序章: 男の誓い
暗い部屋。中央には、うっすらと光る水晶の柱。その中には、この世のものとは思えない、美しく、どこまでも、どこまでも白い少女が封じられていた。まるで琥珀に閉じ込められた昆虫のように。
水晶の柱の前に男が立っていた。非常な決意を浮かべた顔で男は口を開き呟いた。
「私は、必ずお前を——」
男は柱の中の少女を見つめ、こう続けた。
「どんなことをしようとも。例えこの世界を滅ぼしてしまうことになったとしても」
この暗い部屋にもう1人の人影が男の後ろにあった。その人影は女だった。その女の表情からは何の感情も、思考も読み取ることはできそうにない。
女は一切何も喋らず、ただ黙って男を見つめているだけだった。
男は、女に振り返って言った。
「ついに見つけたんだ。あれの秘密を。お前にも手伝ってもらう。もうお前は私の共犯だ。もう、逃れることなどできないぞ」
女は一切口を聞かず、軽く頷くだけだった。
「お前はお前の望みを果たすため、私は私の望みを果たすため。お互い何を犠牲にしようともね。さあ、神に抗おうじゃないか。我々を翻弄する許し難い運命の神を打ち倒すために」
男は雄弁に語るが、なおも女は口を開かなかった。ただその目に宿る意思は、何もかもを凌駕するものだった。そう、何もかも。
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