ゾンビ世界で元研究者の女と共依存しながら退廃的な生活を送る話
@POTROT
第1話
20XX年 8月16日 天気:晴れ 気温:32℃
色々ととんでもないことになったので、今日から日記を書いていこうと思う。
いや、日記というよりかは報告書や記録書に近いか。
俺は出来るだけ今回のこの事件の内容を詳細に記録し、他にこの日記を見た生存者に伝えたいと思っている。
しかし、俺の主観と記憶を基に書いているので、事実とは多少異なるかもしれないがそこは了承して欲しい。
まず、この日記を見る者はもう分かっているだろうが、この辺りに突然ゾンビパニックが発生した。
まぁ、実際に奴らがゾンビであるかは疑問が残るが、便宜上奴らのことはゾンビと呼称する。
発生したのは恐らく昨日の深夜から今日の朝にかけてのどこか。
俺がそれを初めて知覚したのは、両親の部屋から発生する奇妙な音について、文句を言いに行った時だ。
扉を開ければ、うーうーと唸り声を上げて部屋を徘徊するゾンビが2体いたので、木刀で叩き潰した。
俺も詳しくは覚えていないが、状況証拠的におそらくそう言う事だったのだろう。
ゾンビ二人の死体は火事に気をつけた上でベランダにて燃やした。
ゾンビは火に弱いと言うのはガセだと言う事が分かったことは収穫であるはずだ。
ついでに、その時ある程度外の様子を見たのだが、それはそれは酷いものだった。
車はどれもこれも事故を起こし、火事が起きたらしい、煙が上がっている場所もちらほら見えた。
そして何より、町中を徘徊するゾンビどもの存在だろう。思ったよりも数は多くなかったが、それでも結構な数だ。
両親の遺体を袋に詰め込んだ後は、家の中にある電子機器全てを調べた。
その結果は次のようなものだ。
・電気自体は通っている。
・水道・ガスも今のところ問題なく使える。
・テレビは砂嵐
・ネットは全て切断されている
・ラジオも全部ダメ
あからさますぎて笑いすら出ない。
こんなの人為的にやりました、と言っているようなものだ。
しかし、誰が何故どこでどのように、というのはもちろん分からないし、確かめようが無い。
ゾンビがうろついている外を歩きに行くなど自殺行為もいいところだ。
此処に限界まで籠城することに決めた俺は、まず水を蓄えられるだけ蓄えることにした。
今は通じているが、いつ止まってもおかしくはない。とりあえず今家にある全ての容器に満タンまで溜めておいた。これで水道が止まってもしばらくは大丈夫だろう。
それを終えた俺は、次に近所の住民の現状を把握しようとした。
だが、恐らく全滅。どの部屋のインターフォンを鳴らしても反応は無かった。
しかし、どの部屋からもうーうーと言う唸り声は聞こえたので、俺以外の全員がゾンビと化したのだろう。
そうなって来ると逆に何故俺が助かったのか、と疑問に思えて来るが、ゾンビ化の原因がウィルスであるのならば、多分エアコン含む全ての穴と隙間を埋めていたからだろう。
まさか俺の花粉症対策と埃アレルギー対策が、ゾンビ化対策にもなるとは思わなかった。
まぁ、そう考えると確かにこの時期であるのならば、どの家でも少なからずどこかが開いているはずなので、ウィルス散布には持ってこいの時期だったはずだ。
今のところまだ何の違和感も出ていないが、今後はマスクを着けて生活した方がいい。
クソ暑くなるだろうが、死ぬよりかはマシだ。
20XX年 8月17日 天気:晴れ 気温:35℃
寝て起きれば全て元通り。今日もいつもの日常がスタート。アレは全部悪い夢。
なんてことは勿論無く、両親は袋の中で黙りこくってるしお隣さんはうーうー唸り続けている。
しかし、常に唸り声が聞こえてくるので、ストレスが凄まじい勢いで増加している。気の休まる時間がない。
トイレならギリギリ聞こえないが、あんなに狭い場所に留まり続けるとか苦行でしかないし、エコノミークラス症候群とかにでもなりそうで怖い。
昨日はそこまで気にならなかったはずなのだが、やはりしっかりと認識してしまったことがまずかっただろうか。
エコノミークラス症候群云々書いていて思い至ったのだが、そういえば■■■病院と言う馬鹿でかい病院がこの近くにある。
今回のゾンビ騒動はあそこの病院に関係があるのだろうか?
しかし、確かめる術は俺に無い。正しく言えば、確かめに行く勇気が無い。
意気地なしと言われても受け入れよう。つい先日まで夏休み真っ只中であった男子高校生にそんな意気地など、あるわけがないのだ。
そんな話はさておき、今日は新たな問題が発覚した。
簡単だ。食料が心もとない。
一応、冷蔵庫内だけでなく、カンパンやら何やら、非常用食品も色々とあるのだが、どれだけ甘く見積もっても精々が半年。
ただ、マンションの隣にはコンビニがあるので、いざとなればそこに行くことにしよう。
20XX年 8月18日 天気:曇り 気温:31℃
今日も今日とて外は地獄絵図だ。
火事の煙はまだもくもくと上がっているし、ゾンビもうろうろと徘徊している。
火事の煙に関しては夏だし湿気があるので、ある程度収まって若干少なくなっている気もしなくもないが、ゾンビの数は増減を感じさせない。
実際、増えても減ってもいないのだろう。恐らく連中は鍵のかけられた家の中から出ることが出来ないのだ。
それが事実であれば、今外にいるのを皆殺しにすればもう解決なのではないか、とも考えられる。
まぁ、怖いのでやらないが。
それと、もしかしたら重要な問題かも知れないので書いておくが、どうやらゾンビの変貌度合いは個体差があるらしい。
俺の中学の同級生らしきゾンビを発見した時に気づいた。今になって思い返してみれば、俺の両親も母親の方が面影を残していた気がする。
個体によっては人間の頃と姿がほぼ変わらない者もいたりするのだろうか。
そう考えれば、俺も実はゾンビになっていて、個体差的な問題で知性と見た目が人間の頃とほぼ変わっていないだけ、なんて事もあったりするのかも知れない。
というか、どっちかというとそっちの可能性の方が高いまである。
ふざけている。冗談では無い。
しかし、そんな「もしかしたら」の事を考えてもどうにもならない。
とにかく、俺がまともにものを考えられて、この日記を書き続けられる限りは書き続けていく。
かの有名な「かゆうま」にはならないようにしたいが。
20XX年 8月19日 天気:雨 気温:30℃
ゾンビ騒動が始まってから初めての雨だ。
雨がゾンビどもを洗い流してくれる、なんて事はなく雨とか関係なしにいつも通り町を徘徊しているが、これで殆どの火事が収ってくれるだろう。
これで火の手に怯える必要が無くなったのは有難い事だ。
今日はマンション全体を歩いて回ってみた。
喜ばしいことに、このマンション内にゾンビの姿は一切見られなかった。怪しいと思っていた地下室にも痕跡すら見られないし、変な隠し扉みたいなのも無い。
まぁ、各部屋の中からは普通にゾンビどもの唸り声が聞こえるが、やはり誰一人として外には出られないようだ。
そして、そんな気はしていたが、ゾンビは知覚した生存者を襲おうとするらしい。
外に散見されたゾンビが、俺の事を視界に入れた瞬間、俺に向かってのろのろと進んできたのだ。
柵に阻まれて俺の元へ辿り着く事は出来なかったが、柵の隙間から指を伸ばしてくるのには大いに怖気を感じた。
あまりにも怖かったので、念には念を入れて柵の隙間から木刀で肉塊になるまで潰しておいた。
あとついでに焼いておいた。再生とかされたらたまったもんじゃない。
今これを書いていて普通に殺人だったと気づいたが、まぁ、仕方がないだろう。
それと、初めて犬のゾンビを見た。犬種はドーベルマンだ。
しかし、身体能力は低下しているようで、動きが鈍い。
某ゲームのように凄まじい身体能力で柵を越えて来られたらどうしようかと危惧したが、全然そんな事はなく、大いに安心した。
とりあえず他のゾンビと同じように柵の隙間から木刀で破壊して、燃やした。
これで、少しはこの辺も安全になったはずだ、と信じたい。
20XX年 8月20日 天気:雨 気温:28℃
女を拾った。
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