第37話 救出
あれから数時間、未だに誰にも気付かれずにいる。
「誰も来ないね…」
「ですね…どうしましょう…」
「ま。焦ってもしょうがないし、のんびりしようぜ?」
「水元先輩、自由すぎませんか?」
「だってー。」
「だって?」
「焦っても開かないもん」
「…」
不安で焦っている私と違って、水元先輩は焦るでもなくリラックスしてマットに寝転がっている。
「先輩。」
「ん?」
「このまま誰も来なかったらどうしましょう…」
「…いや、それは絶対にない」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「焚翔だよ」
「焚翔先輩?」
「俺ら、教室にカバン置いてきてるだろ?もし、焚翔がそれを見つけたとしたら、焚翔は詩ちゃんのこと探すと思う。ってことは??」
「見つけてもらえる…」
「せーかーい♪だから俺らは最低でも今日中にはここから出られる!」
「…それって、今日中には出られてもいつ出られるか分からないってことでもありますよね?」
「んーっまぁ、そういう事だね!」
「はぁ…」
「絶対、焚翔が詩ちゃんのこと探し出してくれるから大丈夫だって!」
私はそれでも不安に感じていたけど、焚翔先輩が見つけ出してくれることを信じて、もう少し頑張ることにした。
それから更に数時間後。
遠くの方から誰かが私の名前を呼ぶ声がする。
「…べ。」
「ん?」
「詩ー!!」
「あっ。焚翔先輩!!」
「詩!?どこだ!?」
「体育倉庫の中!!水元先輩もいるの!」
「え?蒼也も?」
「うん!」
「と、とりあえず。鍵持ってくるからもう少し待ってろ!」
「うん、わかった!」
そう言って、焚翔先輩は鍵を取りに職員室へと向かった。
「水元先輩!もうすぐ出られますよ!」
「ん…なぁに?焚翔来たぁ?」
「はい。今、鍵を取りに行ってくれてます!」
「そっかぁ…正直、もう少し詩ちゃんと2人で居たかったなぁ…」
「え?」
そう言って水元先輩は私をギュッと抱きしめた。
「ちょっ!先輩!」
「最初で最後だから…」
水元先輩はそう言って数秒、私を抱きしめると焚翔先輩は来る前に離してくれた。
「ごめんね?ありがとう。これで諦められるよ!」
「先輩…」
水元先輩は、少し悲しそうにニカッと笑って私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
そのすぐ後、焚翔先輩が私の担任と焚翔先輩たちの担任を連れて戻ってきた。
「詩!」
「焚翔先輩!」
「大丈夫か!?どこか怪我とかしてないか!?」
「大丈夫!」
そこから担任たちから。
"なんでこんな所にいたんだ?"
"どうして閉じ込められるなんてことになったのか?"
"いつから閉じ込められてたのか?"
など質問攻めされた。
だから、私と水元先輩は"焚翔先輩を探していて電話にも出ないし、どこにも居なくて最後に体育館倉庫を見に来たら閉じ込められた"と話した。
「…先生。あそこのカメラって動いてるんですよね?」
焚翔先輩が担任に聞くと先生は"あれを見れば!"と言って、私たちも職員室に行って見せて欲しいと言うと"特別にな!"と言って見せてくれた。
そこで私たちを閉じ込めた人物を見た結果。
「え!?」
「やっぱりあいつかぁ…」
「もう許せねぇ」
私は驚いて、水元先輩は"そうだよなぁ"みたいな感じで焚翔先輩はかなり怒っていた。
先生たちは"これは本人に聞かなければいけない"ということで、事情を聞くことにしたのだが、今日はもう遅いということで帰ることになった。
その帰り道、私は焚翔先輩と2人で帰っていた。
「にしても、本当に詩が無事でよかった…」
「心配かけてごめんなさい…」
「いいよ。それより蒼也に何もされなかったか?」
「大丈夫!」
「そうか。でも、お前ら携帯持ってなかったのか?あそこ電波はあるだろ?」
「携帯…。あ、持ってました…」
「え!?」
「もう閉じ込められたことでパニックになって持ってるの忘れてたぁ…!」
焚翔先輩は呆れたように笑いながら"思い出してたらもっと早く見つけられたのにな"って言って頭をポンポンしてくれた。
「先輩。明日の帰り。話したいことがあるので聞いてくれませんか?」
「いいよ。ちゃんと話は聞くから今日はゆっくり休めよ。」
「うん」
私の家に着いて、焚翔先輩は私の両親に遅くなった理由を話してくれた。
もちろん私と先輩の関係のこと、暗いのに1人で帰らせるのは危ないし心配だから送ってきたことも。
私の両親は先輩にお礼と"これからも娘のことお願いします"と言ってくれた。
私の両親は見た目で判断しない人だから、認めてもらえて嬉しかった。
先輩に別れを告げ、家では家族会議が行われ、犯人が分かったら話し合いしたいと決まり、その日はゆっくり休むことになった。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます