間隔

 くそっ、どうして気づかなかったんだろう。今日を昨日から見たより良い一日するべきなのに、今日を今日として生きてしまった。全くひどいもんだ。

 揺れる。電車の中で、揺れる。心地の良い揺れは眠気を引き起こす。隣には腕を組んで寝ている女子高生がいる。真正面には帽子を深くまで被り、スマホをいじっている青年がいる。揺れる、また揺れる。そして到着のアナウンスが流れると、それまで座っていた人がスタンディングオベーションのように立ち上がり、電車を後にし、激流のように乗車する人たちと入れ替わる。ぼくが意識していたさっきの二人もすでに新しい人と入れ替わっている。目的地まであと3駅ほどある。

 時速40キロ程度で走る鉄の塊の中、いっさいの事故も起きないと確信しながらぼくらは安心しきっている。旅客案内表示装置、電車内に流れる風で揺れる広告を見つめ座っている。

 そして、今日を最高の1日として生きろ。

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