第2話
「全く、兄さんって人は……。今度会ったら、絶対に首輪を付けてやるんだから」
大怪我で両足が不自由な癖に、昔の素早さを保っているままとか、とても同じ人間の仕業だとは思えないと
だけど、残念ながらその『普通に考えたらあり得ないこと』を平然とやってのけるのが亮である。人生のほとんどを彼に振り回されてきた妹の彼女ですら、この不可解な原理に理解が及ぶには程遠いだろう。
「ここはもう村じゃないのに、気付いたら同じことをしてるあたしって……」
遥か北の方に位置する人口約100人の小さな集落、
元々二人を含めて、子供の人数は僅か5人だったが。
けれど、ある日を境に、亮がおかしな行動を取るようになり、それ以来、
しかし、その数々の奇行のおかげで、村全体の空気も明るくなったのは事実だから、余計に複雑な気持ちになる。思い出すだけで頭が痛くなるような内容ばかりだ。
昔の洋画に感化された亮が、村の一番高い家の屋根を登って、
『アイ キャン フラァーイ』
と叫びながら飛び降りたら、家畜排泄物の山にダイブしてしまい、全身がウンコまみれになった。(その後、謝罪も後処理したのも
一番酷かったのは、村で随一の羊飼いを生業としていた
そこで、亮が初めて牧羊犬の働く様子を見ることになった。犬のキレキレな働きっぷりに感動した彼は、犬の真似し出したら、周りの羊たちに驚かれて四方八方に逃げられて大騒ぎ。(その後、謝罪も羊を回収したのも
今となって、ただの笑い話で済ませられたからよかったというものの、当時の心労は半端なく、ずっと彼のことを嫌っていた。
「全く、一体どこにいるのよ、兄さん」
――まさか、またどこかで問題を起こしているわけじゃ……。
そんな嫌な予感が当たったのは、彼女がある女性の声を耳にした時だった。
「馴れ馴れしくしないでください。大体、どうして苗字ではなく、下の名前の方ですか?」
「だって、
「下郎の癖に正論言わないでいただきたい」
「ほらほら、どうぞ遠慮なく、真心を込めて『亮』と呼んでください。お互いの仲を深めた証にもなるからサ!」
「結構でございます」
あからさまに嫌な顔をされているのに、グイグイとメイドを責める亮。早く止めなければ、という気持ちに駆られた
「先程の美人だけも飽き足らず、メイドさんにまで手を出すとは。この、バカ兄さぁぁぁぁぁーん!」
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