 なぜなら、その別の衝撃は拓巳の後ろから訪れてきたのだから。

 「・・・はは・・・はははははは!!!なんだなんだ、最高だなおい!!!」

 頭上から聞こえてくる亜緋人の声さえ、拓巳にはどうでもいいものだった。

 それよりも、今自分の身体がどうなっているのか、どんな状況なのかを知ることの方が重要だった。

 近くにいる死神も、何やら目を丸くして拓巳を見ているが、口を薄ら動かしていることからも、何か言おうとしているのだろう。

 それでも言葉として声に出て来ないのは、発しようとしている言葉が正しい内容なのかを、未だに信じられないからだろう。

 「信じるだの諦めないだの、てめぇらそういう青いとこあったんだな」

 「グッ・・・う・・・あ・・・」

 「無理すんなよ。もう死にかけ。ってかもうじき死ぬだろうよ」

 自分の腕を真っ赤に染めながらも、拓巳に状況を説明しようとした亜緋人だったが、拓巳は亜緋人の腕を掴みながら、ゆっくりと首から上を動かす。

 徐々に見えてくる、自分の後ろにいる人物の姿。

 「拓巳ィィィィィィッ・・・!!!!」

 死神の声が遠くに聞こえる。

 意識が遠のいていったはずなのに、ここにきて、その意識ははっきりと目覚める。

 「あ・・・・・・」

 背中から腹へと貫かれた腕は、誰であろう、李のものだった。

 感情さえないその目に、きっと拓巳の姿は映っていない。

 亜緋人の方へと向かっているその腕をつかもうとするが、すでに限界などとうに超えている拓巳は、その腕を指先で触れるので精一杯だ。

 その時、信は動けずにいた。

 海埜也のこともそうだが、目の前で起こっていることがあまりにも非現実的で。

 李が腕を引き抜けば、血飛沫がまるで花火のように飛び散る。

 拓巳に掴まれている腕の力が抜けたのか、亜緋人もその後腕を引きぬいたため、拓巳は血をあふれさせながらその場に倒れる。

 その、ほんの数秒であっただろう動きでさえも、ひとこまひとこま、まるで古い映画のようにはっきりと目に焼きつく。

 ―死神が何か叫んでる。

 ―なんだっけ。なんだっけ。

 ―なんで拓巳は血だらけなんだ?

 ―なんで李の腕は赤いんだ?

 ―海埜也はどうしたんだっけ。

 怖くて身体が動かなかったとかじゃなく、何が起こっているかわからなくて、何も出来なかった。

 周りで人がどんどん刺されていくのに、それが分かっていないとても小さな子供のように、指先ひとつ動かない。

 「          」

 誰かが何かを言った気がして、信はようやく忘れていた呼吸をする。

 拓巳の前に立つ亜緋人が、満足気に微笑んでいるのだけははっきり見えた。

 「お前ら、忘れてただろ」

 亜緋人の言葉に、みなそちらを向く。

 「李は人間じゃない。つまり、扱いは和樹と同類ってこった」

 「何を・・・!」

 死神が動こうとしたとき、鳴海が死神の肩に巨大な爪を突きつけながら壁に激突させる。

 鳴海が飛んできた方を見れば、エドに腕や足を串刺しにされ地面に伏している海埜也の姿があった。

 それは、まるで絶望への入り口。

 「ようこそ」


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